40代、傷病手当金が終わったらどうする?――まだ働けないときの収入・障害年金・生活支援をつなぐ
病気やけがで仕事を休み、傷病手当金を受け取っていると、ひとまず生活費の一部は支えられます。
でも、療養が長くなってくると、別の不安が出てきます。
「この傷病手当金、いつまで続くんだろう」
「終わったあとも働けなかったら?」
「そのとき収入がゼロになるの?」
40代で長期療養になると、この不安はかなり大きいと思います。
傷病手当金は、同じ病気やけがについて、支給開始日から通算して1年6か月が支給期間です。途中で復職するなどして受給していない期間がある場合、その期間を除いて通算されます。
つまり、ずっと休んでいる場合には、いつか終わりが来ます。
でも、その日を、
「支援が全部終わる日」
と考える必要はありません。
大切なのは、傷病手当金が終わる直前になって慌てるのではなく、
その先に使える制度や生活の形を、少し前からつないでおくこと。
です。
今回は、
障害年金。
生活困窮者自立支援制度。
仕事への戻り方。
生活費の見直し。
を含めて、「傷病手当金の次」を順番に整理します。
- まず、傷病手当金の終了日を確認する
- 「傷病手当金が終わる=働けるはず」ではない
- 第1の選択肢|障害年金の対象になる可能性を確認する
- 障害年金は「働けない人だけ」の制度ではない
- 傷病手当金が終わる半年くらい前から調べても早すぎない
- 第2の選択肢|少し働けるなら「元の100%」以外も考える
- 「収入が下がるから無理」と思う前に、生活費も一緒に組み直す
- 第3の選択肢|生活そのものが苦しくなる前に「自立相談支援」へ
- 家計が分からなくなっているなら「家計改善支援」
- 第4の選択肢|今の仕事へ戻れないなら「別の仕事へ橋をかける」
- ただし「まだ働けない人」に職業訓練を急がせない
- 第5の選択肢|貯金が減ってきたら「ゼロになるまで待たない」
- 生活保護も「全部使い果たした人だけ」の制度ではない
- 「障害年金が通るまで」はどうする?
- 「制度の空白期間」を作らないために、3か月前から動く
- 40代は「元の人生へ戻る」ことを目標にしなくてもいい
- 今日使える「傷病手当金の次」チェック
- まとめ|傷病手当金の終了は、「崖」ではなく次の橋をかける場所
まず、傷病手当金の終了日を確認する
最初にすることは、
「あと何か月ある?」を知ること。
です。
なんとなく、
「まだしばらく大丈夫」
ではなく、
支給開始日はいつだった?
現在、通算何か月受給した?
あと何か月残っている?
を健康保険へ確認します。
傷病手当金は同一の病気やけがについて通算1年6か月です。
終了日を知る目的は、不安になることではありません。
たとえば、
あと9か月。
なら、
「今月は治療を続ける」
「3か月以内に障害年金を調べる」
「半年以内に家計を見直す」
と予定を立てられます。
一方、
あと1か月。
なら、少し急いで相談先を作る必要があります。
数字は、
次に何をするか決めるための時計
として使います。
「傷病手当金が終わる=働けるはず」ではない
ここはとても大切です。
傷病手当金には支給期間があります。
でも、人の病気には、
「1年6か月になったので治ります」
という期限はありません。
身体の病気。
精神疾患。
後遺症。
慢性疾患。
障害。
回復に時間がかかるものもあります。
だから、
傷病手当金が終わるのにまだ働けない。
という状態はあり得ます。
そのとき、
「制度が終わるんだから無理して働くしかない」
と考えないことです。
必要なのは、
次の制度や暮らし方へ橋をかけること
です。
第1の選択肢|障害年金の対象になる可能性を確認する
病気や障害によって、日常生活や仕事への影響が長く続いている場合、障害年金の対象になる可能性があります。
ただし、
「傷病手当金が切れた人なら誰でももらえる」
制度ではありません。
障害年金には、
初診日。
保険料納付要件。
障害状態。
などの条件があります。
日本年金機構によると、障害基礎年金では、初診日が国民年金加入期間などにあること、障害認定日に1級または2級に該当すること、原則として一定の保険料納付要件を満たすことなどが必要です。
厚生年金加入中に初診日がある場合には、障害厚生年金が関係する可能性があります。こちらにも初診日や納付、障害状態などの要件があります。
難しいですよね。
だから、自分で判定しなくていいのです。
「私は対象になる可能性がありますか?」
を年金事務所へ確認します。
障害年金は「働けない人だけ」の制度ではない
ここも誤解されやすいところです。
障害年金は、
仕事をしている・していない、
だけで機械的に決まるものではありません。
病気や障害が、
日常生活。
仕事。
社会生活。
にどの程度影響しているかなどを含めて判断されます。
だから、
「少し働けているから絶対無理」
とも限りません。
逆に、
「仕事を辞めたから必ずもらえる」
わけでもありません。
病名だけでも決まりません。
だから、検索記事だけを見て自分で結論を出さず、
日本年金機構などの公的窓口で確認します。
傷病手当金が終わる半年くらい前から調べても早すぎない
障害年金は、相談した翌日に振り込まれる制度ではありません。
初診日の確認。
年金加入記録。
診断書。
病歴・就労状況等申立書など。
人によっては準備に時間がかかります。
だから、
傷病手当金があと半年あるから、
「まだ先」
ではなく、
今から制度だけ確認する
くらいでいいと思います。
申請を決めなくてもいい。
まず、
自分の初診日はいつ?
どの年金制度に加入していた?
障害認定日は?
を確認します。
調べることと、申請を決めることは別です。
第2の選択肢|少し働けるなら「元の100%」以外も考える
傷病手当金が終わるころ、
完全には治っていない。
でも、
少しなら働けそう。
ということもあります。
このとき、
休職中=0。
元の仕事へ復帰=100。
の二択にしなくていい場合があります。
たとえば、
短時間勤務。
週3日。
業務量を減らす。
責任の軽い仕事。
在宅。
別職種。
障害者雇用。
などです。
大切なのは、
以前の自分と同じ働き方へ戻ることではなく、今の身体や心で続けられる働き方を探すこと。
です。
40代で長期療養したあと、
「以前は週5日8時間だったから、それに戻れないと復職失敗」
と考えると、とても苦しくなります。
週3日からでもいい。
短時間からでもいい。
回復しながら働く道もあります。
「収入が下がるから無理」と思う前に、生活費も一緒に組み直す
ここで問題になるのが、
「でも短時間勤務にしたら給料が減る」
です。
その通りです。
だから働き方だけでなく、
生活費も同時に組み直します。
家賃。
車。
保険。
通信費。
固定費。
生活に必要な金額を一度出します。
たとえば、
以前の手取り20万円。
今後は短時間勤務で14万円。
でも最低生活費を16万円から14万円へ下げられた。
なら、生活は続けられる可能性があります。
もちろん、
「もっと節約すればいい」
というだけの話ではありません。
住まい。
制度。
医療。
福祉。
働き方。
全部を組み合わせます。
収入を元に戻すだけが生活再建ではありません。
支出と働き方の両方を、今の自分に合わせます。
第3の選択肢|生活そのものが苦しくなる前に「自立相談支援」へ
傷病手当金が終わりそう。
障害年金が使えるか分からない。
まだ仕事にも戻れない。
貯金も減ってきた。
そんな状態なら、
一人で制度を検索し続けるより、
生活全体の相談につながる方法があります。
厚生労働省の生活困窮者自立支援制度では、仕事や生活などさまざまな困難によって生活に困窮している人を対象に、自立相談支援、住まい、家計、就労などを組み合わせて支援します。
ここは、
「生活保護になる直前の人しか行けない」
場所ではありません。
働きたくても働けない。
家賃が心配。
生活費が減っている。
社会に出るのが不安。
そうした段階から相談できます。
普通の言葉にすると、
「傷病手当金の後を、自分一人では設計できないときの生活相談」
として使うこともできます。
家計が分からなくなっているなら「家計改善支援」
長期療養すると、
医療費。
収入減少。
家賃。
カード。
保険。
税金。
いろいろ重なります。
気づいたら、
「自分が月いくら使っているのか分からない」
となることがあります。
厚生労働省の家計改善支援は、相談者と一緒に家計状況を明らかにし、生活再生へ向けて支援する仕組みです。
つまり、
家計簿を完成させてから行く場所ではありません。
家計を整理できなくなっているから相談する場所
です。
傷病手当金の終了前に、
「これがなくなったら毎月いくら不足する?」
を一緒に出してもらう。
それだけでもかなり違います。
第4の選択肢|今の仕事へ戻れないなら「別の仕事へ橋をかける」
病気をきっかけに、
以前の仕事そのものが難しくなることもあります。
重いものを持てない。
長時間立てない。
対人負担が大きすぎる。
夜勤ができない。
フルタイムが難しい。
その場合、
「元職復帰できない=働けない」
ではありません。
別の仕事へ移ることもできます。
ハローワークには求人相談がありますし、必要に応じて職業訓練という選択肢もあります。
雇用保険の条件などによっては教育訓練給付の対象になる場合もあり、一般教育訓練給付では一定の要件を満たす人について、指定講座の受講費用の20%、上限10万円が支給される制度があります。
また、ハローワークでは現在も求職者支援訓練や公共職業訓練が実施されています。
だから、
「身体を壊したから、この先は低収入しかない」
と決めなくてもいい。
学び直して、
身体に負担の少ない仕事へ移る。
それも一つの再設計です。
ただし「まだ働けない人」に職業訓練を急がせない
ここは大切です。
長期療養中に、
「傷病手当金が終わるから資格を取らなくちゃ!」
と焦ることがあります。
でも、
まだ朝起きられない。
通院だけで疲れる。
1日数時間も集中できない。
という状態なら、
まず治療です。
職業訓練は、
働く準備ができてきた人が次へ進むための道
として考えます。
今必要なのが、
休養。
生活支援。
障害年金。
福祉。
であれば、そちらを先に使います。
資産形成の記事でも同じでしたが、
未来のために、今の自分を壊さない。
ここは仕事でも同じです。
第5の選択肢|貯金が減ってきたら「ゼロになるまで待たない」
傷病手当金が終わって、
貯金で生活する。
最初は、
100万円。
80万円。
50万円。
となります。
「まだ50万円ある」
と思っているうちに相談したほうが、使える選択肢は増えます。
家賃。
住まい。
仕事。
家計。
医療。
について、生活困窮者自立支援制度では本人の状況に合わせた複数の支援を提供しています。
貯金5万円になってからではなく、
減り続けることが分かった時点
で相談していい。
これは、これまでの記事でも繰り返してきた大事な考え方です。
生活保護も「全部使い果たした人だけ」の制度ではない
そして、
傷病手当金が終わった。
障害年金にもまだつながらない。
働けない。
貯金も少ない。
他の制度を使っても生活できない。
という場合。
生活保護も、最後の安全網として相談する制度です。
目的は、
生活保護を絶対に避けることではありません。
治療を続けながら最低限の生活を守ること。
です。
食費を削る。
薬をやめる。
住まいを失う。
高金利の借金でつなぐ。
そこまでして「生活保護だけは使わない」とする必要はありません。
必要な状態なら、福祉事務所へ相談します。
「障害年金が通るまで」はどうする?
これはかなり現実的な問題です。
障害年金を申請した。
でも結果が出るまで生活費が必要。
だから、
申請中の生活も別に考えます。
貯金。
可能な範囲の収入。
生活困窮者自立支援。
住居支援。
家計改善。
必要なら生活保護。
を組み合わせます。
つまり、
障害年金の結果が出るまで、自力で耐えなければならないわけではありません。
公的制度は一列に並んでいて、
Aが終わったらB、
Bが終わったらC、
というより、
状況に応じて重ねたり、つないだりしながら使います。
「制度の空白期間」を作らないために、3か月前から動く
私は、傷病手当金の残りが3か月程度になったら、少なくとも一度は次の確認をしておくといいと思います。
障害年金の対象になりそう?
今後働けそう?
働けるなら何時間?
毎月いくら必要?
貯金は何か月分?
生活相談先は?
全部決めなくていい。
ただ、
次の出口を一つ以上作っておく。
これが大切です。
「傷病手当金が終わる日」に初めて考えると、その日に突然収入が途切れたように感じます。
3か月前から準備すると、
傷病手当金から次の生活へ、
橋を渡る感覚に変わります。
40代は「元の人生へ戻る」ことを目標にしなくてもいい
長期療養すると、
以前の自分と比べます。
以前はフルタイム。
以前は残業もできた。
以前は年収○万円。
以前は家事も全部できた。
でも、
病気のあとに必要なのは、
過去の自分を完全再現すること
ではありません。
今は週3日。
障害年金がある。
支援を使う。
家賃を下げる。
それでも生活できる。
なら、
それは「失敗した生活」ではなく、
今の自分に合わせて再設計した生活
です。
社会的に弱い立場になったとき、
以前と同じだけ稼げないことがあります。
以前と同じだけ働けないこともあります。
だったら、
公的制度。
支援。
現金。
仕事。
を組み合わせる。
「収入一本」で人生を支えなくてもいいのです。
今日使える「傷病手当金の次」チェック
スマートフォンに、これだけ作ってみてください。【傷病手当金の次チェック】 ■ 傷病手当金 支給開始: 年 月 残り期間: 約 か月/分からない ■ 現在の状態 フルタイム勤務: できそう・難しい・分からない 短時間なら: できそう・難しい・分からない ■ 障害年金 初診日: 分かる・不明 年金事務所へ相談: 済・まだ ■ お金 現在の貯金: 約 万円 最低生活費: 月 万円 あと何か月暮らせそう: 約 か月 ■ 相談 自立相談支援: 知っている・まだ調べていない 家計改善支援: 必要そう・今は不要・分からない ■ 次にすること □ 健康保険へ傷病手当金の残期間を聞く □ 年金事務所へ相談する □ 主治医に今後働ける範囲を相談する □ 会社へ復職・短時間勤務を相談する □ 自立相談支援につながる □ 家計を整理する 次にする一つ:
全部埋めなくていいです。
今日決めるのは、
「次にする一つ」
だけ。
それで十分です。
まとめ|傷病手当金の終了は、「崖」ではなく次の橋をかける場所
傷病手当金には終わりがあります。
同一の病気やけがについて、支給期間は通算1年6か月です。
でも、
そこで病気まで終わるとは限りません。
だから、
まだ働けないなら、
障害年金を確認する。
少し働けるなら、
短時間・別職種・配慮のある働き方を考える。
生活費が足りないなら、
家計を組み直す。
生活そのものが危なくなっているなら、
生活困窮者自立支援へつながる。
必要なら、
生活保護も含めて相談する。
一つの制度が終わったから、
そこから先は全部自分で何とかする
ではありません。
社会保障は、一つの制度だけで人生全部を支えるものではなく、状況に合わせていくつもの制度をつなぐものでもあります。
そして40代からの生活再建も同じです。
病気になる前の働き方へ戻れなくてもいい。
以前の収入に届かなくてもいい。
制度を使ってもいい。
生活を小さくしてもいい。
大切なのは、
治療を続けながら、暮らしそのものを止めないこと。
傷病手当金が終わる日を、
人生のタイムリミットにしない。
その前に、
次の一本へ。
また次の一本へ。
小さな橋をかけていく。
それでいいのだと思います。
これからを、わたしから。