ひとりで制度を探せないとき、どこに最初のSOSを出せばいい?――「何に困っているか分からない」から始めていい

仕事がつらい。

お金もない。

体調も悪い。

家のこともうまくいかない。

この先どこに住むのかも不安。

でも、

「結局、私はどこに相談すればいいの?」

となることがあります。

役所?

ハローワーク?

病院?

社会福祉協議会?

障害福祉?

年金事務所?

名前だけは聞いたことがあっても、自分がどこへ行けばいいのか分からない。

インターネットで検索しても、

「○○に該当する方は△△窓口へ」

と書いてある。

でも、

その「○○に該当するか」が分からない。

そんなこともあります。

前の記事では、

「助けを求めるにも力がいる」

という話を書きました。

制度を調べる。

電話をする。

自分の事情を説明する。

書類を書く。

それらは全部、意外とエネルギーが必要です。

そして皮肉なことに、

一番支援を必要としているときほど、その力が残っていないことがあります。

だから今回は、

「全部自分で調べなくてもいい」

ところから始めます。

制度名を知らなくてもいい。

自分が何に該当するのか分からなくてもいい。

うまく説明できなくてもいい。

まず、

最初のSOSを一か所へ出す。

そこから考えます。

最初に伝えたいこと。「正しい窓口」を当てなくてもいい

相談しようとすると、

「間違ったところへ電話したらどうしよう」

と思うことがあります。

でも、最初から100点の相談先を当てる必要はありません。

厚生労働省が進めている包括的な相談支援では、複数の問題が絡んでいる人について、一つの分野だけで完結させず、必要な支援機関へつなぐ考え方が取られています。

たとえば、

仕事だけならハローワーク。

障害福祉なら自治体の障害福祉窓口。

高齢者なら地域包括支援センター。

というように専門窓口があります。

でも現実には、

仕事を失った。

その結果、家賃が払えない。

体調も崩した。

借金もある。

というように、問題はきれいに分かれていません。

だから、

「どこへ行けばいいのか分からないこと」自体を相談していい

のです。

仕事もお金も住まいも分からないなら「自立相談支援機関」が入口になることがある

まず覚えておきたいのが、

生活困窮者自立支援制度の自立相談支援機関

です。

名前がものすごく堅いですよね。

でも、普通の言葉にすると、

「生活のどこから手をつければいいか分からないときの総合相談」

に近い存在です。

厚生労働省によると、自立相談支援では、生活に困りごとや不安を抱えている人の相談を支援員が受け、必要な支援を一緒に考え、具体的な支援プランを作ります。

対象となる問題は、

仕事。

家計。

住まい。

社会とのつながり。

など、生活全般です。

だから、

「私は仕事の相談なのか、お金の相談なのか分からない」

という人に向いています。

最初の言葉も、

「どこに相談すればいいのか分からなくて電話しました」

で構いません。

障害や病気が生活に影響しているなら、市区町村の障害福祉・相談支援という入口もある

障害がある。

あるいは、

病気や特性によって仕事や生活がかなり難しくなっている。

そんな場合には、

市区町村の障害福祉担当窓口や、地域の相談支援事業所などが入口になることがあります。

厚生労働省の障害者相談支援では、福祉サービスの利用援助、情報提供、相談、専門機関の紹介などが行われています。

ここで大事なのは、

「私はどの福祉サービスを使えばいいですか?」まで決めていかなくてもいい

ということです。

むしろ、

「生活がうまく回らない」

「仕事と体調の両方で困っている」

「一人では制度を調べられない」

から相談していい。

必要に応じて、そこから利用できる支援を一緒に整理してもらいます。

心や身体が限界なら、最初は「制度」より医療でもいい

ここも重要です。

支援を探していると、

「まず役所へ行かなければ」

と思うことがあります。

でも、

眠れない。

食べられない。

仕事へ行けない。

何も考えられない。

身体を起こせない。

不安が強すぎて外へ出られない。

そんな状態なら、

まず医療につながる

という順番でも構いません。

かかりつけ医。

心療内科。

精神科。

地域の医療機関。

病院によっては、医療ソーシャルワーカーや相談員がいる場合があります。

治療だけでなく、

生活。

仕事。

医療費。

退院後の生活。

福祉制度。

などについて相談できることがあります。

つまり、

病院を「制度へつながる入口」にしてもいい

のです。

「仕事を辞めたい」が中心ならハローワークへ

仕事の問題が中心なら、

ハローワークも重要な入口です。

ただし、

「今すぐ転職しなければ」

と思わなくて構いません。

40代・50代を含む中高年層については、ハローワークに中高年層(ミドルシニア)向けの専門窓口があります。

仕事探しだけではなく、

キャリア相談。

応募書類。

面接。

就職後の定着。

などの支援があります。

また、

すぐ一般就労することが難しい人については、生活困窮者自立支援制度の就労準備支援などにつながる場合もあります。

つまり、

「すぐフルタイムで働けないから、相談しても意味がない」ではありません。

働く前の準備が必要なことも相談できます。

家賃が危ないなら「住まいの相談」を急いでいい

家賃を払えない。

来月が危ない。

退去を求められそう。

こうした場合は、他の問題を全部整理してからではなく、

住まいの相談を先にする

意味があります。

住まいを失うと、

仕事探し。

通院。

行政手続き。

生活全般がさらに難しくなるからです。

生活困窮者自立支援制度には、一定の要件を満たす人への住居確保給付金があります。

だから、

「まだ退去していないから相談するのは早い」

ではありません。

むしろ、

危なくなり始めた段階で相談する

ことが大切です。

家計がぐちゃぐちゃなら、そのまま持っていっていい

カード。

リボ。

公共料金。

税金。

家賃。

医療費。

何にいくら払っているか分からない。

請求書を見るのも怖い。

そんな状態になると、

「まず自分で整理しなくては」

と思います。

でも、それができないから困っているのです。

生活困窮者自立支援制度の家計改善支援では、相談者と一緒に家計状況を「見える化」し、問題を整理しながら生活の立て直しを支援します。

だから、

家計簿を作ってからでなくていい。

請求書がバラバラでもいい。

分からないものは、

「分かりません」

と言っていいのです。

電話ができない人はどうする?

「窓口は分かった。でも電話が無理」

という人もいます。

ここを置き去りにしたくありません。

電話が苦手なら、

自治体のウェブサイトで、

メール。

問い合わせフォーム。

窓口での相談。

オンライン相談。

などがないか確認します。

地域によって対応は異なります。

そして誰か支援者がすでにいるなら、

その人に、

「自分では電話できないので、一緒に連絡してほしい」

と頼む方法もあります。

訪問看護。

相談支援専門員。

医療ソーシャルワーカー。

ケアマネジャー。

支援員。

こうした人がいるなら、制度の入口を一緒に探してもらえる場合があります。

電話ができないこと自体も、

相談すべき困りごとの一つです。

うまく話せないなら「相談メモ」を見せる

相談するとき、

緊張して何も言えなくなる。

話が飛ぶ。

聞かれたことに答えられなくなる。

そんな人もいます。

だから、私はスマートフォンに短い相談メモを作っておくことをおすすめします。

書くのは5つだけです。

  • 今一番困っていること
  • 仕事をしているか
  • 住む場所はあるか
  • 収入はあるか
  • 病気や障害など、生活に影響していることがあるか

たとえば、

「仕事を続けるのが難しいです。収入が減るのが怖くて辞められません。病院には通っています。家族を頼ることができません。どこへ相談すればいいか分からないです」

これだけでも十分です。

窓口で画面を見せてもいい。

読み上げてもいい。

相談を上手にする必要はありません。

「一番困っていること」を一つ決められなくてもいい

よく、

「一番困っていることは何ですか?」

と聞かれます。

でも、

全部です。

となることもあります。

仕事があるから体調が悪い。

体調が悪いから働けない。

働けないからお金がない。

お金がないから家が不安。

家が不安だからもっと体調が悪い。

ぐるぐるつながっています。

そんなときは、

「全部つながっていて、自分でも優先順位が分かりません」

と伝えていいのです。

自立相談支援などは、そうした問題を整理することも役割の一つです。

相談者が最初から完璧な課題分析をしておく必要はありません。

「もっと大変な人がいるから」は、相談しない理由にしなくていい

これは、多くの人が思うことかもしれません。

生活保護が必要なほどではない。

ホームレスでもない。

今は仕事もある。

家もある。

だったら、

「私はまだ相談するほどではない」

と思ってしまう。

でも、支援は、

すべてを失ってから使うものだけではありません。

生活困窮者自立支援制度そのものが、生活保護に至る前の段階も含め、さまざまな困難を抱える人の自立を支える仕組みとして整備されています。

だから、

「このままだと危ないかもしれない」

という段階で相談してもいいのです。

むしろ、問題が深刻になる前につながれれば、使える選択肢も残りやすくなります。

「相談したけど合わなかった」なら、そこで終わりではない

これは現実として書いておきたいです。

勇気を出して相談した。

でも、

うまく伝わらなかった。

冷たく感じた。

別の窓口を案内された。

対象外と言われた。

そんなこともあります。

その一回で、

「私は支援してもらえない人なんだ」

と決めないでほしいと思います。

制度には対象条件があります。

担当者との相性もあります。

一つの窓口では扱えない問題もあります。

そんなときは、

「では私は次にどこへ相談すればいいですか?」

と聞いてみます。

これ、とても大切な質問です。

「対象ではありません」で終わらず、

次の場所の名前を一つもらう。

それだけで、道が途切れにくくなります。

最初のSOSは「助けてください」でなくてもいい

前の記事でも少し書きました。

私は、

「助けてください」

と言うこと自体が難しい人もいると思っています。

だったら、もっと小さな言葉でいい。

「相談先が分かりません」

「生活が少し厳しくなっています」

「仕事を続けられるか分かりません」

「書類を一人で理解できません」

「何に困っているのか整理できません」

これでいい。

むしろ、

「分からない」こそ、立派な相談内容です。

今日、一歩だけ進むなら

制度を調べ尽くさなくてもいい。

申請もしなくていい。

まずスマートフォンに、

「SOS」

というメモを作ります。

その下に、

仕事
お金
住まい
身体・心
家族
その他

と書きます。

そして、

困っているところに○をつける。

次に、

「最初に相談できそうな場所」

を一つだけ書きます。

仕事もお金も全部なら、自立相談支援機関。

障害や福祉サービスなら、市区町村の障害福祉窓口や相談支援。

医療が一番つらいなら、かかりつけ医や医療相談。

仕事ならハローワーク。

今日は電話しなくてもいい。

名前を一つメモするだけ。

それで一歩です。

まとめ|SOSは「限界になった人だけ」が出すものではない

一人で制度を探せない。

何に困っているのかも分からない。

電話も怖い。

人に説明するのもしんどい。

そんな状態になったとき、

「こんな自分では支援も使えない」

と思わないでほしいと思います。

むしろ、

そういう状態だから、相談していいのです。

すべての制度を知っている必要はありません。

正しい窓口を一発で当てる必要もありません。

完璧な説明もいりません。

「どこに相談すればいいか分かりません」

そこから始めていい。

そして、最初の窓口ですべて解決しなくてもいい。

一つの場所から、

次の場所へ。

必要なら別の人へ。

少しずつつないでもらう。

家族が頼れなくても、

制度。

医療。

福祉。

就労支援。

行政。

地域。

いくつもの小さな支えを組み合わせることができます。

一人で制度を探せないなら、

制度を一緒に探す人を探す。

それも立派な方法です。

助けを求めることは、

自分の弱さを証明することではありません。

これ以上、自分一人だけに負担を集中させないための行動

です。

人生の途中で社会的に弱い立場になってしまうことはあります。

でも、そのときに必要なのは、

強い人へ戻ることではありません。

一人で全部やらなくても暮らせる形へ、生活を作り直すこと。

その最初の一歩が、

たった一つのSOSかもしれません。

今日は相談しなくてもいい。

相談先の名前を一つメモするだけでもいい。

そこから。

これからを、わたしから。