40代、障害年金を受けている人は65歳になったらどうなる?――障害年金・老齢年金「どちらを選ぶ?」を今から知っておく

障害年金を受け取っている。

40代、50代は、

「今の生活をどう続けるか」

を考えるだけで精いっぱいかもしれません。

でも、少し生活が落ち着いてくると、次の疑問が出てきます。

「65歳になったら、障害年金はどうなるの?」

老齢年金へ自動的に切り替わる?

障害年金は終わる?

両方もらえる?

どちらか選ぶ?

今まで払った厚生年金はどうなる?

ここ、ものすごく分かりにくいところです。

先に結論からいうと、

65歳になったからといって、障害年金が一律に老齢年金へ自動切替されるわけではありません。

公的年金では、老齢・障害・遺族など支給理由が異なる年金については「1人1年金」が原則ですが、65歳以降には例外があり、障害基礎年金を受ける権利がある人は、障害基礎年金+老齢厚生年金を組み合わせて受け取ることもできます。

だから、

「障害年金か老齢年金、どちらか全部を捨てる」

とは限りません。

ここを、普通の言葉でほどいていきましょう。

まず理解したい「年金は2階建て」

日本の公的年金は、よく「2階建て」と説明されます。

1階部分が、

国民年金=基礎年金。

2階部分が、

厚生年金。

です。

老齢年金なら、

老齢基礎年金+老齢厚生年金。

障害年金なら、

障害基礎年金+障害厚生年金。

という組み合わせがあります。

同じ理由で支給される基礎年金と厚生年金は、セットで受け取ることができます。日本年金機構も、老齢基礎年金と老齢厚生年金、障害基礎年金と障害厚生年金などは、一つの年金とみなして合わせて受け取れると説明しています。

ここまでは比較的分かりやすいと思います。

難しくなるのは、

障害と老齢を混ぜる場合

です。

原則は「障害か老齢、どちらか」

公的年金では、

老齢。

障害。

遺族。

のように支給理由が違う年金の権利を複数持った場合、原則としてどれか一つを選ぶ仕組みです。

たとえば、

障害年金もある。

65歳になって老齢年金も受けられる。

だから全部そのまま上乗せ。

とはならないのが基本です。

ただし、65歳以降になると例外があります。

それが、

障害基礎年金+老齢厚生年金

です。

65歳以降なら「障害基礎年金+老齢厚生年金」を選べる

日本年金機構は、65歳以上の障害基礎年金の受給権者について、

障害基礎年金と老齢厚生年金を同時に受けることを選択できる

と案内しています。

これは、障害がありながら会社員などとして働き、厚生年金保険料を納めてきた人にとって、とても重要です。

なぜなら、

「障害基礎年金を選んだら、今まで払った厚生年金が全部無駄」

ではないからです。

40代、50代に厚生年金へ加入して働いた期間は、

65歳以降の老齢厚生年金

として生きてきます。

前回の記事で、

「障害年金がある人でも厚生年金に入りながら働く意味がある」

と書いたのは、ここにつながります。

65歳以降の代表的な3パターン

かなり単純化すると、障害厚生年金2級以上など、障害基礎年金の受給権がある人では、65歳以降に大きく次のような組み合わせを比較することになります。

① 障害基礎年金+障害厚生年金

今までの障害年金をそのまま受ける形。

② 老齢基礎年金+老齢厚生年金

通常の老齢年金を選ぶ形。

③ 障害基礎年金+老齢厚生年金

1階部分は障害年金、2階部分は自分が働いて積み上げた老齢厚生年金を受ける形です。

日本年金機構の資料でも、65歳以後は障害基礎年金と老齢厚生年金を合わせて受け取れることが示されています。

ただし、実際に選べる組み合わせは、本人が持っている受給権によって変わります。

だから、

65歳になったら自分の場合を年金事務所で比較する

ことが大切です。

「老齢基礎年金+障害厚生年金」はできる?

ここも混乱しやすいところです。

基本的には、

老齢基礎年金+障害厚生年金

という逆の組み合わせはできません。

基礎年金を障害にするなら、

障害基礎年金+老齢厚生年金。

という組み合わせが特例として認められています。

ここを全部覚える必要はありません。

むしろ、

65歳では「どの組み合わせが選べるか確認する」

と覚えておけば十分です。

具体例で考えてみる

ここからは理解しやすいように、仮の数字で考えます。

実際の年金額ではありません。

たとえば65歳になったAさん。

障害基礎年金 月7万円相当。

障害厚生年金 月3万円相当。

老齢基礎年金 月6万円相当。

老齢厚生年金 月5万円相当。

だったとします。

すると、

障害年金を選ぶと、

7万円+3万円=10万円。

老齢年金なら、

6万円+5万円=11万円。

そして、

障害基礎年金+老齢厚生年金なら、

7万円+5万円=12万円。

この仮のケースでは、

3番目が最も高くなります。

でも人によって、

老齢基礎年金の額。

障害年金の等級。

厚生年金加入期間。

報酬。

加算。

などが違います。

だから、

「障害年金の人は65歳になったら絶対これがお得」

という答えはありません。

金額だけで決めるときに注意したい「税金」

さらにややこしいのが税金です。

日本年金機構は、

障害年金には税金がかからない一方、老齢年金には税金がかかる場合がある

と案内しています。

つまり、

障害年金10万円。

老齢年金11万円。

だったとして、

「11万円のほうが1万円高いから老齢!」

と単純には決められない場合があります。

税金。

住民税。

健康保険料や介護保険料。

他の所得。

などによって、

最終的な手取り

が違う可能性があるからです。

だから65歳では、

額面。

ではなく、

実際に手元に残る金額

まで確認したいところです。

障害年金は65歳になったら自動的に消える?

いいえ。

65歳になったという年齢だけを理由に、障害年金が自動的に消えるという仕組みではありません。

障害年金は、障害状態が受給要件に該当している限り、支給が続く可能性があります。

有期認定の場合は、指定された時期に診断書を提出し、障害の状態が確認されます。障害の程度が軽くなれば減額や支給停止となる場合があります。厚生労働省も、障害年金は障害の程度に応じて年金額が改定され、軽くなった場合には減額や支給停止があり得ると説明しています。

つまり、

65歳だから終了

ではなく、

障害状態と年金の選択の問題は分けて考えます。

では、障害厚生年金3級の人は?

ここも少し違います。

障害厚生年金3級には、障害基礎年金がありません。

つまり、

障害厚生年金3級だけを受けているケースでは、

「障害基礎年金+老齢厚生年金」

という組み合わせは使えません。

65歳以降には、

障害厚生年金を選ぶのか。

老齢基礎年金+老齢厚生年金を選ぶのか。

などを比較することになります。

さらに厚生労働省は、障害基礎年金を受給したことがない障害厚生年金3級の受給権者について、65歳以上になると障害の程度が重くなったことによる年金額の改定請求には一定の制限があることも説明しています。

ここまで来るとかなり個別性が高くなるので、

3級の人ほど65歳前に年金事務所で確認する

くらいに覚えておくといいと思います。

「65歳になったら一番高いものを自動で払ってくれる」わけではない

これも注意したいところです。

複数の年金を受けられるようになった場合、

選択の手続きが必要になる場合があります。

日本年金機構は、複数の年金を受ける権利が生じた場合の年金選択について手続きを案内しています。

だから、

「国が一番得な組み合わせを勝手に選んでくれる」

と考えず、

65歳が近づいたら年金事務所で試算してもらう

のがおすすめです。

40代の今から65歳の制度を完璧に覚えなくていい

ここまで読んで、

「難しい……」

となったかもしれません。

その感覚で大丈夫です。

20年後の年金制度です。

法律も改正される可能性があります。

だから40代の今、

組み合わせを暗記する必要はありません。

今やるのは、

老齢厚生年金を育てておくこと。

これです。

つまり、

体調が許す範囲で厚生年金へ加入して働く。

ねんきんネットを見る。

年金加入記録を確認する。

これだけでも将来の選択肢が増えます。

障害基礎年金を受けている人ほど「厚生年金に入る意味」がある

たとえば今、

障害基礎年金2級を受けている。

そして短時間勤務で厚生年金に加入している。

すると、

40代。

50代。

60代前半。

その厚生年金加入実績は、将来の老齢厚生年金へ反映されます。

そして65歳以降には、

障害基礎年金+老齢厚生年金

を選べる可能性があります。

だから、

厚生年金保険料を払っていることを、

「障害年金があるのに余計なお金を取られている」

とは考えなくていいのです。

将来の2階部分を作っています。

老齢基礎年金が少ない人にも意味がある

若いころ、

国民年金の免除期間がある。

働けなかった。

非正規だった。

就職氷河期で厚生年金加入期間が短い。

そんな人もいると思います。

老齢基礎年金が少なくなる可能性があると、

不安になります。

でも障害基礎年金を65歳以降も受給する権利があり、老齢厚生年金と組み合わせる場合、

老齢厚生年金部分は、これから積み上げられます。

過去を変えることはできません。

でも、

45歳から65歳。

50歳から65歳。

の厚生年金は、これから作れます。

障害年金+老齢厚生年金なら「老後2000万円」がすべてではなくなる

老後について考えると、

「2000万円必要」

のような数字に圧倒されます。

でも、老後生活は、

現金だけで支えるものではありません。

障害年金。

老齢厚生年金。

現金。

NISA。

場合によっては就労収入。

これらの組み合わせです。

たとえば、

障害基礎年金。

+老齢厚生年金。

+毎月少し取り崩せる現金。

がある。

なら、

現金2000万円を丸ごと用意しなければ生活できない、

とは限りません。

必要な資産額は、

毎月の年金収入と生活費の差額

から考えるほうが現実的です。

「毎月いくら足りない?」で老後を考える

たとえば65歳以降、

使える年金収入が月14万円。

最低生活費が月16万円。

なら、

毎月の不足は2万円。

年間24万円。

10年で240万円。

単純計算ならこうなります。

もちろん、

医療。

介護。

物価上昇。

住宅修繕。

などもあるので、これだけでは足りません。

でも、

2000万円必要

という巨大な数字から、

毎月2万円足りない

へ変わります。

すると、

厚生年金をもう少し増やす。

家賃を下げる。

現金を作る。

NISAを少し積む。

という具体策が見えてきます。

65歳のときに確認したい「4つの数字」

将来、65歳が近づいたら、

この4つを出します。

① 障害年金はいくら?

② 老齢基礎年金はいくら?

③ 老齢厚生年金はいくら?

④ 税金や保険料を考えた手取りはいくら?

そして、

組み合わせA。

組み合わせB。

組み合わせC。

を比較します。

これだけです。

制度の仕組み全部を理解していなくても、

数字を並べれば判断しやすくなります。

今日使える「65歳の年金」準備メモ

今すぐ金額を埋めなくても大丈夫です。【65歳の年金 準備メモ】 ■ 今受けている障害年金 □ 障害基礎年金 □ 障害厚生年金 □ 両方 □ 分からない 等級:    級 ■ 厚生年金 現在加入: はい・いいえ・分からない これまでの加入期間: 約   年 65歳まであと:    年 ■ 65歳になったら確認するもの □ 障害基礎年金の額 □ 障害厚生年金の額 □ 老齢基礎年金の額 □ 老齢厚生年金の額 □ 税金 □ 健康保険・介護保険料 ■ 比較する候補 ① 障害年金: 月     円 ② 老齢基礎+老齢厚生: 月     円 ③ 障害基礎+老齢厚生: 月     円 ※自分が選べる組み合わせは年金事務所で確認 ■ 今できること □ 厚生年金に加入して働く □ ねんきんネットを見る □ 加入記録を確認する □ 生活防衛資金を作る □ 少額でも将来資金を作る 今日する一つ:

40代の今は、

上の金額欄が空白でも構いません。

大切なのは、

将来比較するものがある

と知っておくことです。

「65歳になったら考える」でもいい。でも59歳くらいから少し確認したい

20年前から制度を気にし続ける必要はありません。

ただ、

60歳前後になったら、

ねんきん定期便。

ねんきんネット。

年金事務所。

で一度確認しておくと安心です。

65歳直前になって、

「障害年金と老齢年金って違うの?」

から始めるより、

少し前から金額を把握しておけば、

住まい。

働く期間。

貯金。

も考えやすくなります。

障害年金を受けていることは「老後準備をしなくていい」という意味ではない

障害年金は大切な安全網です。

でも、

障害状態。

制度改正。

生活費。

物価。

未来は変わります。

だから、

障害年金だけに老後を預けるのではなく、

厚生年金。

現金。

少額の資産形成。

住居費の調整。

を組み合わせます。

ただし、

全部完璧にそろえる必要はありません。

一つずつ柱を増やす。

それでいいのです。

まとめ|65歳は「障害年金が終わる日」ではなく、年金を組み直す時期

障害年金を受けている人にとって、

65歳は少し不安な年齢です。

「障害年金がなくなる?」

と思うかもしれません。

でも、

65歳になったから一律に障害年金が終了するわけではありません。

年金制度では「1人1年金」が原則ですが、65歳以降には例外があり、障害基礎年金と老齢厚生年金を合わせて受給する選択肢もあります。

だから、

障害年金。

老齢基礎年金。

老齢厚生年金。

を比較する。

そして、

額面だけでなく税金なども含めて考える。障害年金は非課税ですが、老齢年金には課税される場合があります。

40代の今、

その複雑な計算をする必要はありません。

今できることは、

働ける範囲で厚生年金へ加入する。

年金記録を確認する。

現金を少し作る。

余裕があれば少額で将来資金を積む。

それだけでもいい。

65歳になったとき、

「障害年金しかない」

ではなく、

「障害年金もある。老齢厚生年金も育ててきた。現金も少しある」

という状態を作る。

これが40代からできる老後準備です。

過去に十分働けなかった期間があっても。

病気で仕事を休んだ時期があっても。

障害年金を受けながらでも。

これから積み上げられるものはあります。

65歳は、

何かが終わる日ではありません。

それまで作ってきた柱を、これからの暮らしに合う形へ組み直す時期。

そう考えてみてもいいのだと思います。

これからを、わたしから。