障害年金の病歴・就労状況等申立書、何を書けばいい?――10年・20年の病歴を「人生作文」にしない書き方

障害年金の申請で、

初診日を確認した。

診断書についても医師に相談した。

そして次に出てくるのが、

「病歴・就労状況等申立書」

です。

ここで、また手が止まる人がいます。

「病歴って、どこから書けばいいの?」

「20年前からなんて覚えていない」

「仕事も何回も変わっている」

「病院もいくつも転院している」

「文章を書くのが苦手」

そう思うのは自然です。

でも、この書類は、

自分の人生を上手に作文するためのものではありません。

日本年金機構の様式では、障害年金を請求する病気やけがについて、発病したときから現在までの経過を、年月順に期間をあけずに記入するよう案内されています。欄が足りない場合には続紙も用意されています。

つまり求められているのは、

「感動的な文章」

ではなく、

「いつ・どこで治療し、そのころ生活や仕事はどうだったのか」

という流れです。

今回は、この書類を怖がらず作るために、できるだけ普通の言葉で整理してみます。

そもそも、病歴・就労状況等申立書は何のため?

診断書は、医師から見た医学的な状態を伝える書類です。

一方、

病歴・就労状況等申立書は、

本人側から見た「病気の経過と生活・仕事への影響」

を伝える書類です。

たとえば、

最初に症状が出た。

病院へ行った。

薬を飲みながら働いた。

欠勤が増えた。

休職した。

少し回復して復職した。

再び悪化した。

という経過。

これは診断書だけではすべて分からないことがあります。

だから、

医療の記録と、実際の生活をつなぐ役割

を持っていると考えると分かりやすいです。

「病歴」だけではなく「生活」と「仕事」を書く

名前に、

「病歴」

と入っているため、

病院のことだけを書けばいいように見えます。

でも、

病歴・就労状況等

です。

つまり、

通院。

治療。

仕事。

日常生活。

がどう変化したかを伝えます。

だから私は、最初から文章を書かず、

病院・生活・仕事の3列

で整理する方法をおすすめします。

まず文章を書かずに「年表」を作る

たとえば、こんな感じです。

時期

病院・治療

生活

仕事

2015年春

不眠でAクリニック初診

夜眠れず食欲低下

遅刻が増える

2016年

Aクリニック継続

休日はほぼ寝ていた

欠勤月2~3回

2017年

B病院へ転院

家事が難しくなる

3か月休職

2018年

通院継続

少し回復

短時間で復職

2020年

症状悪化

外出が減る

退職

現在

C病院へ通院

支援を利用

週3日勤務

最初はこれくらいで構いません。

この表を作ってから、

申立書の期間ごとの文章へ変えていきます。

いきなり白紙の申立書を見て、

「20年分書いてください」

と言われるより、かなり楽です。

「発病したとき」から書く

日本年金機構の様式では、請求する病気やけがについて、発病したときから現在までを書くようになっています。

だから、

初診日からだけとは限りません。

たとえば初診が2016年でも、

2015年ごろから、

眠れない。

仕事中に動悸。

人に会うのが怖い。

という症状があったなら、

その時期から書きます。

ただし、

「小学3年生のころ少し人見知りだった」

のように、関係しそうな出来事を全部さかのぼる必要はありません。

今回請求する病気や障害につながる経過

を中心にします。

期間は「病院が変わったところ」「状態が変わったところ」で区切る

20年分を毎年1行ずつ書く必要はありません。

日本年金機構の続紙では、同じ医療機関を長期間受診していた場合や長期間受診していなかった場合、3~5年ごとに区切って記入するよう案内されています。

普通に考えるなら、

病院が変わった。

休職した。

退職した。

症状が大きく悪化した。

働き方が変わった。

支援を使い始めた。

などのタイミングで区切ると整理しやすくなります。

文章は「事実→生活→仕事」の順にすると書きやすい

たとえば、

「2018年4月~2020年3月」

という期間を書くとします。

文章にすると、

Aクリニックへ月1回通院し、服薬治療を継続した。眠れない日や不安が強い日が続き、休日は横になって過ごすことが多かった。食事は惣菜や外食が多く、掃除や洗濯がたまることもあった。仕事は続けていたが、月に2~3回欠勤し、上司に業務量を調整してもらっていた。

くらいです。

華やかな文章は必要ありません。

ポイントは、

何が起きたか。

生活はどうだったか。

仕事はどうだったか。

この3つです。

「つらかった」と書くだけでは少し伝わりにくい

申立書を書くと、

「とてもつらかった」

「大変だった」

「仕事ができなかった」

と書きたくなります。

もちろん間違いではありません。

でも、

具体例があるほうが状態を伝えやすい

です。

たとえば、

「生活が大変だった」

より、

「入浴は週1~2回程度で、洗濯物がたまり、食事はほとんどコンビニだった」

のほうが分かります。

「仕事が大変だった」

より、

「週5日勤務だったが月3回程度欠勤し、電話対応を同僚に代わってもらっていた」

のほうが具体的です。

感情を書くなという意味ではありません。

感情+実際に起こったこと

にすると伝わりやすいのです。

「仕事をしていた期間」を消さない

ここも大切です。

障害年金を申請するから、

「働いていたことを書くと不利なのでは」

と考える人がいます。

でも、事実と違う内容を書くべきではありません。

働いていたなら、そのまま書きます。

ただし、

どんな状態で働いていたのか

まで伝えます。

フルタイムだった?

短時間?

配慮は?

欠勤は?

仕事内容を減らしてもらった?

家に帰ったあと生活できた?

たとえば、

「正社員として勤務」

だけではなく、

「正社員として勤務していたが、欠勤が多く、業務の一部を同僚に代わってもらっていた。帰宅後は食事や入浴ができない日が多かった」

まで書く。

これで実態がかなり違って見えます。

「一人暮らしだった」も、それだけでは終わらせない

一人暮らしをしていると、

「生活できていた」

と思われるのでは、と不安になる人もいます。

でも、

一人暮らしの形式と、

実際に一人で安定して生活できたことは別です。

たとえば、

一人暮らしだったが、

家族が週2回食事を届けていた。

訪問看護を利用していた。

公共料金を支援者と確認していた。

掃除ができず部屋が散らかっていた。

宅配で生活していた。

なら、その実態を書きます。

誰の支援で生活が成り立っていたのか

も大切な情報です。

「空白期間」があっても隠さない

通院をやめていた。

数年間病院へ行っていなかった。

という期間もあるかもしれません。

日本年金機構は、発病から現在まで期間をあけずに記載するよう求めています。

だから、

通院していない期間も書きます。

そして、

なぜ受診しなかったのか。

その間、症状はどうだったのか。

仕事や生活はどうしていたのか。

を書きます。

たとえば、

「2019年から2021年までは自己判断で通院を中断していた。症状が改善したためではなく、外出や予約が負担になっていた。仕事は続けていたが欠勤が増え、休日はほぼ自宅で過ごしていた」

というようにします。

昔のことを正確に覚えていない場合は?

20年前なら、

細かい月を覚えていないこともあります。

だから、

まず、

2005年ごろ。

春ごろ。

この会社にいた時期。

といった情報から整理します。

診察券。

お薬手帳。

履歴書。

雇用保険の記録。

年金記録。

昔の手帳。

メール。

写真。

などがヒントになることがあります。

ただし、

分からないものを無理に断定しない。

分かっている事実と、記憶が曖昧な部分を分ける

ことが大切です。

「診断書」と内容が食い違わないようにする

病歴・就労状況等申立書は本人側から書く書類ですが、

診断書とまったく違う世界になっていると、確認が必要になることがあります。

たとえば、

診断書では、

「一人で通院可能」

申立書では、

「毎回付き添いが必要」

となっていたら、どちらが実態なのか確認したほうがいい。

だから、

医師へ伝えた生活メモ。

診断書。

申立書。

は、

同じ生活の事実を別の角度から説明するもの

と考えます。

文章をそろえる必要はありません。

事実関係をそろえる。

これが大切です。

病歴・就労状況等申立書は「不幸の証明書」ではない

長年の病歴を書くと、

嫌な記憶が戻ることがあります。

失業。

休職。

ハラスメント。

病気。

家族との問題。

書いているうちに、

「私の人生、こんなことばかりだったのか」

と苦しくなることもあります。

でも、この書類の目的は、

人生がどれほど不幸だったか競うことではありません。

病気や障害が、生活や仕事にどう影響してきたかを説明すること

です。

だから、

必要以上に過去を掘り返さなくてもいい。

障害年金の判断に必要な経過を中心に書きます。

一気に20年分を書かない

これはかなりおすすめです。

1日で全部やらない。

今日は、

20代。

次回、

30代。

その次、

現在。

でもいい。

あるいは、

今日は病院だけ。

明日は仕事。

その次に生活。

でもいい。

長い病歴がある人ほど、

作業を小さく分ける

ことが大切です。

そのまま使える「病歴・就労状況 年表テンプレート」

まず、申立書へ直接書かず、こちらを作ります。【障害年金・病歴年表】 ■ 期間    年 月 ~    年 月 【病院・治療】 医療機関: 診断: 通院頻度: 薬・治療: 入院: 【生活】 食事: 入浴: 掃除・洗濯: 買い物: お金の管理: 外出: 人とのやり取り: 家族・支援者から受けていた援助: 【仕事・学校】 勤務先: 雇用形態: 週何日: 1日何時間: 仕事内容: 欠勤・遅刻・早退: 職場での配慮: 休職: 退職: 仕事後の状態: 【この期間に大きく変わったこと】 : 【次の期間へ変わった理由】 □ 転院 □ 症状悪化 □ 症状改善 □ 休職 □ 復職 □ 退職 □ 就職 □ 入院 □ その他:

これを期間ごとに複製します。

もっと簡単にしたい人は「3列だけ」

長いテンプレートがつらい人は、

これだけでも構いません。【病歴メモ】 年・時期: 病院:   生活:   仕事:  

まず10年分をこれで並べる。

そのあと必要な部分だけ詳しくします。

「具体例」は各期間1~2個で十分

すべての日常生活を書こうとすると、終わりません。

各期間で、

一番状態が分かる具体例を1~2個。

たとえば、

「食事を作れず1日1食の日が多かった」

「出勤はしていたが、月4回程度欠勤した」

「訪問看護が週1回入り、薬と生活状況を確認してもらっていた」

などです。

その時期の特徴が伝わる出来事

を選びます。

自分だけで書くのが難しいなら、手伝ってもらっていい

書類の文章は本人が中心になりますが、

過去を思い出す。

時系列を整理する。

文章にまとめる。

ことを一人ですべて行う必要はありません。

年金事務所。

支援者。

家族。

相談支援専門員。

社会保険労務士。

などへ相談する方法があります。

日本年金機構は病歴・就労状況等申立書について、公式のPDFだけでなくExcel様式や続紙も公開しています。

紙で書くのが苦手なら、Excel版を使える場合もあります。

今日やることは「人生を書く」ではなく「3つの日付を置く」

この記事を読んで、

「20年分なんてやっぱり無理」

と思ったら、今日はこれだけにしてください。

スマートフォンに、

①最初に不調が出たころ

②一番大きく悪化したころ

③現在

の3つの日付を書きます。

そしてそれぞれに、

病院。

生活。

仕事。

を一言ずつ書く。

たとえば、2010年ごろ 病院:まだ受診なし 生活:眠れない 仕事:欠勤増える 2015年 病院:Aクリニック 生活:家事ほぼできない 仕事:3か月休職 現在 病院:B病院 生活:支援あり 仕事:週3日

これだけ。

ここから、間を少しずつ埋めればいいのです。

まとめ|病歴・就労状況等申立書は「人生をうまく説明する作文」ではない

病歴・就労状況等申立書。

名前だけで難しく感じます。

しかも、

発病から現在まで。

10年。

20年。

となると、

「全部覚えていない」

と思います。

でも、日本年金機構が求めている基本は、障害の原因となった病気やけがについて、発病から現在までの経過を年月順に、期間をあけず記載することです。長期間同じ医療機関へ通っていた場合などは、3~5年程度に区切って記載する方法も示されています。

だから、

まず、

病院。

生活。

仕事。

の3列に分ける。

転院したところ。

休職したところ。

退職したところ。

大きく悪化したところ。

そこで期間を区切る。

そして、

「つらかった」

だけではなく、

何ができなかった?

どんな援助が必要だった?

どう働いていた?

を一つか二つ具体的にする。

それで、少しずつ形になります。

この書類は、

自分の人生を悪く見せるものでも、

立派に見せるものでもありません。

病気や障害と一緒に、どう暮らし、どう働いてきたのかを事実としてつなぐ書類

です。

思い出せないところがあってもいい。

文章が苦手でもいい。

一日で完成しなくてもいい。

今日は一つの時期だけ。

明日はもう一つ。

それで構いません。

障害年金を利用するために、

人生20年分を一晩で説明できる人になる必要はありません。

散らばっている記憶を、

一つずつ並べていく。

それで十分、申請へ向かう作業は始まっています。

これからを、わたしから。