40代・50代になった就職氷河期世代が、今からできること7つ――人生を「取り戻す」より「組み直す」
就職氷河期から20年以上。
当時20代だった私たちは、40代、50代になりました。
「もっと早く正社員になれていたら」
「もっと貯金できていたら」
「若いうちに資格を取っていたら」
「あの会社に入っていなければ」
そんなふうに過去を振り返ることがあるかもしれません。
私自身も、人生を振り返って「もし、あのとき……」と考えることがあります。
でも、過去を調べれば調べるほど、一つ分かってきたことがあります。
就職氷河期に起きたことを、すべて本人の努力不足だけで説明することはできないということです。
政府は現在も就職氷河期世代等への支援を続けています。2026年4月には新たな支援プログラムも決定され、安定した仕事、就労準備、生活の困りごと、ひきこもり、学び直しなど、複数の方向から支援する施策が示されています。(内閣府)
だったら、これから必要なのは、
「20代から人生をやり直すこと」ではなく、「今ある条件から人生を組み直すこと」
なのではないでしょうか。
今回は、40代・50代になった就職氷河期世代が、今からできることを7つに分けて考えてみます。
1.まず「自分が悪かった」という前提を外してみる
最初にすることは、転職でも投資でもありません。
一度、自分の人生を少し離れたところから見直してみることです。
「正社員になれなかった」
「転職を繰り返した」
「貯金が少ない」
「思っていた人生にならなかった」
そんな現在の状況を全部、
「自分がちゃんとしていなかったから」
と説明していないでしょうか。
もちろん、自分の選択だった部分もあります。
でも、生まれる時代は選べません。
景気も選べません。
企業の採用数も選べません。
病気、障害、家族の事情、職場で起きた出来事など、自分の努力だけではどうにもならないこともあります。
だから、人生を
「自分で選べたこと」
「自分では選べなかったこと」
に分けてみます。
これは責任逃れをするためではありません。
これから変えられるところを見つけるためです。
過去の原因探しを延々と続けるのではなく、
「では、今の私が動かせるものはどれだろう」
と考える。
人生を組み直す作業は、ここから始まります。
2.仕事は「年収」だけでなく「続けられるか」で考える
40代、50代になると、
「今から正社員にならなければ」
「年収を上げなければ」
と焦ることがあります。
でも、働き方を考えるとき、年収だけを見るのは少し危険です。
大切なのは、
収入・勤務時間・通勤・仕事内容・人間関係・心身への負担・続けられる年数
をセットで見ることです。
月収が高くても、半年で体調を崩して辞めてしまう働き方と、少し収入が低くても何年も安定して働ける働き方。
どちらが自分の人生に合っているかは、人によって違います。
そして、「もう40代だから仕事なんてない」と最初から諦める必要もありません。
現在、ハローワークには、就職氷河期世代を含む中高年層の安定就職を支援する「中高年層(ミドルシニア)専門窓口」があります。2025年度から対象年齢を広げ、従来の就職氷河期世代専門窓口から名称も変更されています。(厚生労働省)
地域によって利用できる支援は異なりますが、
「転職するかどうか」
をいきなり決めなくても、
まず相談して、自分にはどんな選択肢があるのかを知る。
それだけでも一歩です。
3.「老後にいくら必要?」より、まず今の最低生活費を知る
40代になると、老後のお金が急に怖くなります。
「老後○千万円必要」
「40代なら貯金○○万円」
そんな記事を見るたび、不安になる人もいるでしょう。
でも、最初に知りたいのは他人の平均額ではありません。
自分が1か月生活するために最低いくら必要なのか。
こちらです。
住居費。
食費。
光熱費。
通信費。
医療費。
交通費。
保険。
日用品。
その他、絶対に必要な支出。
まずこれを出します。
たとえば最低生活費が分かれば、
「3か月分ならいくら必要?」
「半年分なら?」
と、生活防衛資金の目標も具体的になります。
いきなり1,000万円を目指すより、
まず10万円。
次に30万円。
次に生活費3か月分。
というように、小さく区切ったほうが動きやすくなります。
人生を組み直すときは、
大きな不安を、小さな数字に変える。
これがとても大切です。
4.年金は「怖くて見ない」から「現在地を知る」へ
就職氷河期世代にとって、老後の年金は避けて通れない問題です。
非正規だった期間。
仕事をしていなかった期間。
厚生年金に加入していた期間。
人によって年金記録は大きく違います。
だから、
「きっと少ないだろう」
と想像して怖がるより、一度自分の記録を確認します。
日本年金機構の「ねんきんネット」では、自分の年金記録をもとに将来受け取る老齢年金の見込額を試算できます。
現在の条件のまま60歳まで加入した場合の「かんたん試算」のほか、今後の働き方や受給開始年齢などを変えた試算もできます。(年金制度ポータル)
ただし、これは老齢基礎年金・老齢厚生年金の試算で、障害年金や遺族年金は対象外です。(年金制度ポータル)
ここでも大切なのは、
少ないか多いかを他人と比べることではありません。
「私はこのままなら、どのくらいになりそうなのか」
を知ること。
現在地が分かれば、
あと何年働くか。
毎月いくら貯めるか。
住居費をどうするか。
資産形成をどう考えるか。
次の対策を考えられるようになります。
分からないものは怖い。
でも、数字にすると「対策できる問題」に変わることがあります。
5.使える制度を一度、棚卸しする
制度というと、
「本当に困窮している人が使うもの」
と思っている人もいるかもしれません。
でも、実際には仕事、住まい、家計、就労準備など、さまざまな支援があります。
たとえば厚生労働省の生活困窮者自立支援制度では、一人ひとりの状況に合わせ、仕事の支援、住まいの支援、家計を立て直す支援などが行われています。(厚生労働省)
政府の就職氷河期世代等支援でも、
「安定した職に就きたい」
「働く準備をしたい」
「生活に不安がある」
「学び直したい」
など、困りごと別に支援策を案内しています。(内閣府)
制度名を全部覚える必要はありません。
むしろ、
「困ったら調べられる場所がある」
と知っておくことのほうが重要です。
そして制度は地域や条件によって利用できるものが異なります。
記事を読んだだけで「私は対象外だ」と決めず、自治体やハローワークなどの窓口へ確認してみることも大切です。
6.家族だけに頼らない「小さな支援チーム」を作る
40代、50代になると、仕事とお金以外にも考えたいことがあります。
もし入院したら。
突然働けなくなったら。
一人で手続きできなくなったら。
住む場所に困ったら。
世の中の生活設計には、ときどき、
「困ったら実家へ」
「配偶者に頼る」
「将来は子どもに」
という家族の存在が暗黙の前提になっています。
でも、すべての人が家族を頼れるわけではありません。
だから私は、
「一人で何でもできる人になる」より、「一人で全部やらなくていい仕組みを作る」
ほうが現実的だと思っています。
医療のことを相談する場所。
仕事を相談する場所。
生活について相談する場所。
お金について確認する場所。
緊急時に連絡できる人。
一人に全部お願いする必要はありません。
それぞれ別でいい。
自分を中心に、小さな支援チームを作るイメージです。
家族だけを唯一のセーフティネットにしない。
これは、40代から少しずつ準備できることです。
7.「人生を取り戻す」のではなく、小さく組み直す
最後が、私が一番大切だと思っていることです。
40代、50代から、
20代の人と同じところまで追いつこうとしなくてもいい。
20年間の遅れを5年間で取り戻そうとしなくてもいい。
「正社員にならなければ」
「家を買わなければ」
「○千万円貯めなければ」
「普通の人生に戻らなければ」
と全部抱えたら、苦しくなります。
人生を一気に立て直すのではなく、
一つ困りごとを減らす。
それでいいと思います。
今月は、ねんきんネットを見る。
来月は、固定費を一つ確認する。
仕事が苦しいなら、相談窓口を一つ調べる。
生活が不安なら、自治体の相談先をスマートフォンに登録する。
そして余裕が出てきたら、小さく勉強したり、副収入につながることを試したりする。
一つ終わったら、次の一つ。
それが積み重なると、
「何もできていない人生」ではなく、
「少しずつ自分で選べる人生」
に変わっていくのではないでしょうか。
7つ全部を、今日やらなくていい
ここまで7つ書きました。
でも、全部やる必要はありません。
むしろ、全部やろうとしないでください。
今日するなら、一つで十分です。
たとえば、
「ねんきんネットを開いてみる」
でもいい。
「1か月の固定費を書いてみる」
でもいい。
「中高年層の相談窓口が近くにあるか調べる」
でもいい。
それすらしんどい日は、
この記事を読んだところまでで終わり。
そんな日があってもいいと思います。
まとめ|40代・50代からでも、人生は「再設計」できる
就職氷河期に社会へ出たこと。
若いころ十分な機会を得られなかったこと。
非正規だった期間。
職歴の空白。
収入や貯金。
それらを今から消すことはできません。
でも、
過去を変えられないことと、未来を変えられないことは同じではありません。
今の仕事をどうするか。
最低いくらあれば暮らせるか。
年金はいくらくらいになりそうか。
利用できる制度はあるか。
誰に相談できるか。
これからどんな暮らしをしたいか。
一つずつなら、確認できます。
就職氷河期を生きた私たちに必要なのは、
「若いころもっと頑張ればよかった」
と自分を責め続けることではなく、
今持っているカードを一度テーブルに並べて、これからどう使うかを考えること
なのかもしれません。
20代には戻れません。
だからこそ、
これからの20年、30年を考える。
人生を取り戻すのではなく、
今の自分に合う形へ組み直す。
今日できることを、一つから。
これからを、わたしから。