就職氷河期から20年以上。それでも国が支援を続けているのはなぜ?

就職氷河期から、もう20年以上が経ちました。

当時20代だった人の多くは、今では40代、50代です。

それでも国は、就職氷河期世代への支援を終えていません。

2025年度からは、就職氷河期世代だけに限らず、**おおむね35歳から59歳までの中高年層(ミドルシニア)**へ支援対象を広げています。厚生労働省は現在も、就職や生活に不安を抱える人に向けて、ハローワークの専門窓口や企業向けの雇用助成などを続けています。

「もう昔のことなのに、どうして今も支援が必要なの?」

そう思う人もいるかもしれません。

その理由を、厚生労働省の資料をもとに、できるだけ難しい言葉を使わずに見ていきます。

就職氷河期は「若いころ就職が大変だった」だけではない

就職氷河期というと、

「求人が少なかった時代」

「新卒採用が厳しかった時代」

というイメージがあります。

もちろん、それは間違いではありません。

でも、問題はそこだけではありません。

新卒のときに正社員として就職できなかった人が、その後も不安定な雇用を続けたり、十分な職歴を積めなかったりして、40代、50代になってからも再就職に苦労することがあります。

つまり、

20代のときの就職のつまずきが、その後のキャリアや収入にもつながってしまうことがある。

これが、今も支援が続いている大きな理由のひとつです。

厚生労働省の資料には「1,637万人」という数字がある

2020年版の厚生労働白書には、2019年時点で就職氷河期世代の中心層にあたる35~44歳が、1,637万人いたとされています。

その内訳を見ると、正規雇用で働く人がいる一方で、非正規雇用で働く人、仕事をしていない人なども一定数いました。

ここで注意したいのは、

非正規雇用だから問題

という話ではないことです。

自分の希望でパートや契約社員を選んでいる人もいます。

家庭や体調の事情で、その働き方が合っている人もいます。

国が問題としているのは、

「本当は安定した仕事に就きたいのに、その機会を得られなかった人」

です。

いちど職歴が途切れると、次の就職も難しくなる

たとえば、20代のころ。

新卒で正社員になれなかった。

派遣やアルバイトで働いた。

景気が悪くて契約が切れた。

心身の調子を崩して仕事を離れた。

すると30代、40代になって転職しようとしたときに、

「正社員経験はありますか?」

「この空白期間は何をしていましたか?」

と聞かれます。

本人としては、

「働きたくなかったから働かなかった」

わけではないかもしれません。

それでも、経歴だけを見ると不利になってしまう。

そして年齢が上がるほど、未経験の仕事への転職も難しくなっていきます。

こうして、

最初は景気の問題だったものが、時間が経つと「職歴の問題」に変わっていく。

これが、氷河期世代の問題が長く続く理由です。

国も「キャリアを作る機会を失った人」がいると認めている

この点は、現在の制度を見ると分かりやすいです。

厚生労働省は2025年4月から、**特定求職者雇用開発助成金(中高年層安定雇用支援コース)**を新設しました。対象は、就職氷河期世代を含む35歳以上60歳未満の中高年層で、就職の機会を逃したことなどによって十分なキャリア形成ができず、正規雇用が難しくなっている人です。

制度名だけを見ると、とても難しく感じます。

でも、簡単に言うと、

「若いころに十分な職歴を作れなかった人を採用した企業に、国が助成します」

という仕組みです。

これは、かなり大事なポイントです。

もし問題が完全に、

「本人がもっと努力すればよかった」

だけなら、企業側への助成は必要ありません。

国も、

個人だけでは埋めにくいハンデが残っている

と考えているからこそ、企業側にも支援しているのです。

2025年度から「就職氷河期支援」は中高年支援へ広がった

これまでの就職氷河期世代向け支援は、2025年3月末で一区切りとなり、2025年4月からは就職氷河期世代を含む中高年層への支援へ広がりました。

これは、

「就職氷河期の問題が解決した」

という意味ではありません。

むしろ、当事者が40代、50代になったことで、問題が

若者の就職問題

から、

中高年の雇用・生活・社会参加の問題

へ変化してきた、と考えたほうが分かりやすいと思います。

支援は「仕事を紹介する」だけではない

現在の厚生労働省の支援を見ると、仕事紹介だけではありません。

中高年向けのハローワーク支援のほか、職業訓練、地域若者サポートステーション、ひきこもり支援、生活困窮者自立支援制度など、仕事と生活の両方を支える仕組みが案内されています。

なぜ、ここまで幅広いのでしょう。

それは、長い間働きづらさを抱えている人の問題が、

「求人が見つからない」だけではない

からです。

仕事を失った。

収入が減った。

生活が不安定になった。

人とのつながりが減った。

体調を崩した。

自信を失った。

こうしたことが重なると、

「求人を紹介します」

だけでは再出発が難しい人もいます。

だから、仕事だけでなく生活そのものを支える仕組みが必要になるのです。

「選ばなければ仕事はあった」だけでは説明できない

就職氷河期について、

「仕事を選ばなければ働けた」

と言われることがあります。

もちろん、当時も仕事はありました。

厳しい時代のなかで正社員になった人もいます。

だから、

「氷河期世代は全員就職できなかった」

というわけではありません。

でも、現在も国が支援策を用意し、

さらに対象を中高年層へ広げているという事実を見ると、

「本人が仕事を選んだから」で全部説明するのは難しい

ことも分かります。

就職の入口が狭かった時期に社会へ出て、その後のキャリア形成まで影響を受けた人がいる。

だから今も支援が続いている。

そう考えるほうが自然です。

支援制度があっても、使えない人はいる

一方で、

「制度があるなら使えばいい」

とも簡単には言えません。

制度の存在そのものを知らない人もいます。

知っていても、自分が対象になるのか分からない人もいます。

窓口へ相談することに強い抵抗がある人もいます。

心身の不調、障害、家族関係、住んでいる地域の事情などによって、支援につながりにくい人もいます。

特に地方では、

制度そのものはあっても、

利用できる事業所が少ない。

交通手段がない。

専門職が少ない。

といった問題もあります。

だから、

「制度があります」で終わらず、「その人が実際に使えるか」まで考えることが大切

です。

支援を使うことは「負け」ではない

長い間、

「自分で何とかしなければ」

と思ってきた人ほど、支援を使うことに抵抗があるかもしれません。

でも、公的な支援は、

特別に誰かを甘やかすためにあるものではありません。

社会の中で起きた問題によって、個人だけでは立て直しにくい状況が生まれたときに、その差を少し埋めるための仕組みでもあります。

だから、

相談する。

制度を調べる。

職業訓練を使う。

ハローワークの専門窓口を利用する。

そうしたことも、

人生を組み直すための手段のひとつ

と考えていいのだと思います。

大切なのは「過去を責めること」ではなく「これからを考えること」

就職氷河期について調べていると、

「誰が悪かったのか」

という話になりやすいです。

政府。

企業。

社会。

本人。

いろいろな立場があります。

でも、今40代、50代になった私たちにとって、本当に大切なのは、

「これからどうするか」

ではないでしょうか。

若いころに戻ることはできません。

当時の景気を変えることもできません。

でも、

今使える制度を知る。

今の働き方を見直す。

生活費を整理する。

年金や老後について考える。

相談できる場所を増やす。

自分に合う仕事を探す。

そうしたことは、今からでもできます。

まとめ|国が今も支援しているのは、影響が今も続いているから

就職氷河期から20年以上経っても国が支援を続けている理由。

それを一言でまとめるなら、

若いころの就職のつまずきが、その後のキャリアや生活にも影響し続ける人がいるから

です。

厚生労働省の資料を見ると、現在も中高年層向けの就職支援や企業への助成が続いています。

つまり、

就職氷河期は、

「昔の不況の話」だけではありません。

今の40代、50代の働き方や暮らしにつながっている問題でもあります。

だから私は、

「あのときもっと頑張っていれば」

だけで、自分の人生を説明しなくてもいいと思っています。

過去に何があったのかを知る。

社会的な背景を知る。

今使える制度を知る。

そして、

今の自分に合った方法で、これからの人生を組み直す。

それが大切なのではないでしょうか。

これからを、わたしから。


参考資料

厚生労働省「令和2年版厚生労働白書」、中高年の活躍支援、特定求職者雇用開発助成金(中高年層安定雇用支援コース)

※制度は変更されることがあるため、利用時は最新の厚生労働省・ハローワーク情報を確認してください