障害年金をもらいながら働ける?――「働いたら止まる」と思っている人へ

障害年金を受け取れるようになった。

少し生活が落ち着いた。

治療も続けている。

そして、ある日こう思うことがあります。

「少しだけ働いてみようかな」

でも、その直後に別の不安が出てきます。

「働いたら障害年金が止まるのでは?」

「週3日なら大丈夫?」

「正社員になったらダメ?」

「収入が増えたら打ち切られる?」

「せっかく受給できたのだから、働かないほうがいい?」

障害年金を受けながら働くことについては、かなり誤解があります。

先に大切なところから書くと、

障害年金は、働き始めた瞬間に自動的に支給停止になる制度ではありません。

日本年金機構は、障害年金を「病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合」に、現役世代も含めて請求できる制度として案内しています。障害の程度は、日常生活の制限や支援の必要性、労働能力への影響などをもとに判断されます。

ただし、

「働いていても絶対に年金は変わらない」

という意味でもありません。

働き方や障害の状態は、更新時などの認定で重要な情報になります。

今回は、この少し分かりにくい関係を、できるだけ普通の言葉で整理してみます。

「働ける」と「障害がなくなった」は同じではない

まず、ここを分けたいと思います。

人は、

障害がある。

でも働いている。

という状態になることがあります。

たとえば、

週3日だけ。

1日4時間。

障害者雇用。

在宅勤務。

業務を限定。

電話対応を免除。

上司が予定管理をフォロー。

欠勤や早退への配慮あり。

こうした条件があって初めて働けている人もいます。

だから、

「会社に行けている=障害がなくなった」

とは限りません。

日本年金機構も、障害年金では単に病名だけを見るのではなく、日常生活への継続的な制限や労働能力の喪失・制限などを踏まえて障害の程度を判断するとしています。

これは、とても大切です。

特に精神障害では「働いているか」だけで判断しない

精神障害や発達障害などでは、

「仕事をしているから障害年金は無理」

と思われることがあります。

でも、日本年金機構の精神の障害に係る等級判定ガイドラインでは、就労状況について、単純に「働いている・いない」だけではなく、

仕事の種類。

仕事内容。

就労状況。

職場で受けている援助や配慮。

他の従業員との意思疎通。

安定して働けているか。

などを確認して判断する考え方が示されています。

つまり、

週5日働いているという数字だけでは、その人の状態全部は分からない

ということです。

こんな「働けている」は、生活の実態を一緒に伝える

たとえば、

「フルタイムで働いています」

だけだと、

問題なく仕事ができているように見えることがあります。

でも実際には、

職場で毎日フォローしてもらっている。

仕事以外は何もできない。

帰宅後は横になるだけ。

休日はほぼ寝て過ごす。

家事は家族や支援者がしている。

遅刻・欠勤が多い。

配置や仕事量を特別に調整してもらっている。

なら、そこまでが生活の実態です。

障害年金の更新などでは、

「働いている」という一行ではなく、「どんな支援や負担の中で働けているか」

を正確に伝えることが重要になります。

「年収○万円を超えたら障害年金が全部止まる」は原則ではない

ここもよくある誤解です。

一般的な障害基礎年金・障害厚生年金について、

働いて一定の年収を超えたら、一律に障害年金が打ち切られる

という仕組みではありません。

ただし、重要な例外があります。

20歳前の傷病による障害基礎年金です。

20歳前に初診日があり、保険料納付要件なしで支給される障害基礎年金には、本人の所得による支給制限があります。日本年金機構は、前年所得を毎年確認し、その所得に応じて10月分から翌年9月分までの支給を調整する仕組みを案内しています。

だから、

「障害年金には所得制限がある」

という話を見たら、

自分がどの種類の障害年金なのか

を確認することが大切です。

20歳前傷病でなければ「収入だけ」で判断されるわけではない

障害厚生年金や通常の障害基礎年金については、

給料が○万円。

年収が○万円。

だから機械的に終了。

という制度ではありません。

重要なのは、

現在も障害等級に該当する状態なのか

です。

もちろん、安定して長時間働けるようになった。

配慮なしで働ける。

生活も一人で問題なくできる。

という状態になれば、

「障害の程度が軽くなった」と判断される材料になる可能性があります。

日本年金機構も、障害の程度が軽くなり年金を受ける程度ではなくなった場合の届出や、逆に支給停止後に再び障害状態が重くなった場合の手続きを案内しています。

つまり、

年金は「働いた罰」で止まるのではなく、障害状態がどう変化したかで判断される

と考えるほうが近いです。

障害年金の更新で見るのは「会社員かどうか」だけではない

障害年金には、

永久認定。

一定期間ごとに診断書を提出する有期認定。

があります。

有期認定の場合には、指定された時期に診断書を提出し、障害の状態が確認されます。

そのとき、

働き始めた。

勤務時間が増えた。

仕事内容が変わった。

職場の配慮が減った。

生活上の支援がどう変わった。

こうしたことも現在の状態を考える材料になります。

だから、

「働き始めたことを隠したほうがいい?」

と考える必要はありません。

むしろ、

事実をそのまま伝える。

これが基本です。

「年金を守るために働かない」は、少し考えたい

障害年金が生活の大きな支えになっていると、

失うことが怖くなります。

それは当然です。

だから、

本当は働いてみたい。

少し社会に戻りたい。

でも、

「働いたら年金がなくなるかもしれないからやめよう」

と思ってしまう。

ただ、ここで考えたいのは、

障害年金を受給し続けることそのものが人生の目的ではない

ということです。

もちろん無理して働く必要はありません。

治療が必要なら休む。

働くことが難しいなら、支援を使う。

でも、状態が少し安定し、

週1日。

短時間。

小さな仕事。

から始められそうなら、

障害年金を受けながら働くという形もあり得ます。

0か100ではなく、「5時間働ける」も立派な働き方

障害があると、

働けない。

治る。

フルタイム。

という一本道を想像しがちです。

でも実際には、

週2日。

週3日。

午前だけ。

在宅。

障害者雇用。

配慮あり。

という途中の場所があります。

障害年金と働くことを、

「年金を取るか、仕事を取るか」

の二択にしない。

これが大切です。

働き始めるなら「収入」より先に「持続可能性」を見る

久しぶりに働くと、

「もっと時間を増やそう」

と思うことがあります。

でも、最初に見るのは、

給料より、

生活が持つか

です。

仕事の日の夜、

食事できる?

入浴できる?

薬を飲める?

翌日起きられる?

休日が全部回復だけになっていない?

通院できる?

ここを見ます。

たとえば、

週5日なら給料は多い。

でも3か月で倒れる。

より、

週3日。

収入は少ない。

でも何年も続けられる。

のほうが、人生全体では安定する可能性があります。

障害年金+少しの給与という暮らし方もある

たとえば、

障害年金。

短時間勤務。

という組み合わせです。

一つの収入だけで生活全部を支えなくていい。

年金。

給与。

必要なら福祉サービス。

生活費を少し抑える。

それらを組み合わせます。

これは、

「年金に依存している」

という話ではありません。

病気や障害によって失われた働く力の一部を社会保障で補い、残っている力で働く

という考え方です。

障害年金は、現役世代を含め、病気やけがによって生活や仕事に制限が生じた場合に利用できる公的制度です。

働くなら、使える就労支援もある

「いきなり一般企業に戻るのは怖い」

という人もいます。

障害のある人向けには、

ハローワークの専門窓口。

地域障害者職業センター。

ジョブコーチ。

就労移行支援。

就労定着支援。

障害者就業・生活支援センター。

などがあります。

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、地域障害者職業センターによる相談・支援、精神障害者への雇用支援、ジョブコーチなどの情報を案内しています。

だから、

障害年金を受けている→一人で就職活動

にしなくてもいいのです。

「一般雇用」と「障害者雇用」のどちらが正解ということでもない

働く方法も一つではありません。

一般雇用。

障害者雇用。

短時間。

パート。

契約社員。

在宅。

どれがいいかは人によります。

大切なのは、

自分の障害特性や体調に合っているか

です。

障害者雇用なら、

配慮について最初から話しやすい。

一方、

職種や収入の選択肢が違うこともあります。

一般雇用でも、合理的配慮を相談できる場合があります。

だから、

肩書きより、

「この働き方なら生活ごと続けられる?」

を見ます。

医師には「働き始めました」だけでなく実態を伝える

働き始めたら、主治医にも状況を伝えます。

たとえば、

「週3日、1日4時間です」

「電話対応は免除されています」

「仕事の翌日はほぼ寝ています」

「月に2回休んでいます」

「勤務日は夕食を作れません」

「職場で毎回確認してもらっています」

こういう情報です。

障害年金のために伝えるのではなく、

治療を考えるためにも重要な情報

です。

そして更新時の診断書が必要な場合にも、医師が日常生活や就労の実態を把握しやすくなります。日本年金機構も、障害等級を適切に判断するため、診断書には詳細で具体的な記載が重要と案内しています。

「働けているのだから配慮は書かなくていい」は違う

たとえば、

障害者雇用。

短時間勤務。

業務制限。

休憩追加。

支援員との面談。

こうしたものがあって働けているなら、

その配慮も含めて就労状態

です。

むしろ、

配慮がなければ続かない。

という場合、その情報を伝えないと実態が見えなくなります。

もし年金が停止されたら、それで一生終わりではない

障害の程度が軽くなり、支給停止になることがあります。

でも、その後また状態が悪化することもあります。

日本年金機構には、障害年金の支給を停止されている人が、再び障害年金を受けられる程度の状態になった場合の手続きがあります。

つまり、

一度働いたら年金の権利が永遠に消える

という単純な話でもありません。

もちろん個別の受給権や手続きは年金事務所で確認が必要ですが、

「働いたら後戻りできない」

と思い込む必要はありません。

働き始める前に、年金事務所へ聞いてもいい

自分の障害年金について、

20歳前傷病なのか。

所得制限があるのか。

更新はいつか。

就労について何か届出が必要か。

分からない。

そういう場合は年金事務所へ確認します。

特に20歳前傷病による障害基礎年金では所得による支給制限があるため、自分が該当する場合は収入と支給の関係を確認しておくことが大切です。

「年金が減るかも」だけで給与を考えない

仮に働いて収入が増える。

それに伴って、将来の更新などで障害状態について確認が行われる。

だから、

「働かないほうが得?」

という損得だけで考えると苦しくなります。

仕事から得られるものは、

給与だけではありません。

社会とのつながり。

自信。

生活リズム。

人との関係。

将来の厚生年金。

経験。

があります。

一方で、

働くことで体調を崩す人もいます。

だから、

年金がどうなる?

だけでなく、

働くことで私の生活は良くなる?

を一緒に考えたいと思います。

今日使える「障害年金+仕事」チェック

働いてみようかな、と思ったら、こんなメモを作ってみてください。【障害年金+仕事チェック】 ■ 今受けている年金 □ 障害基礎年金 □ 障害厚生年金 □ 20歳前傷病による障害基礎年金 □ 分からない 等級:    級 次の診断書提出・更新:    年 月/分からない ■ 働きたい理由 □ 収入を増やしたい □ 社会とつながりたい □ 将来に備えたい □ 少し体調が良くなった □ その他: ■ 今ならできそうな働き方 週   日 1日   時間 □ 短時間 □ 在宅 □ 障害者雇用 □ 一般雇用 □ まだ分からない ■ 必要な配慮 □ 勤務時間 □ 業務量 □ 電話 □ 対人業務 □ 休憩 □ 通院 □ 欠勤への配慮 □ その他: ■ 仕事以外の生活 働いたあと、 食事: できそう・難しそう 入浴: できそう・難しそう 家事: できそう・難しそう 通院: 続けられそう・不安 休日: 回復だけになりそう・余力あり・不明 ■ 確認すること □ 主治医へ相談 □ 年金事務所へ確認 □ 就労支援へ相談 □ 職場の配慮を確認 最初にする一つ:

全部埋めなくても構いません。

大事なのは、

「何時間なら働ける?」だけでなく、「働いたあと生活できる?」

を見ることです。

まとめ|障害年金は「働かないためのお金」ではない

障害年金を受けながら働いていいのか。

不安になります。

でも、

働いた瞬間に自動的に年金が止まるわけではありません。

障害年金は、病気やけがによって日常生活や仕事に一定の制限がある人を支える制度です。障害状態は、日常生活の制限や労働能力への影響などを踏まえて判断されます。

精神障害などでは、就労しているという事実だけではなく、仕事内容や援助・配慮なども認定上の情報になります。

ただし、20歳前傷病による障害基礎年金には本人所得による支給制限があるなど、障害年金の種類によって違いがあります。

だから、

「働けば絶対止まる」

でも、

「いくら働いても絶対変わらない」

でもない。

大切なのは、

今の障害状態を正確に伝えながら、自分に続けられる働き方を探すこと。

です。

週1日でも。

短時間でも。

支援を受けながらでも。

年金+給与でも。

それで生活が安定するなら、それも一つの形です。

障害年金を守るために、人生を止めなくていい。

反対に、

働けることを証明するために、身体を壊すまで頑張る必要もない。

年金も。

仕事も。

福祉も。

自分の今の力に合わせて組み合わせる。

40代からの生活再建では、

「普通に戻る」より「続けられる形を作る」

ことのほうが大切なのかもしれません。

働いてもいい。

休んでもいい。

また減らしてもいい。

自分の状態に合わせて調整しながら暮らしていく。

そのために障害年金という土台を使う。

これからを、わたしから。