障害年金の「初診日」が分からない――10年前・20年前の受診をどう探す?

障害年金を調べ始めると、かなり早い段階で出てくる言葉があります。

「初診日」

です。

でも、そこで止まってしまう人がいます。

「最初に病院へ行ったのは10年以上前」

「病院名を覚えていない」

「何年だったかも曖昧」

「最初は別の病名だった」

「その病院はもう閉院している」

そんなこともあります。

40代で障害年金を考えるなら、最初の受診が20代や30代だったということも珍しくありません。

20年前のことを、

「何月何日でしたか?」

と聞かれても、すぐ答えられないのは当然だと思います。

でも、

「初診日が分からない=障害年金を諦める」

ではありません。

日本年金機構も、初診時の医療機関で診療録が残っておらず、通常の証明が取れないケースを想定し、別の資料や第三者証明などによって初診日を確認する仕組みを設けています。

今回は、

「昔の初診日をどうやって探す?」

を一つずつ整理します。

そもそも「初診日」とは何の日?

まず、ここをもう一度確認します。

障害年金でいう初診日とは、

障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師や歯科医師の診療を受けた日

です。

ここで注意したいのは、

今の診断名がついた日とは限らない

ことです。

たとえば、

最初は、

「眠れない」

「動悸がする」

「仕事へ行くのが怖い」

といった症状で内科を受診した。

その後、心療内科へ行き、

うつ病と診断された。

さらに何年かして、発達障害が分かった。

こういう経過なら、

「障害年金上の初診日はどこになるのか」

は、単純に現在の診断日だけでは判断できません。

だから、

自分で「たぶんこの日」と決める前に年金事務所へ相談すること

が大切です。

なぜ初診日がそんなに重要なの?

障害年金では、初診日にどの年金制度へ加入していたかによって、関係する制度が変わります。

国民年金だったのか。

厚生年金だったのか。

また、保険料納付要件を確認するときも初診日が基準になります。

つまり初診日は、

障害年金の入口を決める日付

です。

だから、日本年金機構も初診日の確認を重要な手続きとして扱っています。初診時の医療機関と現在診断書を書いてもらう医療機関が違う場合には、「受診状況等証明書」などによる確認が必要になることがあります。

最初の病院が分かるなら、まず「受診状況等証明書」

最初に受診した病院が分かっていて、

記録も残っている。

この場合は比較的分かりやすいです。

初診時の医療機関へ、

「受診状況等証明書」

を書いてもらうことがあります。

これは普通の言葉にすると、

「この人は、この日にこの病気・症状で当院を初めて受診しました」

ということを医療機関に証明してもらう書類です。

日本年金機構が正式な様式を公開しています。

だから、まず年金事務所へ相談して、

「私の場合、受診状況等証明書が必要ですか?」

と確認します。

必要なら、その様式を最初の病院へ持っていきます。

10年前・20年前だと、カルテがないこともある

ここで大きな壁になります。

病院へ電話した。

でも、

「昔のカルテはもう残っていません」

と言われた。

かなり落ち込みますよね。

でも、ここでも即終了ではありません。

日本年金機構の障害年金に関する解説でも、終診や転医から長期間経過している場合、当時の診療録が廃棄され、初診時の医療機関から診療録に基づく証明を得られないことがあると説明されています。

つまり、

「昔すぎてカルテがない」というケースは制度側も想定している

のです。

そのため、通常の受診状況等証明書を用意できない場合に使う、

「受診状況等証明書が添付できない申立書」

という書類があります。

カルテがないなら「参考資料」を探す

では何を探すのか。

日本年金機構の「受診状況等証明書が添付できない申立書」では、初診時の受診状況を確認できる参考資料がないか確認する仕組みになっています。

たとえば、昔の記録を探すときには、

お薬手帳。

診察券。

紹介状。

医療機関からもらった書類。

健康診断などの記録。

障害者手帳申請時の資料。

生命保険・医療保険などの請求関係書類。

当時の手帳や日記。

勤務先の休職記録。

などに手がかりが残っている場合があります。

重要なのは、

「初診日そのものが印字された資料だけを探す」

と思わないことです。

「○年○月にはすでにこの病院へ通っていた」

と確認できる資料が、後の説明につながることがあります。

どの資料が有効になるかはケースによって違うため、見つかったものを年金事務所へ持っていって確認するのが安全です。

お薬手帳は捨てずに一度確認する

昔のお薬手帳。

今は使っていないし、

「いらないかな」

と思って捨ててしまう人もいます。

でも障害年金を考えているなら、一度確認してからにしたほうがいいと思います。

処方日。

医療機関名。

薬局。

薬の名前。

などから、

「少なくともこの時点には治療を受けていた」

という手がかりになる可能性があります。

昔の手帳が何冊もあるなら、

まず年月順に並べる。

それだけでも、病歴の流れが見えやすくなります。

病院名すら思い出せないときは「場所」から探す

困るのが、

「病院の名前を覚えていない」

というケースです。

でも、

駅前だった。

会社の近くだった。

○○市に住んでいたころ。

ビルの2階だった。

女性の先生だった。

内科だった。

といった断片的な記憶は残っていることがあります。

まずスマートフォンに、

「当時住んでいた場所」

「働いていた会社」

「通っていた駅」

を書きます。

そこから、

当時の医療機関を思い出せないか探していきます。

閉院していても、

昔の診察券。

紹介先のカルテ。

次の病院の初診時記録。

などに、

「○○医院から転院」

と残っている場合もあります。

だから現在の病院だけでなく、

次にかかった医療機関にも昔の記録が残っていないか

聞いてみる価値があります。

2番目の病院のカルテに、最初の病院の情報があることも

たとえば、

Aクリニック。

B病院。

現在のC病院。

と転院していたとします。

Aクリニックの記録はもうない。

でも、B病院の初診時カルテに、

「○年○月頃からAクリニック通院」

と書いてあることがあります。

もちろん、それだけですべてが確定するとは限りません。

でも、

初診日の手がかり

になります。

だから、

最初の病院がダメだった。

そこで終わらず、

次の医療機関へ。

さらに次へ。

と、診療の流れを追います。

「第三者証明」という方法もある

初診時の医療機関による証明ができない場合、

一定の条件で、

初診日についての第三者証明

を提出する仕組みがあります。

日本年金機構では、「初診日に関する第三者からの申立書」の様式を用意しています。

第三者とは、

当時の受診を知っている人などです。

ただし、日本年金機構の案内では、請求者の三親等以内の親族は第三者証明を行えません。また、ケースによっては複数の第三者証明などが必要になります。

だから、

「友人に書いてもらえば終わり」

というほど単純ではありません。

第三者証明を使う可能性があるなら、

先に年金事務所へ相談する

のが大切です。

「覚えている日付」を無理に正確にしない

20年前の受診日を聞かれて、

「たしか5月15日くらいだったと思う」

と無理に一日まで決めたくなることがあります。

でも、

覚えていないなら、

覚えていない。

○年春ごろ。

○年夏ごろ。

それくらいしか分からない。

まずはそのまま整理します。

後から資料を集めて、

正確な日を詰めていきます。

障害年金では初診日は重要なので、

曖昧な記憶を“確定した事実”のようにしてしまわない

ほうがいいでしょう。

まず「分かっていること」と「推測」を分けます。

「発達障害は子どものころからあった」場合、初診日は?

これは混乱しやすいところです。

発達障害は、特性そのものは幼少期からあるものです。

でも、

「子どものころから特性があった=生まれた日が初診日」

という意味ではありません。

障害年金上の初診日は、基本的にはその傷病について初めて医療機関で診療を受けた日を基準に考えます。

ただし、精神疾患など他の傷病との関係や受診経過によって判断が複雑になることがあります。

だから、

「30代で初めて発達障害と診断された」

「その前から別の精神疾患で通院していた」

といった場合は、

どの受診が障害年金上の初診日にあたるのか、年金事務所で個別に確認する

ことが重要です。

「初診日を証明できない申立書」を自分だけで完成させようとしない

日本年金機構には、初診時の証明を通常どおり取れない場合に、

「受診状況等証明書が添付できない申立書」

があります。

これを見ると、

「これを書けばいいんだ」

と思うかもしれません。

でも、その書類だけで認められるとは限りません。

参考資料。

後の医療機関の証明。

第三者証明。

など、ケースに応じた確認が必要になる可能性があります。

だから、

書類名を見つける=自分だけで判断して提出

ではなく、

「私は最初の病院で証明が取れません。次に何を準備すればいいですか?」

と年金事務所へ聞く。

このほうが安全です。

昔の病院が閉院していたら?

病院そのものがなくなっている。

これもあります。

その場合も、

次の病院に紹介状の内容が残っていないか。

診察券やお薬手帳はないか。

当時の受診を示す別資料はないか。

第三者証明が使えるケースか。

を順番に見ます。

「閉院=絶対に証明できない」

ではありません。

ただし、時間がたつほど資料探しが難しくなることは確かです。

だから障害年金を考え始めたら、

初診日の確認だけは比較的早めに始める

ことをおすすめします。

初診日探しは「考古学」みたいになることがある

10年、20年前のことを探す。

これは、本当に大変です。

記憶。

紙。

病院。

薬。

仕事。

いろいろな場所に断片があります。

だから私は、

初診日探しを、

自分の過去を責める作業

ではなく、

散らばった記録を集める作業

と思ったほうがいいと思います。

「あのとき、もっとちゃんと記録しておけば」

と思わなくていい。

20代の自分が、

20年後に障害年金を申請する可能性まで想定して、すべて保存しているほうが珍しいでしょう。

今残っているものから、

一つずつ探します。

今日できる「初診日発掘メモ」

昔の資料を全部探そうとすると疲れるので、まずこれだけ作ります。【障害年金・初診日発掘メモ】 ■ 今の病気・障害 診断名: ■ 最初に不調を感じた時期    年ごろ 出来事: ■ 最初に病院へ行ったと思う時期    年   月ごろ 正確/だいたい/分からない ■ 最初の医療機関 名前: 分からない場合の手がかり: □ 住んでいた地域 □ 勤務先の近く □ 駅名 □ 診療科 □ 医師の特徴 □ 建物の場所 □ その他 ■ 残っているもの □ 診察券 □ お薬手帳 □ 紹介状 □ 昔の医療書類 □ 手帳・日記 □ 勤務先の休職記録 □ 次の病院のカルテ □ その他 ■ その次に通った病院 ① ② ③ ■ 最初の病院へ確認 カルテ: ある・ない・まだ聞いていない 受診状況等証明書: 取得できそう・難しい・不明 ■ 次にすること □ 年金事務所へ相談する □ 最初の病院へ電話する □ お薬手帳を探す □ 次の病院へ確認する □ 昔の書類を1箱だけ見る 今日する一つ:

全部埋める必要はありません。

特に最後の、

「今日する一つ」

だけ決めます。

今日は、

昔のお薬手帳を探す。

それだけでもいい。

年金事務所へ持っていくと便利なもの

初診日について相談するときは、

分かる範囲で、

病院名。

受診した年代。

転院歴。

現在の病院。

お薬手帳。

診察券。

昔の資料。

を書いたメモを持っていくと話しやすくなります。

完璧な年表でなくて構いません。

むしろ、

「ここが分かりません」

を示すためのメモです。

相談する前に初診日を自力で確定する必要はありません。

まとめ|「昔すぎて分からない」から始めてもいい

障害年金で初診日が重要だと知ると、

不安になります。

10年前。

20年前。

そんな昔の日付なんて覚えていない。

最初の病院もなくなっている。

カルテもない。

それだけで、

「私には無理だ」

と思ってしまうことがあります。

でも、日本年金機構も、初診時の医療機関で通常の証明を得られないケースを想定し、「受診状況等証明書が添付できない申立書」や第三者証明などの仕組みを用意しています。

だから、

最初の病院でカルテがなかった。

そこで終了ではありません。

次の病院を調べる。

お薬手帳を見る。

診察券を探す。

紹介状が残っていないか確認する。

当時の記録を探す。

必要なら第三者証明について相談する。

一つずつです。

そして、最初から一人で正解を決めなくていい。

年金事務所へ、

「初診日が分からなくて困っています」

と、そのまま持っていっていい。

障害年金を申請するために、

20年間の人生を全部完璧に覚えている必要はありません。

分かっているところ。

分からないところ。

残っている資料。

それを少しずつつないでいく。

初診日探しは、

過去の自分を採点するための作業ではありません。

今の暮らしを支える制度へつながるために、昔の記録を拾い集める作業

です。

一日で全部探さなくていい。

今日は診察券一枚。

明日はお薬手帳。

その次に年金事務所へ相談。

それくらいでいい。

これからを、わたしから。


「」、メタディスクリプションは「」、URLスラッグdisability-pension-first-visit-date が分かりやすいです。

次はこのシリーズの2つ目として、**「障害年金の診断書、医師に何を伝えればいい?――『大丈夫です』と言ってしまう人のための生活メモ」**へ進むのが自然です。診察室では言えなかった「実際の生活の困りごと」を、盛らず・隠さず伝える具体的なテンプレートまで作れます。