40代、貯金が少なくても何から始める?――最初の目標は老後2000万円ではなく「生活防衛資金」

40代になると、お金について少し怖い言葉を目にすることが増えます。

「老後2000万円問題」

「40代の平均貯蓄額」

「老後資金が足りない」

「今から投資しないと間に合わない」

こうした情報を見るたびに、

「私、全然貯金できていない」

「もう40代なのに」

「今からでは遅いのでは」

と不安になる人もいるのではないでしょうか。

特に、就職氷河期を経験した人。

非正規雇用の期間が長かった人。

病気や障害などで働けない時期があった人。

離職や転職を繰り返してきた人。

家族を経済的に頼ることが難しい人。

そうした事情があれば、若いころから順調に貯金できなかったとしても不思議ではありません。

だから、40代からお金を立て直すときに、

いきなり「老後に2000万円」を目標にしなくてもいい。

私はまず、

「もし収入が止まっても、しばらく生活できるお金」

を作るところから始めるのがいいと思っています。

それが、いわゆる生活防衛資金です。

そもそも「老後2000万円」は全員に必要な金額ではない

「老後2000万円」という言葉は、とても強烈でした。

でも、ここは一度整理しておきたいところです。

2019年に金融庁の金融審議会の報告書で示されたのは、ある一定の条件を置いた高齢夫婦世帯について、毎月の収入と支出の差額が約5万円となり、それが長期間続くと約2000万円になるという一つのモデルケースでした。

つまり、

「日本人は全員、65歳までに2000万円用意してください」

という意味ではありません。

実際に老後に必要なお金は、

年金額。

住居費。

持ち家か賃貸か。

一人暮らしか二人暮らしか。

医療費。

働く期間。

生活水準。

貯蓄。

などによって大きく変わります。

それなのに、

「2000万円ない=老後破綻」

と思ってしまったら、40代で貯金が少ない人ほど動けなくなってしまいます。

だから、もっと手前から考えます。

最初に守りたいのは「老後」ではなく「来月の生活」

老後ももちろん大切です。

でも、老後資金を作っている途中で、

病気になった。

仕事を失った。

勤務時間が減った。

家電が壊れた。

車の修理が必要になった。

急な医療費が出た。

そんなことが起きたらどうでしょう。

貯金がほとんどなければ、

「投資を続けるか」

より先に、

「来月の家賃をどうする?」

という問題になります。

だから、40代からお金を組み直すときは、

老後資金より先に、

今の生活を止めないためのお金

を作ります。

生活防衛資金って何?

生活防衛資金は、法律上の正式な制度名ではありません。

一般に、

病気・失業・収入減少など、予想外のことが起きたときに生活を維持するため、すぐ使える形で持っておくお金

という意味で使われています。

大事なのは、

「増やすためのお金」ではなく、

「守るためのお金」

だということです。

そのため、株式など値動きの大きい資産とは分けて考えます。

必要になったらすぐ使える普通預金などに置いておく。

投資のように、

「10年後に増えていたらいいな」

ではありません。

「来月必要になっても使える」

ことを優先するお金です。

では、いくら必要?

ここでまた、

「生活防衛資金は○○万円必要」

と一律に決めると苦しくなります。

必要額は、その人の生活費によって違います。

だから最初に、

自分の最低生活費

を出します。

細かい家計簿を作る必要はありません。

まず必要なのは、毎月ほぼ必ず出ていくお金です。

たとえば、

住居費 50,000円
食費 30,000円
水道光熱費 15,000円
通信費 8,000円
医療費 10,000円
保険 10,000円
交通費 10,000円
日用品など 7,000円

だったとします。

合計すると13万円です。

この人の場合、

「最低でも月13万円あれば、とりあえず生活を続けられる」

という現在地が分かります。

ここまで分かれば、目標を小さくできます。

いきなり6か月分を貯めなくていい

よく、

「生活防衛資金は生活費3〜6か月分」

といった目安を見かけます。

でも、月13万円なら、

3か月で39万円。

6か月なら78万円です。

貯金がほとんどない状態で、

「まず78万円!」

と言われたら、これも十分大きな数字です。

だから、さらに小さくします。

第1目標 5万円

まず、急な通院や修理などに使えるお金を作る。

次に、

第2目標 10万円

そして、

第3目標 最低生活費1か月分

13万円。

それができたら、

第4目標 3か月分

39万円。

さらに余裕が出てきたら、

第5目標 6か月分

78万円。

こうすると、

「78万円貯めなきゃ」

ではなく、

「あと2万円で最初の5万円」

になります。

人生を組み直すとき、大きな数字を小さな階段にすることは、とても大切です。

家族を頼れない人は「少し厚め」も考える

生活防衛資金の必要額は、人によって違います。

特に考えておきたいのが、

「困ったとき誰かに頼れるか」

です。

実家に戻れる。

一時的に家族に助けてもらえる。

夫婦で収入源が二つある。

こうした人と、

一人暮らし。

家族を頼れない。

病気などで働けなくなる可能性がある。

転職に時間がかかりそう。

車が生活に不可欠。

ペットがいる。

といった人では、必要な備えも違います。

後者の場合は、可能なら生活防衛資金を少し厚めに持っておくと安心です。

これは、

「一人だからもっと貯めなければいけない」

と不安を煽りたいわけではありません。

自分の生活条件に合わせて安全網を作る

ということです。

貯金より先に「出血」を止めたほうがいい場合もある

毎月、

収入20万円。

支出21万円。

だったとします。

この状態で、

「毎月1万円貯金しましょう」

と言われても難しいですよね。

まず必要なのは、

毎月の赤字を止めること

です。

でも、食費を極端に削るところから始める必要はありません。

先に、

使っていないサブスク。

スマートフォン料金。

保険。

手数料。

あまり使っていないサービス。

など、生活の満足度をあまり下げずに減らせる固定費を確認します。

ただし、保険などは保障内容が関係するため、金額だけを見て急いで解約するのではなく、必要な保障を確認してから判断します。

節約とは、

「できるだけ使わないこと」ではなく、「自分に必要なものへお金を残すこと」

だと思います。

借金や滞納があるなら「貯金だけ」が最優先とは限らない

もう一つ大切なことがあります。

カードローン。

リボ払い。

消費者金融。

税金の滞納。

家賃の滞納。

こうしたものがある場合です。

そのときは、

「生活防衛資金を100万円作ってから返そう」

とは限りません。

利息や滞納による負担が大きい場合があるからです。

一方で、手元のお金をすべて返済に回して現金がゼロになると、ちょっとした出費でまた借りることになってしまう場合もあります。

だから、

最低限の現金を確保しながら、返済や家計を整理する

必要があります。

自分だけで整理するのが難しい場合には、厚生労働省の生活困窮者自立支援制度に「家計改善支援事業」があります。

家計状況を「見える化」して、必要な支援につなぎながら生活の立て直しを考える制度です。

お金に困っていると、

「自分の管理能力がないから」

と思ってしまうことがあります。

でも、問題が複数絡んでいると、一人で整理すること自体が難しくなります。

そんなときは、相談を使っていいのです。

投資はどうする?

40代になると、

「今から投資しないと間に合わない」

という焦りも出てきます。

NISAやiDeCoなど、長期の資産形成に使える制度もあります。

でも、

生活防衛資金と投資資金は、役割が違います。

生活防衛資金は、

「明日必要になるかもしれないお金」。

投資は、

「長期間使わないことを前提に、将来のために育てるお金」。

同じ「貯める」でも違います。

だから、手元にほとんど現金がない状態なら、

投資額を増やすことだけを急ぐ必要はありません。

まず生活の土台を作る。

そのうえで、余裕資金から将来の資産形成を考える。

この順番のほうが、相場が下がったときに生活費のために投資資産を売るリスクも減らせます。

年金は「怖いから見ない」をやめてみる

生活防衛資金が少しできてきたら、次に考えたいのが老後です。

ここで初めて、

「私には老後いくら必要?」

へ進みます。

その前に確認したいのが、自分の年金です。

日本年金機構の「ねんきんネット」では、自分の年金記録を確認でき、将来受け取る老齢年金の見込額も試算できます。

ここで重要なのは、

平均的な年金額ではなく、

「私はこのままだと、どのくらいになりそう?」

を見ることです。

老後の必要額は、

将来の生活費 − 年金などの収入

によって変わります。

だから全員一律に2000万円ではありません。

自分の数字を知って、初めて自分の老後計画が始まります。

40代からのお金は「3つ」に分けると考えやすい

お金について考えるのが苦手なら、私は3つに分ける方法をおすすめします。

①暮らすお金

毎月の家賃、食費、光熱費など。

②守るお金

生活防衛資金。

病気、失業、急な出費などに備える現金です。

③未来のお金

老後資金や長期の資産形成。

この3つです。

未来のお金だけを増やそうとして、今の生活が苦しくなってしまっては続きません。

逆に、未来のことを完全に無視する必要もありません。

暮らす → 守る → 育てる。

順番をつけるだけで、お金の問題は少し見やすくなります。

今日やることは「2000万円を貯める」ではない

この記事を読んで、

「じゃあ家計を全部見直そう」

と思わなくて大丈夫です。

今日することは、一つだけ。

スマートフォンのメモに、

「私の最低生活費」

と書きます。

そして、

家賃。

食費。

光熱費。

通信費。

医療費。

交通費。

保険。

その他絶対に必要なもの。

をざっくり書きます。

合計が正確でなくても構いません。

まず、

「私は月いくらあれば、とりあえず生活できる?」

を知る。

それが、40代からお金を組み直す最初の一歩です。

まとめ|「老後2000万円」より、まず生活を守れる5万円から

40代で貯金が少ない。

それを知ると焦ります。

でも、

焦って大きな投資をする。

無理な節約をする。

生活を楽しむお金まで全部削る。

そんなことから始める必要はありません。

まず、

最低生活費を知る。

毎月の赤字がないか確認する。

5万円を作る。

次に10万円。

そして生活費1か月分。

3か月分。

必要なら6か月分。

一段ずつでいい。

その土台ができたところで、年金を確認し、老後資金や資産形成を考えていきます。

40代からのお金の立て直しは、

「失った時間を急いで取り戻すゲーム」ではありません。

これから何かあったときに、

「もう生活できない」

となる可能性を一つずつ減らしていくこと。

それが最初の目的です。

2000万円という遠い数字を見る前に、

まず自分の生活を守れる5万円から。

5万円ができたら、次の一段へ。

小さくても、

自分を守るお金が増えていくことは、自分で選べる未来が少しずつ増えていくことでもあります。

今日から一つずつ。

これからを、わたしから。