40代、退院したけど一人では生活できない――家事・食事・通院・仕事復帰をどう組み直す?

退院が決まった。

病院では、

「もう退院できますね」

と言われた。

それはもちろん、うれしいことです。

でも同時に、

「家に帰って、本当に一人でやれる?」

という不安が出てくることがあります。

入院中は、

食事が出る。

薬の時間を管理してもらえる。

何かあればすぐスタッフがいる。

掃除もしなくていい。

洗濯も最低限で済む。

でも家に帰った瞬間、

食事。

買い物。

洗濯。

掃除。

薬。

通院。

仕事。

全部また自分に戻ってきます。

だから、

退院できる=元の生活に完全復帰できる

ではありません。

特に一人暮らしや、家族を頼れない人の場合、

退院後の数週間をどう過ごすかはとても大切です。

今回は、

家事。

食事。

通院。

仕事。

そして支援。

この5つに分けて、

「回復途中の生活」をどう作るか

を考えていきます。

まず、退院日に100%へ戻そうとしない

退院すると、

「家に帰ったんだから、もう普通にしなきゃ」

と思ってしまうことがあります。

洗濯しなきゃ。

冷蔵庫を片づけなきゃ。

買い物しなきゃ。

仕事の連絡もしなきゃ。

でも、退院は治療の一区切りであって、

身体や心が完全に元通りになった日

とは限りません。

だから私は、

退院後の生活を、

30% → 50% → 70% → 100%

くらいに考えてもいいと思っています。

最初は、

食べる。

薬を飲む。

眠る。

病院へ行く。

これだけでもいい。

回復するために生活を小さくします。

退院前に「家で何ができない?」を伝える

本当は、退院後に困ってから考えるより、

退院前に困りそうなことを伝える

ほうが安心です。

厚生労働省の資料でも、退院支援では医療機関と地域の支援者が連携し、退院後の生活を支えることが重視されています。介護分野では入退院時の医療機関と介護支援専門員の連携が位置づけられており、医療・介護を切れ目なくつなぐ仕組みが進められています。

だから、

「料理ができそうにありません」

「一人で買い物に行くのが難しいです」

「通院手段がありません」

「仕事復帰が不安です」

と伝えていい。

病院によっては、医療ソーシャルワーカーや入退院支援部門につないでもらえることがあります。厚生労働省の両立支援事例でも、入院時から医療ソーシャルワーカーが退院支援と仕事との両立支援を行うケースが紹介されています。

1.家事は「できるか」ではなく「しなくても困らないか」で考える

退院後、一番負担になりやすいのが家事です。

掃除。

洗濯。

食器。

ゴミ。

買い物。

全部やろうとすると、すぐ疲れます。

だから最初は、

やる家事を増やすのではなく、やらなくてもいい家事を増やす

と考えます。

掃除機は毎日かけない。

洗濯はまとめる。

食器を減らす。

紙皿などを一時的に使う。

買い物は宅配。

大掃除はしない。

「退院したのに部屋が散らかっている」

でも構いません。

今の目的は、

きれいな暮らしではなく、回復する暮らし

です。

障害福祉サービスで家事支援を受けられる場合もある

障害があり、一定の条件を満たす場合には、障害福祉サービスの居宅介護で、調理・洗濯・掃除などの家事援助や生活全般の支援を受けられる場合があります。厚生労働省は、居宅介護の内容として、入浴・排泄・食事の介護に加え、調理・洗濯・掃除などの家事援助を挙げています。

利用できるかどうかは障害支援区分などの条件があります。

だから、

「私は家事ができないからダメ」

ではなく、

「今の状態で使える家事支援はありますか?」

と相談支援や自治体窓口へ確認します。

2.食事は「栄養満点」より「食べられる仕組み」

退院後、

「健康のためにちゃんと料理しよう」

と思うことがあります。

でも、疲れていると、

料理する。

片づける。

買い物する。

この3つ全部が重い。

結果、

何も食べない。

お菓子だけ。

となることもあります。

だったら最初は、

完璧な食事より、食事を途切れさせないこと

を優先します。

冷凍弁当。

レトルト。

おにぎり。

パン。

ヨーグルト。

カット野菜。

宅配。

コンビニ。

使えるものを使います。

主治医から食事制限がある場合はそれを優先しますが、

「自炊できないから食生活失敗」

ではありません。

回復期には、

食べられること自体が生活支援

です。

配食サービスを調べておくのも一つ

自治体や民間事業者には、配食サービスがあります。

対象条件や費用は地域によって違いますが、

毎日。

週数回。

冷凍まとめ配送。

安否確認を兼ねるもの。

などいろいろあります。

退院後ずっと使う必要はありません。

たとえば、

最初の2週間だけ

でもいい。

回復するまでの「橋」として使います。

3.通院は「行ける?」までセットで考える

退院後には、

診察。

検査。

リハビリ。

薬。

などの予定が入ることがあります。

ここで、

予約日だけ確認して終わらない。

どうやって行く?

まで考えます。

車。

バス。

電車。

タクシー。

福祉的な移動支援。

一人で行けるのか。

帰りも大丈夫か。

厚生労働省の医療情報ネット「ナビイ」では、全国の医療機関・薬局を条件から検索できます。必要な診療科やサービスを持つ医療機関を探す際に使えます。

退院後の通院先が遠すぎて負担なら、

「近くの医療機関へ紹介できるか」

を主治医に相談する方法もあります。

通院日に他の予定を入れない

これ、小さいようでかなり大事です。

退院直後は、

病院へ行っただけで一日分の体力を使う

ことがあります。

だから、

通院+買い物+役所+仕事

と詰め込まない。

できれば、

通院日は通院だけ

くらいで考える。

帰宅したら休む。

回復期は、予定を少なくすること自体が治療の一部です。

4.仕事復帰は「退院日=復職日」にしなくていい

退院すると、

「いつから仕事へ戻りますか?」

という話になります。

でも、

病院を出られる状態と、

8時間働ける状態

は違います。

だから、

フルタイム復帰しか選択肢にしない。

必要はありません。

たとえば、

短時間。

週3日。

軽い業務。

残業なし。

一定期間の配慮。

段階的な復職。

などを相談する方法があります。

厚生労働省は「治療と仕事の両立支援」を進めており、治療を続けながら働く人について、医療機関と企業が連携して就業上の配慮を検討する仕組みを案内しています。

だから、

「働けるか、働けないか」の二択ではなく、「どのくらいなら働けるか」

を考えます。

休む期間を「遅れ」だと思わない

40代になると、

仕事を休むことへの焦りがあります。

同僚に迷惑をかける。

職場に戻りづらい。

評価が下がる。

収入が減る。

いろいろ心配です。

でも、無理して早く戻り、

また体調を崩し、

もう一度休む。

となると、さらに大変です。

だから、

回復に必要な休養を、仕事復帰の一部として考える

ことも大切です。

休んでいるのではなく、

次に働くための準備期間。

そういう見方もできます。

5.退院後、「一人で抱えない支援網」を作る

ここまでの家事・食事・通院・仕事。

全部一人で調整しようとするとかなり大変です。

だから、

人を一人探す

ではなく、

役割ごとに支援を分ける

と考えます。

医療は病院。

生活は相談支援。

家事は福祉サービス。

仕事は会社や両立支援。

高齢になれば地域包括支援センター。

地域包括支援センターは、高齢者の総合相談、権利擁護、介護予防などを担う市町村の中核機関として全国に設置されています。

一人の家族が全部してくれる代わりに、

社会のいくつかの支援で分担する。

家族を頼れない人には、この考え方が重要です。

「私はまだ40代だから介護保険は関係ない」と決めつけない

介護保険は原則65歳以上が中心ですが、40~64歳でも特定疾病によって要介護・要支援状態になった場合には対象になることがあります。

一方、障害がある場合には障害福祉制度など別の支援が使える可能性があります。

つまり、

「若いから何もない」

「高齢者ではないから全部自分で」

ではありません。

どの制度が該当するか分からないなら、

病院の医療ソーシャルワーカー。

自治体。

相談支援。

などへ、

「退院後に一人で生活するのが難しいです。何が使えますか?」

と聞けばいい。

制度名を自分で決めてから相談しなくても構いません。

退院後の生活を「4つの箱」に分ける

生活が混乱しているときは、以前の「4つの箱」の考え方も使えます。

身体・心

眠れる?

食べられる?

薬は飲める?

暮らし

食事。

洗濯。

掃除。

買い物。

仕事

今働ける?

どのくらい?

支援

病院。

福祉。

相談先。

こうして見ると、

「全部できない」

ではなく、

「暮らしの箱だけ支援が必要」

というふうに見えてきます。

これなら対策できます。

回復は、一直線ではない

退院して3日目。

調子がいい。

「もう大丈夫かも」

と思った。

次の日。

何もできない。

そんなこともあります。

回復は、

毎日少しずつ上がるグラフ

とは限りません。

良い日。

悪い日。

少し戻る日。

があります。

だから、

「昨日できたのに今日はできない」

と自分を追い込まない。

大切なのは、

1日ではなく、数週間単位で少しずつ生活が戻っているか

を見ることです。

「できたこと」より「無理しなくて済んだこと」を数える

回復期は、

料理できた。

掃除できた。

仕事できた。

という「できたこと」ばかり評価しがちです。

でも、

今日は宅配を頼んだから疲れなかった。

掃除をやめたから昼寝できた。

タクシーを使ったから通院できた。

勤務時間を減らしたから翌日も動けた。

これも全部成功です。

無理を減らせたことも、生活を立て直す力。

だと思います。

今日使える「退院後生活メモ」

退院前でも、退院後でも使えます。【退院後生活メモ】 ■ 食事 自分で準備できる: はい・少し・難しい 使える方法: □ 冷凍食品 □ 宅配 □ コンビニ □ 配食 □ その他 ■ 家事 洗濯:できる・難しい 掃除:できる・難しい 買い物:できる・難しい 支援が必要そうなこと: ■ 通院 次回:  月 日 行き方: 一人で行ける: はい・不安・難しい ■ 薬 自分で管理できる: はい・不安 ■ 仕事 復帰予定: まだ決めていない・ 月 日 フルタイム勤務: できそう・不安・難しい 希望する配慮: ■ 相談先 病院の相談員: いる・いない・分からない 福祉の相談先: ある・ない 退院後、一番困りそうなこと: 次に誰へ相談する:

全部埋めなくていい。

一つ、

「難しい」

が分かれば、それを誰かと一緒に考えます。

まとめ|退院は「元の生活へ戻る日」ではなく「新しい生活を作り始める日」

退院できた。

それは一つの大きな区切りです。

でも、

その日に以前の自分へ戻る必要はありません。

料理できなくても。

掃除できなくても。

すぐ仕事へ戻れなくても。

一人で通院できなくても。

まず、

食べる。

眠る。

薬を飲む。

診察へ行く。

そこからでいい。

必要なら、

家事支援。

配食。

移動支援。

医療ソーシャルワーカー。

相談支援。

仕事との両立支援。

いろいろな支えを使います。障害福祉では、対象になる場合、居宅介護として調理・洗濯・掃除等を含む生活援助があります。

退院後の生活を、

「以前のように全部自分でやれるか」

で評価しないこと。

むしろ、

「支援を使いながら生活を続けられているか」

を見る。

家族を頼れないなら、

一人で強くならなければいけないわけではありません。

医療。

福祉。

仕事。

宅配。

交通。

地域。

それぞれに少しずつ役割を分ける。

そうやって、

一人に集中していた生活の重さを、

少しずつ外へ分散させていく。

退院は、

元の暮らしへ戻る日ではなく、

今の自分に合う暮らしへ組み直し始める日

なのかもしれません。

急がなくていい。

一つずつ戻す。

戻せないものは、別の方法に変える。

そして、

また暮らしていく。

これからを、わたしから。