40代、障害年金を申請したいけど何から始める?――初診日・診断書・病歴申立書を「3つの箱」で理解する
病気や障害で、今までと同じように働くことが難しくなった。
仕事を休む期間が長くなった。
収入も減ってきた。
そんなときに、
「障害年金という制度がある」
と知ることがあります。
でも、そこから調べ始めると、
初診日。
障害認定日。
保険料納付要件。
診断書。
受診状況等証明書。
病歴・就労状況等申立書。
一気に知らない言葉が出てきます。
「私には無理かもしれない」
と思ってしまう人もいるでしょう。
でも、最初から全部理解する必要はありません。
私は障害年金の申請を、
①いつ始まったのかを確認する箱
②今どのくらい生活に影響しているかを伝える箱
③そこまでの経過をつなぐ箱
の3つに分けて考えると、かなり分かりやすくなると思っています。
今回は、この3つだけを順番に見ていきます。
最初に知っておきたい。障害年金は「働けない人だけ」の制度ではない
障害年金という名前から、
「寝たきりの人が受け取るもの」
「まったく働けない人だけ」
と思うことがあります。
でも、制度はそれほど単純ではありません。
障害基礎年金や障害厚生年金は、病気やけがによる障害の状態が一定の基準に該当し、初診日や保険料納付などの要件を満たした場合に支給される公的年金です。日本年金機構は、障害基礎年金では1級または2級、障害厚生年金では1級から3級など、それぞれ要件を定めています。
大切なのは、
病名だけでも、仕事をしているかだけでも決まらない
ということです。
だから、
「私は働いているから無理」
「この病名なら絶対もらえる」
と自己判断せず、まず制度上の条件を確認します。
1つ目の箱|「いつ始まった?」――初診日を確認する
障害年金で最初に重要になるのが、
初診日
です。
初診日とは、障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師や歯科医師の診療を受けた日です。
ここで重要なのは、
診断が確定した日とは限らないこと。
です。
たとえば、
最初は「不眠」で受診した。
その後、「うつ病」と診断された。
さらに後から別の診断名になった。
そんなケースでは、障害年金上の初診日が、最初に不調で医療機関を受診した時点までさかのぼることがあります。
日本年金機構も、障害年金の請求では、障害の原因となった傷病で初めて受診した医療機関の初診日を明らかにする必要があるとしています。
なぜ初診日がそんなに大事なの?
初診日によって、
そのとき国民年金に入っていたのか。
厚生年金に入っていたのか。
そもそもどの障害年金が関係するのか。
保険料納付要件を満たしているか。
などが変わるからです。
障害基礎年金では、初診日が国民年金加入期間などにあることや、一定の保険料納付要件が必要です。障害厚生年金では、原則として厚生年金加入中に初診日があることなどが要件になります。
だから最初に、
「私が今の病気について最初に病院へ行ったのはいつ?」
を探します。
昔のことで覚えていない場合はどうする?
10年前。
20年前。
病院名も曖昧。
そんなこともあります。
だから、
「覚えていない=申請できない」
とすぐ決める必要はありません。
まず、
お薬手帳。
診察券。
紹介状。
健康保険の記録。
昔の手帳やカレンダー。
家族や支援者の記憶。
などを確認します。
最初の医療機関が分かれば、原則として受診状況等証明書などで初診日を確認することがあります。日本年金機構は、初診日を証明するための書類や、場合によって使われる第三者申立書などの様式も案内しています。
つまり、
「古すぎて分からない」で終わらず、年金事務所へ相談する。
ここが大切です。
「障害認定日」って何?
初診日と一緒によく出てくるのが、
障害認定日
です。
原則として、初診日から1年6か月を経過した日が障害認定日になります。ただし、傷病によってはそれより前に症状固定などで障害認定日と扱われる場合があります。
普通の言葉にすると、
「障害年金の基準で、その時点の障害状態を確認する基準日」
くらいに考えると分かりやすいです。
初診日と障害認定日。
この2つの日付を先に確認すると、その後の診断書の時期などが見えやすくなります。
2つ目の箱|「今どのくらい困っている?」――診断書
次の箱は、
診断書
です。
障害年金では、医師が作成する診断書が重要な資料になります。
ただし、普通の診断書とは違い、
「○○病です」
だけを書くものではありません。
障害の種類ごとに専用の様式があります。
精神の障害。
肢体。
眼。
聴覚。
呼吸器。
循環器。
腎疾患。
など、それぞれ日本年金機構が診断書様式を用意しています。
診断書で大切なのは「病名」だけではない
たとえば精神の障害の場合、
単に、
「うつ病です」
「発達障害です」
と書くだけではありません。
日常生活。
対人関係。
仕事。
社会生活。
治療状況。
など、生活への影響が重要になります。
だから診察では、
「大丈夫です」
だけで終わらせないことも大切です。
本当は、
料理できない。
お風呂に入れない日がある。
金銭管理が難しい。
仕事では配慮が必要。
人と話すと強く疲れる。
一人で役所へ行けない。
などがあるなら、
生活上の困りごとを医師にも伝える
必要があります。
診断書は、医師が普段把握している情報をもとに作るからです。
「診断書を書いてください」といきなり頼む前に
ここはかなり重要です。
日本年金機構は、障害年金の要件や使用する診断書の種類、診断書に記入する症状の日付を確認する必要があるため、診断書を作成する前に年金事務所等へ相談するよう案内しています。
これは大事です。
先に高い診断書代を払って作成してもらった。
でも、
必要な時点が違った。
様式が違った。
となると、書き直しが必要になる可能性があります。
だから順番は、
年金事務所などで必要書類を確認する
↓
その診断書を医師へ依頼する
が安心です。
3つ目の箱|「ここまで何があった?」――病歴・就労状況等申立書
3つ目が、
病歴・就労状況等申立書
です。
名前からして難しいですよね。
でも普通の言葉にすると、
「最初に病院へ行ったころから今まで、病気と生活・仕事がどう変わってきたかを、自分側から説明する書類」
です。
日本年金機構の様式では、障害の原因となった病気やけがについて、発病したときから現在までの経過を、年月順に期間を空けず記入するよう求めています。
この書類を「作文」だと思わなくていい
ここで、
「うまく文章を書けない」
と止まる人がいます。
でも文学作品を書くわけではありません。
必要なのは、
経過が分かること。
です。
たとえば、
2018年ごろ
眠れなくなった。仕事へ行く前に動悸が出るようになった。
2019年4月
○○クリニックを初診。薬物治療開始。
2020年
休職。家事も難しく、食事は家族や惣菜に頼る。
2021年
短時間勤務で復職したが欠勤が多かった。
2023年
退職。外出が減る。
現在
週○日勤務。職場で配慮を受けている。休日はほぼ休養。
このように、
事実を時系列に置く
だけでも形になります。
「働けていた期間」も隠さなくていい
障害年金を申請するから、
「働いていたことを書いたら不利になるのでは?」
と思う人もいるかもしれません。
でも、事実と違うことを書くのはよくありません。
むしろ、
働いていたなら、
週何日だったか。
どのくらい休んだか。
どんな配慮があったか。
家へ帰るとどうだったか。
一人で仕事を完結できていたか。
を書きます。
「働けたか」だけでなく、「どのように働けていたか」
が大切です。
申立書は「できないこと自慢」にしなくていい
反対に、
すべてを最悪に書けばいい、
というものでもありません。
できることはできる。
でも、
一人では難しい。
時間がかかる。
手伝いが必要。
頻繁に失敗する。
体調が良い日にしかできない。
ということがあります。
障害年金では、
生活の実態を正確に伝える
ことが大切です。
3つの箱を並べると、障害年金が少し見えてくる
ここまでを整理します。
箱1 初診日
→いつ、この病気で初めて医療につながった?
箱2 診断書
→医学的に、今または必要な時点でどんな状態?
箱3 病歴・就労状況等申立書
→そこまでの生活や仕事はどう変化した?
この3つです。
このほかにも、
年金請求書。
本人確認。
年金記録。
必要に応じた添付書類。
などがあります。
でも、最初から全部覚えなくていい。
まずこの3つを押さえれば、
「何を整理すればいいか」
が見えてきます。
保険料納付要件も忘れてはいけない
障害年金には、
保険料納付要件があります。
たとえば障害基礎年金の場合、原則として初診日の前日に、初診日のある月の前々月までの被保険者期間について、納付済み期間と免除期間を合わせて3分の2以上あることが求められます。一定の条件下では、初診日の前日時点で直近1年間に未納がないという特例もあります。
難しいので、
自分で計算しなくても構いません。
ねんきんネットや年金事務所で確認します。
免除期間についても、
「払っていないから全部未納」
とは限りません。
正式に免除承認を受けた期間は、納付要件を考える際に扱いが異なります。
だから、
「若いころ払えなかった時期があるから無理」
と自己判断しないことです。
障害者手帳と障害年金は別の制度
これもよく混同します。
障害者手帳を持っている。
だから障害年金も同じ等級になる。
とは限りません。
逆に、
障害者手帳がないから障害年金を請求できない。
というわけでもありません。
制度の目的や認定基準が違うからです。
だから、
手帳の等級=障害年金の等級
とは考えない。
ここも覚えておくと混乱しにくくなります。
一人で申請するのが難しいなら、相談していい
障害年金の書類は、簡単とは言いにくいです。
特に、
長い病歴がある。
転院が多い。
初診日が古い。
発達障害や精神疾患で経過が複雑。
文章を書くことが苦手。
数字や書類が苦手。
という場合、負担は大きくなります。
だから、
年金事務所。
街角の年金相談センター。
市区町村の窓口。
相談支援。
必要に応じて社会保険労務士。
などを利用する方法があります。
障害基礎年金の請求では、初診日の状況によって市区町村窓口や年金事務所など提出先が異なるため、日本年金機構も事前相談を案内しています。
制度を使うために、一人で制度の専門家になる必要はありません。
社労士へ頼まなければ申請できない?
いいえ。
障害年金は、自分で申請できます。
年金事務所等へ相談しながら進めることもできます。
一方、
初診日の証明が難しい。
長い病歴がある。
書類作成が非常に負担。
などの場合に、障害年金を扱う社会保険労務士へ依頼する人もいます。
ただし費用がかかります。
だから、
最初から「自分では絶対無理」と高額な契約を急がない。
まず年金事務所で自分のケースを確認してからでも遅くありません。
障害年金の申請で、一番大切にしたいこと
制度を調べていると、
「どう書けば通る?」
という情報がたくさん出てきます。
でも本来大切なのは、
通る文章を作ることではなく、自分の状態を正確に伝えること
だと思います。
病気は同じでも、
生活への影響は人によって違います。
一人暮らしできるか。
働けるか。
配慮が必要か。
外出できるか。
金銭管理できるか。
食事を準備できるか。
人とのやり取りができるか。
そうした生活の実態を、
診察でも、
申立書でも、
できるだけ事実として伝えます。
今日するのは「申請」ではなくてもいい
ここまで読んで、
「やっぱり難しそう」
と思った人もいるかもしれません。
大丈夫です。
今日、障害年金を申請しなくてもいい。
診断書も頼まなくていい。
まず、
スマートフォンに、
「障害年金」
というメモを作ります。
そして、
次の3つだけ書きます。【障害年金 3つの箱メモ】 ① 初診日 最初にこの病気・症状で病院へ行った時期: 年 月ごろ/分からない 最初の病院: /分からない ② 現在の生活 仕事: できている・配慮あり・休職中・できない 家事: 一人でできる・一部難しい・かなり難しい 通院: 一人でできる・支援が必要 ③ 病歴 最初に不調が出た時期: 転院: 休職・退職: 現在: 次にすること: □ 年金事務所へ相談予約 □ 初診日を調べる □ お薬手帳を探す □ ねんきんネットを見る
全部分からなくてもいいです。
むしろ、
「初診日が分からない」
と分かったなら、それが年金事務所で最初に相談する内容になります。
まとめ|障害年金は、「全部理解してから相談する制度」ではない
障害年金を初めて調べると、
難しい言葉がたくさん出てきます。
でも、最初は3つの箱で十分です。
初診日。
いつから始まった?
診断書。
今、生活や仕事にどのくらい影響がある?
病歴・就労状況等申立書。
そこまで何があった?
この3つを少しずつ整理します。
そして、
保険料納付要件などは年金事務所で確認する。
必要な診断書も、先に年金事務所へ確認してから医師へ依頼する。日本年金機構も、診断書作成前の相談を案内しています。
障害年金は、
病気になった人へのご褒美ではありません。
働けなかったことへの謝罪でもありません。
病気や障害によって生活や仕事に一定の制限が生じたとき、
暮らしを支えるために公的年金制度の中に用意されている仕組み
です。
40代で病気になった。
長く働けなくなった。
以前ほど働けない。
それだけで、
「これから全部貯金で耐えるしかない」
と決めなくていい。
まず、
対象になる可能性があるか確認する。
初診日を探す。
相談する。
それだけでも一歩です。
全部の書類を今日完成させなくていい。
一つ分からなければ、
一つ聞く。
次にまた一つ。
そうやって制度まで橋をかけていけばいい。
これからを、わたしから。