40代、「仕事を辞めたいけどお金がない」――辞める前に作る3つの逃げ道

「もう、この仕事を続けるのはしんどい」

そう思っても、

「でも、お金がないから辞められない」

という現実があります。

40代になると、20代のころのように勢いだけでは動きにくくなります。

次の仕事は見つかるだろうか。

収入が途切れたら家賃はどうする。

病院代は。

車は。

生活費は。

老後資金まで減らしてしまったらどうしよう。

そう考えると、

「つらくても、今の仕事にしがみつくしかない」

という気持ちになることがあります。

でも、仕事を辞めるか、我慢して働き続けるか。

本当にその二択しかないのでしょうか。

私は、そうではないと思っています。

辞める前に作りたいのは、

次の会社ではなく、「逃げ道」です。

今回は、

①お金の逃げ道②制度の逃げ道③仕事の逃げ道

という3つに分けて考えてみます。

すぐ退職することを勧める記事ではありません。

反対に、

「何があっても辞めないほうがいい」

という記事でもありません。

目的は、

「辞めたら終わり」から、「辞めることも選べる状態」へ少しずつ近づくこと。

です。

「辞められない」の正体は、仕事そのものだけではない

仕事を辞めたいのに辞められない。

その理由を、

「勇気がないから」

と思ってしまう人がいます。

でも、実際にはもっと現実的です。

貯金がない。

次の収入がない。

制度を知らない。

住まいを失うのが怖い。

健康保険がどうなるか分からない。

次の仕事が決まらないかもしれない。

だから動けない。

これは、

気持ちの弱さというより、逃げ道が少ない状態

です。

なら、必要なのは精神論ではありません。

逃げ道を一つずつ増やすことです。

逃げ道1|「今すぐ辞めても数か月暮らせるお金」を作る

一つ目は、お金です。

理想をいえば生活費6か月分。

でも、いきなりそこまで貯める必要はありません。

まず、

5万円。

次に10万円。

その次に最低生活費1か月分。

ここから始めます。

たとえば最低生活費が月15万円なら、

15万円で1か月。

30万円なら2か月。

45万円なら3か月。

100万円なら約6か月です。

このお金があるだけで、

「今日辞めたら来月から生活できない」

から、

「少し考える時間がある」

へ変わります。

以前の記事でも書きましたが、現金はただの貯金ではありません。

仕事を辞めるか。

治療するか。

転職するか。

少し休むか。

そういう選択を考えるための時間でもあります。

退職資金は「老後資金」と別に考える

40代になると、

「せっかく貯めたNISAを崩したくない」

「老後のお金を減らしたくない」

と思います。

それは自然です。

だからこそ、

生活防衛資金と老後資金を分けます。

NISAは長期で育てるお金。

生活防衛資金は、今の自分を守るお金。

仕事を辞める可能性があるなら、

すぐ使える普通預金などを先に作ります。

市場が大きく下がっているときに生活費が必要になり、NISAを安値で売る状態はできるだけ避けたいからです。

月5,000円でも「退職できる未来」に近づく

毎月5,000円しか残せない。

それでも構いません。

半年で3万円。

1年で6万円。

2年で12万円。

小さいように見えます。

でも、

「何もない」

と、

「12万円ある」

は違います。

固定費を月3,000円減らせたら、その3,000円も加える。

ボーナスや臨時収入の一部を入れる。

そうして、

仕事を辞めるためではなく、辞めるかどうかを自分で決めるためのお金

を作ります。

逃げ道2|辞める前に「使える制度」を調べる

二つ目は制度です。

退職を考えたとき、

「会社を辞めたら収入ゼロ」

と思ってしまうことがあります。

でも、状況によって使える制度があります。

代表的なのが雇用保険の基本手当、いわゆる失業給付です。

自己都合退職の場合でも、一定の受給要件を満たせば対象になります。2025年4月以降は、正当な理由のない自己都合退職について、7日間の待期後の給付制限は原則1か月となっています。ただし、退職日からさかのぼって5年間に2回以上、正当な理由のない自己都合退職で受給資格決定を受けている場合などは3か月となる場合があります。一定の教育訓練を受ける場合には給付制限が解除される仕組みもあります。

つまり、

「自己都合で辞めたら何か月も絶対に1円も出ない」

と決めつけず、自分の場合をハローワークで確認することが大切です。

病気で働けないなら「失業給付」より先に確認したい制度もある

ここはかなり重要です。

心や身体の調子を崩して、

「もう働けないから辞めよう」

と考えている場合。

失業給付は原則として、

働く意思と能力があり、求職活動をしている人

の制度です。

一方、病気やけがで仕事そのものができない状態なら、健康保険の傷病手当金が関係する場合があります。

協会けんぽでは、業務外の病気やけがで療養し、仕事ができず、連続する3日間の待期後も休業し、給与の支払いがないなど一定の条件を満たす場合、4日目以降が傷病手当金の支給対象になります。

だから体調が理由なら、

「辞めてから制度を調べる」より、「在職中に会社・健康保険・医療機関へ確認する」

ことがとても大切です。

退職時の状況によっては、その後の給付に関係する場合もあるため、勢いで退職届を出す前に確認しておきたいところです。

家賃が心配なら、住まいの制度もある

「仕事を辞めたら、家賃が払えない」

これはかなり怖い問題です。

厚生労働省の生活困窮者自立支援制度には、住居確保給付金があります。

離職などにより住居を失った、または失うおそれが高い人で、収入・資産など一定の条件を満たす場合、家賃相当額を原則3か月、延長によって最大9か月支給する仕組みです。

誰でも必ず利用できるものではありません。

でも、

「退職したら家を失うしかない」

と一人で結論を出す前に、相談できる制度があります。

お金も仕事も住まいも混乱したら「総合相談」という入口がある

仕事を辞めたいときは、問題が一つではないことがあります。

収入。

家賃。

借金。

病気。

転職。

全部絡んでいる。

そんなとき、

「どの制度を使えばいいか自分で選べない」

こともあります。

厚生労働省の生活困窮者自立支援制度では、地域の相談窓口で支援員が相談内容を聞き、本人と一緒に支援プランを作ります。仕事、住まい、家計などの支援を組み合わせる仕組みです。

難しい制度名を全部覚える必要はありません。

普通の言葉にすると、

「生活全体が絡まって、どこから手をつければいいか分からないときの入口」

です。

逃げ道3|退職届を書く前に「次の働き方」を薄く作っておく

三つ目は仕事です。

ここで、

「次の会社を決めてから辞めなさい」

と言いたいわけではありません。

それができないほど疲れていることもあります。

でも、完全にゼロの状態より、

次の可能性を薄くでも作っておく

と安心です。

求人サイトに登録する。

ハローワークの求人を見る。

転職エージェントに登録してみる。

資格を調べる。

今より短い勤務時間の求人を見る。

パート・契約社員も含めて探す。

副業を小さく試す。

職業訓練を調べる。

ここで大切なのは、

「次も同じ働き方でなければいけない」と思わないこと。

です。

「正社員を辞めたら負け」ではない

40代だと、

「正社員を手放したら二度と戻れない」

という不安があります。

もちろん、雇用形態による待遇差は現実にあります。

でも、

正社員で心身を壊す。

長時間働き続けて生活ができなくなる。

それなら、

一時的に勤務時間を短くする。

契約社員。

パート。

派遣。

職業訓練。

そうした働き方を橋渡しとして使うこともあります。

人生全体で考えます。

肩書きを守ることより、働ける状態を守る。

これも大事な選択です。

「退職する・しない」ではなく、「あと何を減らせば続けられる?」も考える

逃げ道を作る目的は、必ず辞めることではありません。

もしかすると、

仕事そのものが嫌なのではなく、

勤務時間。

特定の業務。

人間関係。

通勤。

休日不足。

責任の大きさ。

のどれかが限界なのかもしれません。

だったら、

勤務時間を減らせないか。

部署変更。

配置転換。

苦手な業務の調整。

休職。

有給休暇。

医師への相談。

などで続けられる可能性があります。

「辞めるほどではないのかな」

ではなく、

「辞めずに済むなら、何を減らせばいい?」

と考える。

それも逃げ道です。

パワハラや嫌がらせなら「自分だけで解決しない」

職場で、

怒鳴られる。

侮辱される。

無視される。

性的な言動がある。

不当な扱いを受ける。

そういう場合、

「私がもっと頑張れば」

だけで解決しようとしないことも大切です。

厚生労働省の総合労働相談コーナーでは、解雇、雇止め、配置転換、賃金、いじめ・嫌がらせ、パワーハラスメントなど幅広い労働問題について、無料で面談や電話相談を受け付けています。必要に応じて助言・指導やあっせんの案内も行われます。

厚生労働省の「あかるい職場応援団」も、外部相談を利用するときには、出来事の日時、場所、言われたこと、相手、目撃者などを整理しておくことを案内しています。

ここでも、

「証拠が完璧にそろってからでないと相談できない」

と思わなくて大丈夫です。

まず相談する。

そこから何を残せばいいか聞く方法もあります。

「逃げ道がある」だけで、今の仕事の見え方が変わる

これは少し不思議ですが、

貯金がある。

制度を知っている。

求人を見ている。

相談先を知っている。

それだけで、

今の仕事への感じ方が変わることがあります。

「ここで絶対に働き続けなければならない」

から、

「ここを出る選択肢もある」

になるからです。

その結果、

もう少し続けてみよう。

と思うかもしれません。

逆に、

やっぱり辞めよう。

と思うかもしれません。

どちらでもいいのです。

重要なのは、

会社ではなく、自分が選ぶこと。

です。

辞める前に作る「3つの逃げ道メモ」

スマートフォンのメモに、これだけ作っておくと役立ちます。

お金の逃げ道
最低生活費はいくら?
現金はいくらある?
何か月暮らせる?

制度の逃げ道
雇用保険は?
傷病手当金は?
住居確保給付金は?
相談窓口は?

仕事の逃げ道
今の仕事で減らせるものは?
別の求人はある?
働く時間を変えられる?
相談できる人は?

全部埋めなくて構いません。

空欄があったら、

そこが次に調べる場所

です。

本当に限界なら「3つ全部そろうまで我慢」ではない

ここはとても大切です。

この記事は、

「100万円貯めるまで辞めるな」

という意味ではありません。

暴力。

深刻なハラスメント。

健康状態の急激な悪化。

安全が脅かされている。

そうした場合は、お金より安全や医療を優先する必要があります。

3つの逃げ道を完璧に作るまで耐えることが目的ではありません。

作れるものから作り、必要なら支援を使って離れる。

そのための考え方です。

40代で辞めることは「キャリアを捨てること」とは限らない

40代で仕事を辞める。

怖いですよね。

でも、

今まで積んできた経験。

仕事で覚えたこと。

資格。

人との接し方。

失敗から学んだこと。

それらまで消えるわけではありません。

次の仕事が同じ職種でなくても、

経験の一部は持っていけます。

そして、

一度休む。

勤務時間を減らす。

別の仕事をする。

その後また戻る。

という人生もあります。

キャリアは、

一本のきれいな階段でなくてもいい。

と思います。

まとめ|辞めるためではなく、「自分で決められる状態」を作る

「仕事を辞めたい」

でも、

「お金がない」。

そんなとき、

今すぐ辞めるか。

我慢するか。

だけで考えなくてもいい。

まず、3つの逃げ道を作ります。

お金の逃げ道。

生活防衛資金を少しずつ作る。

制度の逃げ道。

雇用保険、傷病手当金、住まいの支援、相談窓口を知る。

仕事の逃げ道。

次の求人や、今の働き方を軽くする方法を調べる。

一つでも増えれば、

「辞めたら終わり」

ではなくなります。

現金10万円でも。

相談窓口を一つ知るだけでも。

求人を一件見るだけでもいい。

それは小さな逃げ道です。

そして逃げ道は、

実際に逃げるためだけのものではありません。

「私はここに閉じ込められているわけではない」と思うためのもの

でもあります。

40代からでも。

仕事で傷ついた経験があっても。

病気があっても。

家族を頼れなくても。

次の人生を一気に決める必要はありません。

まず、

今の場所から出られる道を一つ作る。

それから、残るか進むかを決める。

人生の決定権を少しずつ自分に戻していく。

これからを、わたしから。