40代、病気で仕事を休んだら収入はどうなる?――有給・傷病手当金・休職・障害年金を混ぜずに整理する
病気になった。
医師から、
「しばらく仕事を休んだほうがいいですね」
と言われた。
身体や心のことも心配です。
でも、同時に頭に浮かぶのは、
「休んだら、給料はどうなるの?」
ということではないでしょうか。
住宅費。
食費。
医療費。
車。
保険。
ペット。
生活は、治療中でも待ってくれません。
40代になると、
「仕事を休む=収入が途切れる」
という怖さが、治療を休むことより大きくなることがあります。
そのため、本当は休養が必要なのに、
「とりあえず有給で何とかする」
「もう有給がないから無理して働く」
「仕事を辞めればいいのかな」
と、一気に考えてしまう。
でも、病気で仕事を休むときに使える可能性のある仕組みは、一つではありません。
大きく分けると、
有給休暇。
会社の休職制度。
健康保険の傷病手当金。
そして、病気や障害の状態が長期にわたり一定の要件を満たす場合の障害年金。
があります。
この4つは似ているようで、役割が違います。
今回は、
「何が給料で、何が社会保険で、何が年金なのか」
から整理します。
- まず結論。「4つのお金」を一本の線にしない
- 第1段階|数日休むなら、まず有給休暇を確認する
- 第2段階|長く休みそうなら「休職制度があるか」を会社へ確認する
- 「休職中=給与が出る」とは限らない
- 第3段階|給与が出ないなら「傷病手当金」を確認する
- 「3日休んだらすぐもらえる」ではない
- 傷病手当金はいくらくらい?
- 傷病手当金はどのくらいの期間もらえる?
- だから「退職する前」に傷病手当金を確認したい
- 傷病手当金は申請しないと自動では入ってこない
- 第4段階|病気が長期に続くなら「障害年金」という別の制度がある
- 「働いている=障害年金は絶対もらえない」ではない
- 傷病手当金と障害年金は「短期版・長期版」という単純な関係でもない
- 「休職→復職」も一気に100%に戻さなくていい
- 40代で一番避けたいのは「収入が怖くて治療を中断すること」
- 家族を頼れない人ほど「収入ゼロの日を作らない準備」を早めにする
- まずこの順番で確認すればいい
- 今日使える「病気で休むときのお金メモ」
- まとめ|仕事を休むことと、生活を止めることは同じではない
まず結論。「4つのお金」を一本の線にしない
簡単にすると、こうです。
有給休暇
→会社から給与を受け取りながら休むための休暇。
休職
→会社との雇用関係を残したまま、一定期間仕事を休む会社の制度。
傷病手当金
→病気やけがで働けず、給与を十分受け取れないときの健康保険からの所得保障。
障害年金
→病気や障害によって、日常生活や仕事に長期的な制限が生じ、一定の要件を満たした場合に受け取れる公的年金。
こうすると、かなり違うことが分かります。
特に、
休職=お金がもらえる制度
ではありません。
ここは重要です。
第1段階|数日休むなら、まず有給休暇を確認する
体調を崩して、
「数日休みたい」
という段階なら、まず年次有給休暇を使う人が多いと思います。
有給休暇を取得すれば、法律や会社の定めに基づいて賃金の支払いがあります。
だから、
3日。
1週間。
といった短期間なら、有給で療養することもあります。
ただし、
有給を全部使い切ることだけを目標にしない
ことも大切です。
たとえば医師から、
「最低でも1か月は休養が必要」
と言われているのに、
有給10日分だけ休んで、
「なくなったから復帰」
では、身体が回復していない可能性があります。
有給は、
治療期間そのものを決める制度ではありません。
給与を受けながら休める日数
と考えます。
第2段階|長く休みそうなら「休職制度があるか」を会社へ確認する
1週間、2週間では足りない。
1か月。
3か月。
半年。
休養が必要になることもあります。
そのとき確認するのが、
会社の休職制度
です。
休職は、法律ですべての会社に同じ内容で義務づけられた制度ではありません。
会社ごとに就業規則などで定められていることがあります。
厚生労働省のモデル就業規則も、実際の就業規則は各事業場が実情に応じて作成するものとしています。常時10人以上を使用する事業場には就業規則の作成・届出義務があります。
だから会社へ、
「病気休職の制度はありますか?」
「最長何か月ですか?」
「休職中の給与はどうなりますか?」
「社会保険料はどう支払いますか?」
「復職するときは何が必要ですか?」
と確認します。
ここは会社によって違います。
「休職中=給与が出る」とは限らない
ここはとても大切です。
会社の休職制度で雇用関係が続いていても、
休職期間中に給与が支払われるかどうかは会社によります。
無給の会社もあります。
一部給与が出る会社もあります。
独自の補償制度がある会社もあります。
だから、
「休職できるから生活費も大丈夫」
とは限りません。
そこで出てくるのが、
傷病手当金
です。
第3段階|給与が出ないなら「傷病手当金」を確認する
傷病手当金は、会社員など健康保険の被保険者が、業務外の病気やけがで働けなくなった場合に、生活を支えるための制度です。
協会けんぽによると、主な条件は、
業務外の病気やけがで療養していること。
療養のため仕事ができないこと。
連続3日間の待期を含め4日以上仕事を休んでいること。
給与の支払いがないこと。
です。給与が一部支払われている場合は、傷病手当金との差額が支給される場合があります。
普通の言葉にすると、
「病気で働けない。その間、会社から十分な給料をもらえない。その生活費の一部を健康保険で支える」
制度です。
「3日休んだらすぐもらえる」ではない
傷病手当金には、
待期3日間
があります。
仕事を休み始めた日から連続する3日間は待期。
その後、4日目以降の休業日が支給対象になります。
この待期には、有給休暇や土日などの公休日を含められる場合があります。
だから、
「有給を使ったら傷病手当金を使えなくなる」
と単純には考えません。
自分の休業日程と会社の給与支払い状況を確認します。
傷病手当金はいくらくらい?
金額は人によって違います。
協会けんぽでは、支給開始日以前12か月間の標準報酬月額の平均額をもとに、おおむね1日あたりその30分の1の3分の2相当額を計算する仕組みです。
難しいですよね。
普通の感覚では、
給与満額がそのまま入る制度ではない
と思っておくといいです。
「だいたい給料の3分の2くらい」という説明を目にすることがありますが、実際の金額は標準報酬月額や給与の支給状況などで変わります。
だから、
実際いくらになりそう?
は健康保険へ確認します。
傷病手当金はどのくらいの期間もらえる?
現在の制度では、同一の病気やけがについて、支給開始日から通算して1年6か月が支給期間です。
途中で復職して傷病手当金を受けていない期間があれば、その期間を除いて通算する仕組みです。厚生労働省は2022年からこの支給期間を通算化しています。
これは、
「最初に休んだ日から1年6か月たったら必ず終了」
という旧来の考え方とは違います。
途中で働けた時期がある場合、より柔軟に利用できる仕組みです。
だから「退職する前」に傷病手当金を確認したい
体調が悪いと、
「もう会社辞めます」
と言いたくなることがあります。
でも、その前に、
在職中に健康保険や会社へ傷病手当金について確認する
ことをおすすめします。
退職後も一定の条件を満たせば傷病手当金の継続給付を受けられる場合がありますが、条件があります。
勢いで退職してから、
「傷病手当金を使えたかもしれなかった」
となるより、
在職中に確認する。
この順番が大切です。
傷病手当金は申請しないと自動では入ってこない
会社を休んだから、
自動的に健康保険からお金が振り込まれる。
わけではありません。
申請が必要です。
協会けんぽの場合は申請書に、
本人。
会社。
医師。
が関わる欄があります。
現在は電子申請も用意されており、協会けんぽは審査の結果支給可能であれば受付日から10営業日以内の支払いを案内しています。
ただし、記載内容や審査状況などによって異なる場合があります。
だから、
生活費が苦しくなってから申請方法を調べるのではなく、休職が決まったら早めに書類を確認する。
これも生活防衛です。
第4段階|病気が長期に続くなら「障害年金」という別の制度がある
ここで傷病手当金と混同されやすいのが、
障害年金
です。
障害年金は、
「仕事を休んだらもらえるお金」
ではありません。
病気やけがによって一定程度の障害状態となり、初診日や保険料納付などの要件を満たす場合に受給できる公的年金です。
会社員等として厚生年金加入中に初診日がある場合には障害厚生年金、国民年金加入中などの場合には障害基礎年金が関係します。
日本年金機構は、それぞれ受給するために一定の要件があることを案内しています。
「働いている=障害年金は絶対もらえない」ではない
ここも誤解されやすいところです。
障害年金は、
失業手当のような「仕事をしていないこと」が一律の条件ではありません。
ただし、障害の状態を判断するうえで、日常生活や労働への影響などが重要になります。
病名だけで決まる制度でもありません。
だから、
「働いているから絶対無理」
「病名が○○だから必ずもらえる」
どちらも単純ではありません。
自分の状態が対象になる可能性については、日本年金機構や年金事務所などで確認する必要があります。
傷病手当金と障害年金は「短期版・長期版」という単純な関係でもない
イメージとして、
傷病手当金=休職中。
障害年金=長期。
とすると分かりやすい部分はあります。
でも、別制度です。
傷病手当金は、
健康保険からの所得保障。
障害年金は、
公的年金制度からの年金給付。
です。
同じ病気やけがを理由に両方が関係する場合には、支給額が調整されることがあります。
だから、
「両方そのまま満額でもらえる」
と自己判断しないこと。
逆に、
「傷病手当金をもらったから障害年金は申請できない」
とも決めないことです。
自分の場合の扱いを健康保険や年金事務所へ確認します。
「休職→復職」も一気に100%に戻さなくていい
傷病手当金を受けながら休養し、
体調が戻ってきた。
すると次は、
復職
です。
ここでも、
休職中0%。
復職した瞬間100%。
でなくていい場合があります。
厚生労働省は、メンタルヘルス不調で休業した労働者の職場復帰支援について手引きを公表しています。職場復帰の判断や復帰後のフォローアップなど、段階的に支援する考え方が示されています。
また、治療と仕事の両立支援では、主治医の意見などを活用しながら、離職や長期休業を避けつつ働き方を調整する取り組みが進められています。
だから、
短時間勤務。
残業免除。
業務を軽くする。
休憩を増やす。
通院日を確保する。
などを会社へ相談できる場合があります。
40代で一番避けたいのは「収入が怖くて治療を中断すること」
仕事を休むと収入が減る。
これは現実です。
だから、
薬を減らす。
病院へ行かない。
無理して復帰する。
となってしまうことがあります。
でも、その結果病気が悪化して、
さらに長く働けなくなったら、生活への影響はもっと大きくなります。
だから、
治療か生活費か
の二択にしないことが大切です。
有給。
会社の休職制度。
傷病手当金。
必要なら障害年金。
公的制度を組み合わせて、
治療する時間を作ります。
家族を頼れない人ほど「収入ゼロの日を作らない準備」を早めにする
家族が生活費を助けてくれる。
配偶者に収入がある。
実家へ戻れる。
そういう安全網がない場合、
休職による収入減の影響はさらに大きくなります。
だからこそ、
休職を考えた段階で、
会社。
健康保険。
主治医。
必要なら年金事務所。
へ早めにつながります。
一人ですべて理解する必要はありません。
むしろ、
「病気で働けなくなりそうです。収入について使える制度を確認したいです」
と相談していい。
まずこの順番で確認すればいい
制度が多くて分からなくなったら、
順番を単純にします。
数日休む
→有給残日数を見る。
長く休みそう
→会社の休職制度を見る。
給与が出ない・減る
→傷病手当金を確認する。
病気・障害による制限が長期に続いている
→障害年金の対象になる可能性を確認する。
これくらいでいいです。
最初から全部申請する必要はありません。
今日使える「病気で休むときのお金メモ」
相談時に使えるよう、メモも作っておきます。【病気で休むときのお金メモ】 ■ 仕事 勤務先: 雇用形態: ■ 有給休暇 残り: 日/分からない ■ 休職 会社に休職制度がある: ある・ない・まだ確認していない 休職できる期間: : 休職中の給与: 出る・出ない・一部・分からない ■ 傷病手当金 加入している健康保険: : 申請した: はい・いいえ・まだ調べていない ■ 医師 仕事を休む必要があると言われた: はい・いいえ 休養予定期間: : ■ 障害年金 病気・障害による生活や仕事への影響が長く続いている: はい・いいえ・分からない 年金事務所へ相談: 済・未 ■ 今一番心配なこと □ 収入がなくなる □ 家賃 □ 医療費 □ 仕事へ戻れるか □ 休職できるか □ 制度が分からない □ その他:
全部埋めなくてもいい。
「分からない」が見つかったら、
その一つを会社や健康保険へ確認します。
まとめ|仕事を休むことと、生活を止めることは同じではない
病気になった。
仕事を休まなければならない。
そのとき、
「収入がなくなるから休めない」
と思うことがあります。
でも、
有給休暇。
休職制度。
傷病手当金。
障害年金。
それぞれ役割の違う仕組みがあります。
傷病手当金は、一定の条件を満たす健康保険の被保険者が病気やけがで働けず給与を十分受けられない場合の所得保障で、支給期間は同一傷病について通算1年6か月です。
一方、障害年金は、一定の障害状態や初診日・保険料納付などの要件を満たす場合の公的年金です。
つまり、
全部同じお金ではありません。
そして、
全部一人で理解する必要もありません。
会社に、
「休職制度を教えてください」
健康保険に、
「傷病手当金を使えるか知りたいです」
年金事務所に、
「障害年金の対象になる可能性を確認したいです」
そうやって一つずつ聞けばいい。
40代になると、
休むことがとても怖くなります。
仕事を失うかもしれない。
収入が減る。
老後も心配。
でも、
無理して働き続けて、身体も仕事も生活も一度に失うことだけは避けたい。
休む期間は、
人生の空白ではありません。
これからも暮らし、働くために生活を守る期間
です。
制度は、その時間を少し支えるためにあります。
病気になったら、
全部を自分の貯金だけで耐えようとしない。
会社。
健康保険。
年金。
医療。
使えるものを確認する。
それも40代からの生活防衛です。
これからを、わたしから。
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この次は、かなり自然に 「40代、傷病手当金が終わったらどうする?――まだ働けないときの収入・障害年金・生活支援をつなぐ」 へ進めます。「最大1年6か月の先に何がある?」まで書くことで、長期療養になった読者を途中で置いていかない流れになります。