40代、障害者雇用に変えると給料は下がる?――収入だけでなく「働き続けられる価値」で考える
障害者雇用を考え始めたとき、かなり気になることがあります。
「給料が下がるのでは?」
という問題です。
今は一般雇用で働いている。
でも、かなり無理をしている。
職場で必要な配慮を言い出しにくい。
仕事から帰ると何もできない。
休みの日は寝て終わる。
「障害者雇用なら、もう少し無理せず働けるかもしれない」
と思う。
けれど求人を見ると、
今より給料が低い。
短時間勤務が多い。
仕事内容も限られているように感じる。
そこで、
「多少つらくても、今の仕事にしがみついたほうがいいのでは」
と迷います。
40代ならなおさらです。
老後資金。
年金。
貯金。
家賃。
医療費。
これから収入を下げることには大きな不安があります。
だから今回は、
「障害者雇用はいいですよ」
と単純にすすめる記事にはしません。
実際の数字を見ながら、
収入が下がる可能性も含めて、それでも生活全体ではどうなのか
を考えていきます。
- まず現実を見る。障害者雇用の平均賃金には差がある
- なぜ短時間勤務が多いのか
- だからといって「低賃金でいい」わけではない
- 月給だけ比較すると、見えなくなるものがある
- 高い給料でも続かなければ、生涯収入は伸びない
- 障害者雇用でも社会保険に入れる?
- 短時間勤務なら社会保険を確認する
- 障害年金+給与という組み方もある
- ただし、障害年金を「永久固定収入」として考えすぎない
- 障害者雇用を選ぶ価値は「配慮」だけではない
- 40代では「出世できるか」より「60歳まで働けるか」も考える
- 障害者雇用の会社を見るなら「昇給」を聞いていい
- 求人票で月給だけ見ない
- 「給料が下がった自分」を失敗だと思わない
- 社会的に弱い立場になったら「高収入」より先に安全網を太くする
- 「障害者雇用にするか」チェック
- まとめ|給料が下がるかではなく、「生活まで含めて収入を守れるか」
まず現実を見る。障害者雇用の平均賃金には差がある
厚生労働省の「令和5年度障害者雇用実態調査」では、障害のある労働者の1か月の平均賃金が調査されています。
2023年5月時点の平均賃金は、
身体障害者が23万5,000円。
知的障害者が13万7,000円。
精神障害者が14万9,000円。
発達障害者が13万円。
という結果でした。
この数字を見ると、
「やっぱり低いじゃないか」
と思うかもしれません。
その感覚は間違っていません。
障害者雇用には、賃金やキャリア形成という大きな課題があります。
ただし、この平均額には一つ注意があります。
勤務時間が同じ人だけを比較した数字ではありません。
障害の種類によって短時間勤務の割合が違うため、月給の平均だけを見れば、勤務時間の短さも影響します。厚生労働省の調査でも、賃金は週所定労働時間別に集計されています。
だから、
「障害がある人の仕事そのものの価値が低い」
という数字ではありません。
一方で、
短時間勤務になりやすいこと自体が収入へ直結する。
これも現実です。
なぜ短時間勤務が多いのか
ここはとても重要です。
精神障害などでは、
長時間勤務そのものが負担になることがあります。
集中力が続かない。
疲れやすい。
通院が必要。
朝の体調が安定しない。
薬の影響がある。
人とのやり取りで消耗する。
そうした事情がある人に、
いきなり週5日40時間を求めれば、
就職できても続かない可能性があります。
厚生労働省の障害者雇用に関する検討資料でも、精神障害者について、短時間勤務から始めて勤務時間を段階的に延ばすことや、本人の状況に合わせて職務内容や勤務時間を柔軟にすることが示されています。
2024年4月からは、精神障害者など一定の障害者について、週10時間以上20時間未満で働く人も障害者雇用率制度上の算定対象となる仕組みが導入されています。
つまり国の制度も、
「全員が最初から長時間働けるわけではない」
という前提に少しずつ変わっています。
だからといって「低賃金でいい」わけではない
ここは切り分けたいところです。
短時間勤務が必要な人がいる。
それは事実です。
でも、
だから障害者雇用は低賃金で当然。
ではありません。
同じ価値の仕事をしているのに、不当に低い賃金でいいわけではありませんし、障害のある人にもキャリア形成や能力開発の機会が必要です。
問題は、
「無理をせず働けること」と「生活できる賃金」をどう両立するか
です。
これは本人の努力だけで解決する話ではありません。
企業側の仕事の作り方。
職務設計。
昇給。
教育。
キャリア形成。
社会保障。
まで含めて考える必要があります。
月給だけ比較すると、見えなくなるものがある
たとえば二つの働き方を比べてみます。
一般雇用。
月20万円。
週5日。
残業あり。
毎日ぎりぎり。
年に何度も欠勤。
半年後に休職。
一方、
障害者雇用。
月15万円。
週4日。
残業なし。
通院可能。
職場で配慮あり。
3年間安定して働ける。
月給だけなら、
20万円のほうが5万円高い。
年間では60万円差があります。
でも最初の仕事で半年休職すれば、その間の収入は大きく変わります。
さらに、
病院代。
タクシー。
外食。
ストレスによる衝動買い。
家事ができず外注。
など、
無理して働くことで増える生活コスト
もあります。
だから40代からは、
「1か月いくら?」ではなく、「3年間でどうなる?」
という見方を持ってもいいと思います。
高い給料でも続かなければ、生涯収入は伸びない
たとえば、
月20万円の仕事を半年。
その後6か月休職。
という生活を繰り返す。
一方、
月15万円でも毎月安定して働く。
単純な比較ではありませんが、
長期で見ると差が縮まることがあります。
そして何より、
働けない期間が長くなれば、
貯金を取り崩す。
借金する。
年金加入期間や将来の収入にも影響する。
という問題が出ます。
だから、
「多少給料を下げても働き続ける」こと自体に経済的な価値がある
場合があります。
これは精神論ではありません。
生活防衛の話です。
障害者雇用でも社会保険に入れる?
「障害者雇用だと社会保険に入れないのでは?」
と思う人もいます。
でも、障害者雇用だから社会保険に入れないというルールはありません。
社会保険の加入は、基本的には雇用形態の名前ではなく、労働時間、賃金、企業規模などの加入要件によって決まります。厚生労働省は短時間労働者についても、一定の勤務時間・賃金などの要件を満たした場合に健康保険・厚生年金保険の加入対象となることを案内しています。
だから求人を見るときは、
「障害者雇用かどうか」だけでなく「社会保険の加入条件を満たす勤務か」
を確認します。
これは40代ではかなり重要です。
厚生年金に加入すれば、老齢厚生年金の土台にもつながります。
短時間勤務なら社会保険を確認する
短時間勤務の場合には、
週何時間?
月額賃金はいくら?
勤務先の条件は?
を確認します。
法律や適用範囲は変わることがあるため、実際の求人では会社の人事や年金事務所などで確認するのが安全です。
大切なのは、
「パートだから社会保険なし」と決めつけないこと。
です。
逆に求人票に、
「社会保険完備」
とあっても、自分の勤務時間では対象外になることもあります。
面接前後に確認していい条件です。
障害年金+給与という組み方もある
ここで前の記事につながります。
障害年金を受けている人の場合、
給与だけで生活全部を支えなければいけない、
とは限りません。
たとえば、
給与14万円。
+障害年金。
という生活があります。
一般的な障害基礎年金・障害厚生年金については、一定額以上稼いだだけで一律に支給停止になる制度ではありません。ただし、20歳前傷病による障害基礎年金には本人所得による支給制限があります。また、就労状況は障害状態を判断する情報になり得ます。
特に精神障害について、日本年金機構のガイドラインでは、働いている場合にも、仕事内容や職場で受けている援助・配慮などを含めて総合的に判断する考え方が示されています。
だから、
「障害年金を受けているなら低賃金で我慢」
でも、
「給与だけで生活できるまでフルタイムで頑張る」
でもありません。
年金と給与を組み合わせながら、自分に続けられる働き方を作ることもできます。
ただし、障害年金を「永久固定収入」として考えすぎない
ここは注意したいところです。
障害年金には、有期認定で一定期間ごとに障害状態を確認される場合があります。
だから、
「年金が今後絶対に一生同じ額で続く」
という前提だけで家計を組むのは慎重にしたいところです。
障害状態が変化すれば、等級変更や支給停止となる可能性があります。
そのため、
障害年金+給与+少しの現金
というように、複数の柱を持つ。
これまで「わたしから。」で書いてきた、
現金。
年金。
仕事。
という考え方がここでも使えます。
障害者雇用を選ぶ価値は「配慮」だけではない
障害者雇用のメリットというと、
「配慮してもらえる」
がよく出てきます。
でも私は、もう一つ大きいものがあると思います。
困ったときに、困ったと言いやすいこと。
です。
一般雇用で障害を伏せている場合、
「電話が怖い」
「集中が続かない」
「通院したい」
「指示を文字でほしい」
と言いづらいことがあります。
障害者雇用なら、最初から障害があることを共有したうえで、
何ができる?
何が難しい?
どんな配慮があればできる?
を話しやすくなります。
これは、
働き続けられる確率を上げる要素
にもなります。
40代では「出世できるか」より「60歳まで働けるか」も考える
20代なら、
キャリアアップ。
昇進。
年収アップ。
が中心になるかもしれません。
40代では、それも大切です。
でも、
あと15年。
20年。
働くことを考えると、
「この会社で60歳近くまで働ける?」
も大きな条件になります。
月給22万円だけれど2年しか続かない仕事。
月給17万円だけれど15年続く仕事。
単純には比較できません。
でも後者には、
15年分の給与。
15年分の社会保険。
15年分の職歴。
があります。
だから40代からは、
月給と一緒に「勤続可能年数」を見る。
この発想はかなり大切だと思います。
障害者雇用の会社を見るなら「昇給」を聞いていい
障害者雇用だから、
「採用してもらえるだけありがたい」
と思ってしまうことがあります。
でも仕事です。
給与。
昇給。
賞与。
仕事内容。
評価制度。
正社員登用。
キャリアアップ。
について確認していいのです。
たとえば面接で、
「障害者雇用の方にも昇給制度はありますか?」
「業務範囲を広げていく仕組みはありますか?」
「正社員登用の実績はありますか?」
と聞いてもいい。
配慮されることと、成長する機会を持つことは両立できます。
求人票で月給だけ見ない
障害者雇用の求人を見るときは、
私は次の順番で見たいと思います。
月給。
勤務時間。
社会保険。
賞与。
昇給。
仕事内容。
通勤。
必要な配慮。
正社員か。
そして、
その条件で3年続けられそうか。
月16万円でも、
社会保険あり。
賞与あり。
昇給あり。
通勤20分。
残業なし。
なら、
月18万円。
社会保険加入条件外。
通勤1時間。
配慮なし。
より生活全体では良い場合があります。
「給料が下がった自分」を失敗だと思わない
これは、とても伝えたいところです。
病気になる前は月25万円。
今は15万円。
数字だけを見れば、
10万円減った。
と感じます。
でも、
以前は毎日限界だった。
今は通院できる。
食事できる。
休日に好きなことができる。
何年も仕事を続けられる。
障害年金や社会保障も使いながら生活できる。
なら、
人生全体が10万円分悪くなったとは限りません。
もちろん、低収入を美化するつもりはありません。
生活できる賃金は必要です。
障害者雇用にも賃金やキャリアの課題があります。
ただ、
年収だけで人生全部を採点しない。
ということです。
社会的に弱い立場になったら「高収入」より先に安全網を太くする
病気。
障害。
長期休職。
家族を頼れない。
貯金が少ない。
こうした条件が重なると、
再び仕事を失ったときの影響が大きくなります。
だからこそ、
給与。
障害年金。
社会保険。
生活防衛資金。
福祉。
職場の配慮。
を組み合わせます。
一本の太い柱にすべてを預けるのではなく、細い柱を何本か立てる。
これは、「わたしから。」で考えてきた生活再建そのものです。
「障害者雇用にするか」チェック
迷ったら、給与だけでなく、こんな比較をしてみます。【一般雇用と障害者雇用の比較メモ】 ■ 今の仕事 月収: 勤務時間: 通勤: 残業: 社会保険: 賞与: 昇給: 職場の配慮: 月の欠勤・早退: 仕事後の状態: 休日の状態: この仕事をあと3年続けられそう: ○・△・× ■ 検討している障害者雇用 月収: 勤務時間: 通勤: 残業: 社会保険: 賞与: 昇給: 受けられそうな配慮: 仕事内容: 正社員登用: あり・なし・不明 3年続けられそう: ○・△・× ■ 生活全体で比べる 収入: 今の仕事・障害者雇用 体調: 今の仕事・障害者雇用 通院: 今の仕事・障害者雇用 家事: 今の仕事・障害者雇用 仕事の継続: 今の仕事・障害者雇用 将来の年金・社会保険: 今の仕事・障害者雇用 私が一番守りたいもの: 今のところ合いそうなのは:
こうしてみると、
「月給が3万円下がる」
だけでは見えなかったものが出てきます。
まとめ|給料が下がるかではなく、「生活まで含めて収入を守れるか」
障害者雇用へ変わると、
給料が下がる可能性はあります。
厚生労働省の2023年度調査でも、精神障害者の平均月額賃金は14万9,000円、発達障害者では13万円など、賃金面に課題があることが分かります。
だから、
「障害者雇用なら全部うまくいく」
とは言えません。
収入も。
仕事内容も。
キャリアも。
きちんと確認する必要があります。
でも同時に、
月給だけで働き方の価値を決めない
ことも大切です。
短時間なら続けられる。
通院できる。
職場で助けを求められる。
社会保険に入れる。
障害年金と組み合わせられる。
仕事を辞めずに済む。
休日に自分の生活が残る。
これらにも、経済的な価値があります。
高い給料を3か月。
より、
少し低くても何年も働ける。
そんな選択が、その人にとって合っていることもあります。
40代からは、
「一番高い給料を取る」より、「生活を壊さず収入を長く維持する」
という考え方があっていい。
もちろん、
低賃金に甘んじなければならない、
という意味ではありません。
働き続けられる場所で、
少しずつ仕事を増やす。
昇給する。
正社員を目指す。
転職する。
そういう未来も作れます。
障害者雇用は、
人生のキャリアを諦める場所ではありません。
今の自分の力で、
もう一度、長く働ける足場を作る選択肢の一つ。
そう考えてみてもいいのだと思います。
給料。
年金。
社会保険。
体調。
時間。
生活。
全部合わせて、
「私はこの働き方なら暮らしていける」
と思える形を探す。
これからを、わたしから。