障害年金の診断書、医師に何を伝えればいい?――「大丈夫です」と言ってしまう人のための生活メモ
診察室で、
「最近どうですか?」
と聞かれる。
本当は、
仕事に行くだけで精いっぱい。
帰宅すると何もできない。
休日は寝て終わる。
食事も適当。
薬も忘れる。
人と話すだけで疲れる。
お金の管理もうまくできない。
でも、なぜか口から出てくるのは、
「まあ、大丈夫です」
だったりします。
診察時間は短い。
先生も忙しそう。
どこから説明すればいいのか分からない。
話しているうちに頭が真っ白になる。
「こんなことまで言うほどではないかも」
と思ってしまう。
だから、
本当の生活より少し元気な自分を見せてしまう。
そんな人は少なくないと思います。
でも、障害年金の診断書では、
病院でどんな病名がついているかだけではなく、病気や障害によって日常生活や仕事がどのくらい制限されているか
がとても重要です。
日本年金機構は、障害年金について、障害によって日常生活に継続的な制限があり支援が必要な場合、その程度や労働能力への影響などに基づいて障害等級を決めると説明しています。そのため診断書についても、できるだけ詳細で具体的な記載が重要としています。
だから今回は、
「診断書を書いてもらうためにどう話せばいい?」
ではなく、
「自分の実際の生活を、盛らず・隠さず医師へ伝えるにはどうすればいい?」
という視点から考えます。
- 診断書は「病名証明書」ではない
- 「できる・できない」の2択では伝わりにくい
- 「働いています」だけでも伝わらない
- 「大丈夫です」は、診察室で使わなくてもいい
- 医師へ伝えたいのは「一番悪かった日」ではなく「普段の状態」
- 精神の障害なら、生活の7つの場面を意識すると整理しやすい
- 「一人暮らしできている=一人で全部できている」ではない
- 支援を受けていることは、隠さない
- 診察前に「生活メモ」を作っておく
- そのまま使える「障害年金・生活メモ」
- 「具体例」を3つだけ持っていくと伝わりやすい
- 家族や支援者に聞いてみると、自分では気づかないことがある
- 医師と生活の認識が違ったら、訂正をお願いしてもいい
- 診断書を医師に渡す前に、年金事務所へ確認する
- 「通る診断書」を作ろうとしない
- 「普通に見える」人ほど、生活の裏側を書く
- 今日するなら、「困りごと3つ」だけ書く
- まとめ|診断書のために「具合の悪い人を演じる」必要はない
診断書は「病名証明書」ではない
障害年金について調べ始めると、
「この病名なら何級?」
と検索したくなります。
でも障害年金は、病名だけで一律に決まる制度ではありません。
特に精神の障害については、日本年金機構の診断書に、
日常生活能力。
社会生活。
就労。
治療経過。
などを書く欄があります。また、精神障害・知的障害の等級判定では、「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」だけで機械的に決めるのではなく、障害の特性や生活上の支障なども考慮するガイドラインが設けられています。
つまり、
同じ診断名でも、
一人で生活できている人。
日常的に支援が必要な人。
働けているけれど強い配慮が必要な人。
長期間休職している人。
では状態が違います。
だから医師に伝えるべきなのは、
「病気です」だけではなく、「その病気によって毎日の暮らしがどうなっているか」
です。
「できる・できない」の2択では伝わりにくい
たとえば、
「料理できますか?」
と聞かれたとします。
あなたは週に1回、体調のいい日に簡単なものを作れる。
だから、
「できます」
と答える。
でも実際には、
普段はコンビニ。
冷凍食品。
食べない日もある。
洗い物が何日もたまる。
誰かに声をかけてもらわないと食事を忘れる。
なら、
単純な「できます」だけでは生活の実態が伝わりません。
障害年金の診断書では、
援助がなくても安定してできるのか
という視点が大切になります。
だから、
「できます。ただし週に1回くらいで、普段は惣菜です」
「体調がいい日にしかできません」
「途中で疲れて片づけられません」
まで伝える。
これだけで、ずいぶん情報量が変わります。
「働いています」だけでも伝わらない
仕事についても同じです。
「仕事はしていますか?」
「はい」
これだけだと、
普通にフルタイムで問題なく働けているように聞こえることがあります。
でも実際には、
週3日。
短時間勤務。
障害者雇用。
上司の配慮あり。
苦手な業務を外してもらっている。
欠勤が多い。
帰宅後は何もできない。
休日は回復だけで終わる。
同僚に常にフォローしてもらっている。
かもしれません。
精神障害や知的障害の等級判定に関するガイドラインでも、就労状況については、単に就労している事実だけではなく、仕事内容、援助や配慮、職場での意思疎通、安定して働けているかなどが考慮されます。
だから、
「働いている=問題なし」ではありません。
どんな条件なら働けているのか。
仕事以外の生活にどんな影響が出ているのか。
そこまで含めて伝えます。
「大丈夫です」は、診察室で使わなくてもいい
医師から、
「どうですか?」
と聞かれると、
反射的に、
「大丈夫です」
と言ってしまう。
これ、とても短くて便利な言葉です。
でも、
何が大丈夫?
なのかは分かりません。
だから、障害年金を考えている期間だけでも、
「大丈夫です」を具体的な言葉へ置き換える
練習をしてみてもいいと思います。
たとえば、
「仕事には行けています。ただ帰ると何もできません」
「先週より眠れています。でも外出は通院だけです」
「食事は取れています。自分では作れず買っています」
「欠勤はしていません。ただ毎朝かなり無理をしています」
このほうが、生活の状態が伝わります。
医師へ伝えたいのは「一番悪かった日」ではなく「普段の状態」
障害年金を意識すると、
「ひどく言わないといけないのでは?」
と思う人もいるかもしれません。
でも、誇張する必要はありません。
反対に、よく見せる必要もありません。
大切なのは、
普段どのくらいできているか。
です。
たとえば月に1日だけ掃除できたから、
「掃除できます」
ではない。
逆に、月に1日だけ寝込んだから、
「毎日寝たきりです」
でもない。
典型的な1週間。
平均的な1か月。
を伝える。
「週に4日は難しい」
「月に3回欠勤する」
「ほとんど惣菜」
のように具体化すると伝わりやすくなります。
精神の障害なら、生活の7つの場面を意識すると整理しやすい
精神の障害用診断書では、日常生活能力に関する項目が設けられています。日本年金機構は診断書や記載要領を公開しており、等級判定でも日常生活や就労の状況が重要な情報として扱われます。
自分で整理するときは、難しい制度用語ではなく、次のように生活場面へ置き換えると分かりやすいです。
- 食事は自分で安定して用意できる?
- 入浴・着替え・掃除など身の回りは?
- お金の管理や買い物は?
- 通院や薬の管理は?
- 人と話したり関係を保ったりできる?
- 危険を避けたり、困ったとき対応できる?
- 役所・仕事・社会生活に必要なことを一人でできる?
「できる・できない」だけではなく、
誰かに言われればできる
一緒ならできる
時間をかければできる
体調のいい日だけ
も大切な情報です。
「一人暮らしできている=一人で全部できている」ではない
ここも誤解しやすいところです。
一人暮らしをしている。
だから、
「日常生活は自立しています」
と思ってしまう。
でも実際には、
部屋が片づかない。
食事が偏る。
支払いを忘れる。
薬を飲み忘れる。
家族や支援者から連絡をもらっている。
宅配に頼っている。
訪問支援を利用している。
ということがあります。
形式上の一人暮らしと、
援助なしで安定した生活を送れていること
は同じではありません。
だから、
「一人暮らしです。でも○○は支援を受けています」
と伝えていいのです。
支援を受けていることは、隠さない
訪問看護。
相談支援。
就労支援。
家族からの援助。
職場の配慮。
ヘルパー。
こうした支援があると、
「支援のおかげでできているんだから、できる扱いになるのかな」
と思うかもしれません。
でも、
支援があるから生活が成立している
ということ自体が、大切な情報です。
「一人で通院できています」
ではなく、
「訪問看護師に確認してもらっています」
「付き添いがあると行けます」
「職場で業務を調整してもらっています」
というように、
何の援助があるかを具体的にします。
診察前に「生活メモ」を作っておく
診察室に入ると忘れる人は、話すことを事前に書いておきます。
文章にしなくても大丈夫です。
スマートフォンで十分です。
そのまま使える「障害年金・生活メモ」
以下は、そのままコピーして使えます。【障害年金・診察用 生活メモ】 ※緊張すると「大丈夫です」と答えてしまいます。 実際の生活について、このメモを見ながら相談させてください。 ■ 食事 □ 自分でほぼ毎日準備できる □ 簡単なものだけ □ 惣菜・コンビニ・宅配が多い □ 誰かに言われないと食べないことがある □ 食事を抜くことがある 具体的には: ■ 入浴・着替え・身だしなみ 入浴:週 回くらい 着替え: 洗濯: 掃除: 困っていること: ■ お金・買い物 □ 自分で管理できる □ 支払いを忘れることがある □ 衝動買いがある □ 家計管理を誰かに手伝ってもらっている □ 金額や計算が難しい 具体的には: ■ 通院・薬 □ 一人で通院できる □ 付き添い・声かけが必要 □ 通院を忘れることがある □ 薬を飲み忘れる □ 薬を自分だけで管理するのが難しい 具体的には: ■ 人とのやり取り □ 普通にできる □ 家族・慣れた人ならできる □ 知らない人との会話が難しい □ 電話が難しい □ 緊張すると言葉が出なくなる □ 人と会ったあと強く疲れる 具体的には: ■ 外出・社会生活 買い物: 役所: 銀行: 交通機関: 一人で初めての場所へ行くこと: 困っていること: ■ 仕事 現在: □ フルタイム □ 短時間 □ 休職中 □ 無職 □ その他 週 日 1日 時間 職場で受けている配慮: 苦手で外してもらっている仕事: 欠勤・遅刻・早退: 月 回くらい 仕事後の状態: 休日の過ごし方: ■ 支援 □ 家族 □ 訪問看護 □ 相談支援 □ ヘルパー □ 就労支援 □ 職場の支援 □ その他 どんなことを手伝ってもらっている: ■ 最近1か月で困った具体例 1: 2: 3: ■ 自分では「できている」と思っていたけれど 実際は支援や無理で成り立っていること: ■ 医師に今日伝えたいこと
全部埋める必要はありません。
一番困っているところだけでも構いません。
「具体例」を3つだけ持っていくと伝わりやすい
診断書のためだけでなく、普段の診察でも、
「困っています」
だけだと医師は程度を把握しづらいことがあります。
だから、
最近起こった具体例を3つ。
たとえば、
「電気代の支払いを忘れて督促が来た」
「休日は15時間近く寝ていて買い物へ行けなかった」
「仕事で指示が理解できず同僚に最後まで付き添ってもらった」
のようにします。
事実+頻度+援助
で書くと分かりやすいです。
家族や支援者に聞いてみると、自分では気づかないことがある
長く病気や障害と暮らしていると、
自分にとってはそれが普通になります。
だから、
「これくらいみんなやっている」
と思ってしまう。
でも支援者から見ると、
かなり援助を受けていることがあります。
もし可能なら、
訪問看護師。
相談支援専門員。
家族。
一緒に暮らしている人。
などへ、
「私は生活のどこを助けてもらっていますか?」
と聞いてみてもいいでしょう。
自分の主観だけでは見えなかった部分が分かります。
医師と生活の認識が違ったら、訂正をお願いしてもいい
診断書を書いてもらったあと、
自分が話していた状態と大きく違うように感じることがあります。
ただし、診断書は医師の医学的判断によって作成するものなので、
「こう書いてください」と患者側が内容を指定するものではありません。
ここは大切です。
一方で、
「週5日働いているとありますが、実際は週3日です」
「一人で通院とありますが毎回付き添いがあります」
のような事実関係が違うなら、
医師や医療機関へ確認して構いません。
目的は、
等級を上げることではありません。
事実を正しく伝えること
です。
診断書を医師に渡す前に、年金事務所へ確認する
前の記事でも触れましたが、ここはもう一度。
障害年金の診断書には、障害の種類による様式や、記載が必要な時期があります。
日本年金機構は、障害年金の診断書を作成する前に、年金事務所等で必要な診断書や記載対象期間を確認することを案内しています。
だから、
ネットから診断書を印刷。
↓
すぐ病院へ持参。
ではなく、
先に年金事務所へ相談
↓
自分に必要な様式・時期を確認
↓
医師へ依頼。
という順番が安心です。
「通る診断書」を作ろうとしない
障害年金について検索すると、
「こう書けば通る」
「この表現なら2級」
のような情報を見かけることがあります。
でも、そこへ寄せることはおすすめしません。
日本年金機構も、診断書の内容について、障害等級を適切に判断できるよう詳細かつ具体的に記載することを医師へ求めています。
大切なのは、
軽く見せない。
重く見せない。
そのまま見せる。
です。
制度に自分を合わせるのではなく、
自分の生活を制度側に正確に伝えます。
「普通に見える」人ほど、生活の裏側を書く
外では笑える。
身なりも整えられる。
仕事にも行っている。
だから、
「この人は大丈夫そう」
と思われることがあります。
でも、
家に帰ったら倒れ込む。
休日はずっと寝る。
支援がなければ予定管理ができない。
毎日かなりの緊張で働いている。
ということもあります。
診断書だけでなく普段の診察でも、
外から見える姿の裏に何があるか
を伝えることが大切です。
「仕事へ行けています。でもそれだけで一日の力を使い切ります」
この一文だけでも、意味がかなり違います。
今日するなら、「困りごと3つ」だけ書く
長い生活メモを見るだけで疲れた人は、
全部やらなくていいです。
今日は、【次の診察で伝えること】 1.最近一番困ったこと: 2.誰かに助けてもらっていること: 3.仕事や生活のあと、どのくらい疲れる:
これだけ。
診察の日にスマートフォンを見ながら読んでもいい。
画面を医師へ見せてもいい。
「うまく話せないので読んでもらえますか」
でもいい。
まとめ|診断書のために「具合の悪い人を演じる」必要はない
障害年金の診断書。
聞くだけで緊張します。
ちゃんと書いてもらえるかな。
自分の苦しさは伝わっているかな。
働いているからダメなのかな。
いろいろ考えます。
でも、最初にすることは、
診断書の攻略法を覚えることではありません。
普段の生活を、医師に知ってもらうこと。
です。
食事。
入浴。
掃除。
お金。
薬。
通院。
人とのやり取り。
仕事。
支援。
一つずつ、
「できます」
だけで終わらせない。
どのくらいできる?
どのくらい援助が必要?
何日できない?
終わったあとどうなる?
まで伝える。
日本年金機構も、障害年金では日常生活の制限や支援の必要性、労働能力への影響などを踏まえ、障害の程度を判断しています。
だから、
外からは普通に見えても。
働いていても。
一人暮らしでも。
支援を使いながら何とか生活しているなら、
その「何とか」の部分を隠さない。
診察室で、
つい「大丈夫です」と言ってしまうなら、
メモを使っていい。
話せなければ見せる。
思い出せなければ後から追記する。
一度の診察ですべて伝えなくても構いません。
障害年金のためだけではなく、
主治医が今の生活を正しく知ることは、
これからの治療や働き方を考えるうえでも役立ちます。
「大丈夫です」の四文字の奥にある生活を、
少しずつ言葉にしていく。
それが、次の一歩です。
これからを、わたしから。