40代から人生を立て直すとき、最初に何から始める?――仕事・お金・住まい・心を「4つの箱」に分けて考える
「人生を立て直したい」
そう思ったとき、何から始めればいいのでしょうか。
転職したほうがいい?
貯金しなきゃ。
老後のお金も考えなきゃ。
今の家にずっと住めるのかな。
身体のことも心配。
親のこともある。
制度も調べたほうがいいらしい。
考え始めると、やることが一気に増えてしまいます。
特に40代、50代になると、問題が一つだけということは少なくなります。
仕事とお金。
お金と住まい。
仕事と心身の調子。
老後と年金。
それぞれがつながっています。
だから、
「全部どうにかしなくちゃ」
と思うほど、何から手をつければいいのか分からなくなります。
そんなとき私は、人生をいったん4つの箱に分けて考えるのがいいと思っています。
仕事・お金・住まい・心と生活。
今日は人生を立て直すのではありません。
まず、この4つの箱を机の上に置いて、
「今、一番困っている箱はどれ?」
と確認するところから始めます。
40代からの人生再設計は「足りないもの探し」から始めない
人生を立て直そうとすると、
「貯金が足りない」
「資格がない」
「職歴が弱い」
「家を持っていない」
「老後資金が足りない」
と、自分にないものばかり探してしまうことがあります。
でも、それでは苦しくなります。
最初に必要なのは、
自分の現在地を知ること。
そして、
「今すぐ困ること」
「少し先に困りそうなこと」
「今のところ大丈夫なこと」
を分けることです。
そこで4つの箱それぞれに、
赤・黄・青
の信号をつけてみます。
赤は、今かなり困っている。
黄は、今すぐではないけれど対策したい。
青は、今のところ大丈夫。
たとえば、
仕事=黄色
お金=赤
住まい=青
心と生活=黄色
でもいい。
全部赤だったとしても構いません。
大切なのは、
「私の人生は全部ダメ」から、「今はこの部分が困っている」へ変えること。
問題を小さくできれば、対策も考えやすくなります。
1つ目の箱「仕事」――収入より先に「続けられるか」を見る
最初は仕事です。
40代になると、
「もっと給料の高い仕事へ転職したほうがいいのかな」
と考えることがあります。
もちろん収入は大切です。
でも、それだけではありません。
こんなことも確認してみます。
今の仕事をあと5年続けられそうか。
10年ならどうか。
勤務時間は長すぎないか。
通勤だけで疲れていないか。
身体への負担は大きすぎないか。
人間関係で消耗しすぎていないか。
休みは取れているか。
体調を崩したとき休めるか。
そして、
「この仕事を続けるために、何か一つ減らせないか」
も考えます。
仕事を辞めるか続けるかの二択だけではありません。
勤務時間を変える。
仕事内容を調整する。
苦手な業務を相談する。
配置を変える。
資格を取る。
小さく副収入を作る。
転職情報だけ集めておく。
いろいろな中間地点があります。
現在、ハローワークには就職氷河期世代を含む中高年層向けの「中高年層(ミドルシニア)専門窓口」があり、キャリア相談から応募書類、面接、就職後の定着まで支援しています。
だから、転職を決めていなくても、
「今の自分には、どんな働き方の選択肢がある?」
を調べるところから始めてもいいのです。
仕事の箱が赤なら、
今日することは「退職届を書く」ではありません。
相談先を一つ調べる。
それくらいからで十分です。
2つ目の箱「お金」――まず「最低いくらあれば暮らせる?」を知る
次はお金です。
40代になると、
「老後には何千万円必要」
「40代の平均貯蓄額は○○万円」
といった情報が気になります。
でも、他人の平均額から始める必要はありません。
最初に知りたいのは、
自分が1か月暮らすために最低いくら必要なのか。
です。
家賃。
食費。
水道光熱費。
通信費。
医療費。
交通費。
保険。
借入金の返済。
最低限の日用品。
まず、絶対に必要なものだけ書きます。
家計簿を1円単位でつけなくても構いません。
「だいたい」でいい。
たとえば最低生活費が月15万円なら、
1か月分=15万円。
3か月分=45万円。
6か月分=90万円。
というように、初めて具体的な目標が見えてきます。
「老後までに2000万円」
という大きな数字より、
「まず生活費1か月分を守る」
のほうが、今できる行動につながります。
家計が複雑になっていて、自分だけでは整理しにくい場合には、厚生労働省の生活困窮者自立支援制度に「家計改善支援事業」もあります。
家計を見える化し、必要に応じて関係機関につなぎながら、生活の立て直しを支援する仕組みです。
お金の箱が赤なら、
最初にすることは投資を始めることではなく、
「私は毎月最低いくらあれば生活できる?」を知ること。
そこからです。
年金も「お金の箱」に入れてしまう
老後や年金を別の巨大な問題にすると、また箱が増えてしまいます。
なので最初は、お金の箱に入れてしまいます。
日本年金機構の「ねんきんネット」では、自分の年金記録を確認でき、将来受け取る老齢年金の見込額も試算できます。
現在と同じ条件で60歳まで加入した場合の「かんたん試算」だけでなく、今後の働き方や受給開始年齢などを変えた試算もできます。
つまり、
「老後が怖い」
という漠然とした不安を、
「今の働き方なら、将来どのくらいになりそう?」
という具体的な数字へ変えることができます。
数字は自分を怖がらせるためではありません。
対策を考えられる大きさまで、不安を小さくするために使います。
3つ目の箱「住まい」――今住めるかではなく「10年後も暮らせる?」を見る
住まいについては、
「今、家賃を払えているから大丈夫」
だけではなく、少し先を考えます。
10年後もここに住めそうか。
収入が減っても家賃を払えるか。
階段は大丈夫か。
スーパーは近いか。
病院へ行けるか。
公共交通機関はあるか。
車を運転できなくなっても暮らせるか。
頼れる人から遠すぎないか。
必要な医療や福祉サービスを利用できる地域か。
40代では問題なくても、60代、70代になると暮らしにくくなる場所があります。
逆に、
「家賃が少し高い」
というだけで引っ越すと、交通費や医療へのアクセスが悪くなり、生活全体では負担が増える場合もあります。
だから住まいは、
家賃だけではなく「生活インフラ」として考える。
今すぐ引っ越す必要はありません。
住まいの箱が黄色なら、
「今の家にあと10年住むとしたら、何が困りそう?」
と書くだけでもいいのです。
もし失業や収入減少などで住居そのものが危うくなった場合には、生活困窮者自立支援制度などを通じて住まいに関する支援につながれる場合があります。
大切なのは、
住めなくなってから初めて考えないこと。
です。
4つ目の箱「心と生活」――一番後回しにしない
最後は、心と生活です。
私は、この箱をとても大切にしたいと思っています。
仕事。
お金。
住まい。
これらを立て直すためには、考えたり、調べたり、相談したりする力が必要です。
でも、心身が限界まで疲れていたら、それができません。
だから、
眠れているか。
食べられているか。
休めているか。
家事が回っているか。
病院へ行けているか。
薬を管理できているか。
一人で抱え込みすぎていないか。
困ったときに相談できる人や場所があるか。
こうしたことも、人生設計の一部です。
「もっと頑張れるようになってから人生を立て直す」
のではありません。
むしろ、
頑張らなくても生活が壊れにくい仕組みを作る。
そのほうが大切なことがあります。
毎日料理できないなら、冷凍食品や宅配を使う。
掃除を完璧にできないなら、最低限にする。
書類が苦手なら、一緒に確認してくれる人や窓口を探す。
予定を覚えられないなら、スマートフォンに任せる。
それも立派な生活設計です。
4つの箱は「全部改善」しなくていい
ここまで、
仕事。
お金。
住まい。
心と生活。
の4つを見てきました。
ここで重要なのは、
全部を同時に改善しないこと。
です。
たとえば、
仕事=黄色
お金=赤
住まい=青
心と生活=黄色
だったら、最初は「お金」だけでいい。
しかも、お金の箱全部ではありません。
「最低生活費を調べる」
だけ。
それができたら、
「生活費1か月分の現金を目標にする」
へ進む。
次に余裕ができたら、仕事を見る。
人生を立て直すとき、
大きな計画を作ることより、
次にする一つが分かっていること
のほうが大切です。
「赤・黄・青」で現在地を確認してみる
紙でもスマートフォンでも構いません。
こんなふうに書いてみます。
仕事 赤・黄・青
お金 赤・黄・青
住まい 赤・黄・青
心と生活 赤・黄・青
そして、それぞれに一言だけ書きます。
たとえば、
仕事=黄色
「身体への負担が少し心配」
お金=赤
「生活防衛資金が少ない」
住まい=青
「今のところ問題なし」
心と生活=黄色
「疲れると家事が回らない」
これだけです。
完璧な人生計画書はいりません。
むしろ、
これくらい簡単なほうが続きます。
赤信号が複数あるときは「生活を守る順番」で考える
もし、
「全部赤なんだけど……」
となったらどうするか。
そんなときは、人生の理想ではなく、
生活が止まらない順番
で考えます。
まず、命や健康。
次に、今日暮らすためのお金。
次に、住む場所。
そして仕事。
ただし状況によって順番は変わります。
だから、一人で整理できないときは相談していい。
厚生労働省の生活困窮者自立支援制度には、自立相談支援、家計改善、就労支援、居住支援などがあります。
制度名を全部覚える必要はありません。
「生活全体がぐちゃぐちゃになって、どこから手をつければいいか分からないときの相談先がある」
と覚えておけば十分です。
40代からは「普通の人生」を目標にしなくてもいい
人生を立て直そうとすると、
正社員。
持ち家。
十分な貯金。
結婚。
家族。
健康。
そんな「普通」と呼ばれるものを全部そろえなければいけないような気持ちになることがあります。
でも、本当に必要なのは、
誰かの人生に追いつくことではありません。
自分の生活が続くこと。
安心して眠れる場所がある。
生活できる収入がある。
困ったとき相談できる。
体調を崩しても全部が崩壊しない。
少し好きなことをする余裕がある。
私は、それも十分に立派な人生設計だと思います。
まとめ|人生を立て直すのではなく、まず「一つの箱」を整える
40代から人生を立て直したい。
そう思ったとき、
人生全部を目の前に置くと、大きすぎます。
だから、
仕事・お金・住まい・心と生活。
4つの箱に分けます。
そして、
赤。
黄。
青。
をつける。
赤い箱があったら、その中から一つだけ取り出す。
仕事なら、相談先を一つ調べる。
お金なら、最低生活費を出す。
住まいなら、10年後も住めるか考える。
心と生活なら、今一番負担になっていることを一つ減らす。
それでいいのです。
人生を一日で立て直すことはできません。
でも、
今日、一つの箱を開けることはできます。
40代からでも。
50代からでも。
途中で仕事を失っていても。
病気や障害で立ち止まった時期があっても。
非正規の期間が長くても。
家族を頼れなくても。
今いる場所から、
「これからの私が少し暮らしやすくなる形」
へ組み直していくことはできます。
昨日までの人生を取り戻すのではなく、
これからの人生を作っていく。
一つずつ。
これからを、わたしから。