40代、障害年金をもらいながら正社員で働ける?――短時間勤務・障害者雇用・一般雇用をどう選ぶ
障害年金を受けながら、少しずつ働けるようになってきた。
短時間ならいけそう。
今よりもう少し収入を増やしたい。
できれば正社員も考えたい。
でも、そこで不安が出てきます。
「正社員になったら障害年金が止まる?」
「障害者雇用のほうが安全?」
「一般雇用で働いてもいい?」
「フルタイムで働けないなら、正社員は諦めるしかない?」
前の記事では、障害年金は働き始めた瞬間に自動的に止まる制度ではないことを書きました。
では、その次です。
実際に働くなら、どんな働き方を選べばいいのでしょうか。
40代になると、仕事選びは単純な「やりたい仕事」だけでは決めにくくなります。
収入。
社会保険。
将来の年金。
体力。
通院。
障害への配慮。
家事。
そして、翌日も働ける余力。
全部を考える必要があります。
だから今回は、
正社員かどうか
より先に、
「この働き方なら、生活ごと続けられる?」
を軸に考えてみたいと思います。
- まず知っておきたい。正社員になっただけで障害年金が自動的に止まるわけではない
- 「正社員になれるか」より「正社員を続けられるか」
- 短時間勤務は「正社員になる前の練習」だけではない
- 「正社員=週5日8時間」とは限らない
- 障害者雇用って、普通の仕事と何が違うの?
- 障害者雇用なら、すべて楽というわけではない
- 障害者雇用の強みは「配慮について話しやすいこと」
- 一般雇用でも「配慮ゼロ」とは限らない
- 配慮なしでも続けられるなら一般雇用という選択もある
- 「給料が高い働き方」と「手元に残る働き方」は違う
- 障害年金+給与で考えてもいい
- 働くとき、「障害年金が止まるか」以上に記録したいもの
- ジョブコーチという「職場まで来てくれる支援」もある
- 働き始めてから困っても遅くない
- 正社員になるなら「5つの条件」を確認する
- 一般雇用・障害者雇用・短時間勤務を比べるなら
- 「正社員に戻る」ことを回復のゴールにしない
- 社会的に弱い立場になったからこそ、「辞めずに済む仕事」を選ぶ
- 今日使える「私に合う働き方チェック」
- まとめ|正社員になることより「働きながら暮らせること」
まず知っておきたい。正社員になっただけで障害年金が自動的に止まるわけではない
ここは前の記事からもう一度確認します。
障害年金では、原則として、
「正社員になったから支給停止」
「週5日働いたから自動終了」
という単純なルールではありません。
障害年金の認定は、障害による日常生活や労働能力への制限などをもとに行われます。日本年金機構の障害認定基準でも、障害の程度を日常生活能力や労働能力などから判断する考え方が示されています。
特に精神障害・知的障害の認定では、就労している事実だけではなく、仕事の内容、職場での援助や配慮、意思疎通の状況、安定して働けているかなどを含めて判断するガイドラインがあります。
つまり、
雇用形態の名前だけで決まるわけではない
ということです。
ただし、就労状況が障害状態を判断する重要な情報になることはあります。
だから、
「正社員になっても絶対何も変わらない」
とも言い切れません。
大切なのは、今の働き方と生活の実態を正確に伝えていくことです。
「正社員になれるか」より「正社員を続けられるか」
40代で仕事を考えると、
「できれば正社員」
と思う人は多いと思います。
正社員には、
収入の安定。
社会保険。
賞与。
福利厚生。
雇用の安定。
などのメリットがあります。
でも、ここで一つだけ質問を変えてみます。
「正社員になれる?」ではなく、「この正社員生活を3年続けられる?」
です。
たとえば、
週5日。
1日8時間。
通勤1時間。
残業あり。
帰宅後は何もできない。
休日は寝るだけ。
これを無理して半年続けて、また休職。
となったら、本人にも会社にもかなり大きな負担です。
反対に、
週4日。
残業なし。
業務調整あり。
通院日確保。
という働き方なら、何年も続けられるかもしれません。
40代からは、
最大瞬間風速より、持続可能性
を重視していいと思います。
短時間勤務は「正社員になる前の練習」だけではない
短時間勤務というと、
「まだフルタイムで働けない人の途中段階」
と考えることがあります。
でも、必ずしもそうではありません。
短時間勤務そのものを、
今の自分に合った完成形
にしてもいいのです。
たとえば、
週4日×6時間。
週5日×5時間。
午前勤務。
午後勤務。
自分の体調に合わせます。
収入はフルタイムより少ないかもしれません。
でも、
通院できる。
食事を作れる。
入浴できる。
休日に少し外出できる。
仕事を続けられる。
なら、生活全体の安定度は高くなります。
「正社員=週5日8時間」とは限らない
会社によっては、
短時間正社員。
治療と仕事の両立支援。
育児・介護とは別の勤務配慮。
などを用意している場合があります。
制度の有無は会社によります。
だから求人を見るときも、
「正社員かパートか」
だけではなく、
勤務時間を調整できるか
を確認してみます。
もし今の会社で働き続けたいなら、
人事。
上司。
産業医。
主治医。
などと相談し、
勤務時間や仕事内容を調整できないか確認する方法もあります。
障害者雇用って、普通の仕事と何が違うの?
次に、
障害者雇用
です。
厚生労働省は、障害者が希望や能力・適性を十分に生かし、障害特性に応じて働ける社会を目指して、障害者雇用対策を進めています。現在、民間企業の法定雇用率は2.7%です。
障害者雇用の大きな特徴は、
障害があることを会社側も把握したうえで働く
というところです。
そのため、
通院。
勤務時間。
仕事内容。
コミュニケーション。
疲れやすさ。
などについて、採用時から相談しやすいというメリットがあります。
障害者雇用なら、すべて楽というわけではない
ここは誠実に書いておきたいと思います。
障害者雇用=必ず働きやすい。
ではありません。
会社。
上司。
仕事内容。
職場文化。
によって大きく違います。
また、
求人の職種が限られる。
給与水準が希望と合わない。
キャリアの選択肢が少なく感じる。
という人もいます。
だから、
障害者雇用だから安心
というラベルだけで決めないこと。
実際の仕事内容。
給与。
勤務時間。
通勤。
配慮内容。
を見ます。
障害者雇用の強みは「配慮について話しやすいこと」
一方で、障害者雇用には大きな強みがあります。
それは、
「何が難しいか」を隠さず相談しやすいこと。
です。
たとえば、
口頭だけの指示が難しいので文字でも欲しい。
電話対応が強い負担になる。
静かな席が必要。
通院日を固定したい。
休憩を少し増やしたい。
こうしたことを事前に相談できます。
厚生労働省は、雇用分野で障害者への差別を禁止し、事業主に合理的配慮の提供を求めています。合理的配慮は、障害者本人と事業主が話し合いながら具体的な措置を検討していく考え方です。
一般雇用でも「配慮ゼロ」とは限らない
では、
一般雇用を選んだら配慮を受けられないのでしょうか。
これも、単純ではありません。
障害者雇用促進法の合理的配慮は、雇用分野において障害のある労働者への配慮を求める仕組みです。
つまり、
一般雇用だから、
「障害について一切相談できません」
というわけではありません。
ただし、障害を会社へどのように伝えるか、
いわゆるオープン・クローズの問題があります。
障害を伝えず働けば、会社側は本人が何に困っているのか把握できないため、具体的な配慮を得にくくなることがあります。
ここは、
「絶対オープン」
「絶対クローズ」
ではなく、
自分に必要な配慮の大きさで考えます。
配慮なしでも続けられるなら一般雇用という選択もある
たとえば、
通院は休日にできる。
業務制限は特に必要ない。
障害特性が仕事に大きく影響しない。
体調もかなり安定している。
という人なら、
一般雇用で働くことも選択肢です。
職種。
給与。
キャリア。
求人件数。
などが広がることがあります。
ただし、
「障害を知られたくないから、どんなにつらくても一般雇用」
にする必要はありません。
必要な配慮を隠した結果、
毎日無理をして体調を崩す。
それでは本末転倒です。
「給料が高い働き方」と「手元に残る働き方」は違う
働き方を比較するとき、
月給だけを見がちです。
たとえば、
一般雇用20万円。
障害者雇用16万円。
短時間勤務12万円。
数字だけなら20万円が一番です。
でも、
一般雇用20万円で毎月欠勤。
タクシー通勤。
外食ばかり。
体調悪化で医療費増加。
半年後に休職。
ならどうでしょう。
一方、
16万円でも安定して働き、
生活防衛資金を維持できる。
障害年金と組み合わせる。
医療も継続。
なら、こちらのほうが生活全体では安定することがあります。
だから、
月給ではなく「1年間生活したときどうなる?」
で考えます。
障害年金+給与で考えてもいい
障害年金を受けていると、
「給与だけで生活できるようにならなければ」
と思うことがあります。
でも、前の記事でも書いたように、
障害年金は働かないためのお金ではありません。
病気や障害による生活・労働上の制限を社会保障で補う仕組みです。障害状態の認定は、日常生活や労働能力などを踏まえて行われます。
なら、
給与12万円。
+障害年金。
という生活もあります。
給与16万円。
+障害年金。
でもいい。
もちろん、自分の障害年金の種類や認定状況は確認が必要です。
でも、
給与一本で以前と同じ収入を再現しなければならない
と思わなくていいのです。
働くとき、「障害年金が止まるか」以上に記録したいもの
働き始めたら、
勤務日数。
時間。
給与。
だけでなく、
どうやって働けているか
を残しておくと役立ちます。
たとえば、
週3日。
1日5時間。
電話なし。
上司の確認あり。
月2回欠勤。
帰宅後は2時間横になる。
休日のうち1日は完全休養。
こんな感じです。
これは障害年金のためだけではありません。
主治医に説明する。
働き方を調整する。
自分が無理をしていないか確認する。
ためにも役立ちます。
ジョブコーチという「職場まで来てくれる支援」もある
働き始めると、
面接より、
職場に入った後
のほうが難しいことがあります。
仕事内容が覚えられない。
上司へ質問できない。
同僚とのコミュニケーションが難しい。
会社側もどう配慮すればいいか分からない。
こうした場合には、職場適応援助者、いわゆるジョブコーチの支援があります。
JEEDによると、ジョブコーチは実際に職場へ出向き、本人だけでなく事業主や職場の従業員にも支援を行います。必要に応じて職務の再設計や職場環境改善も提案します。新規就職時だけでなく、雇用後の職場適応にも利用できます。
これはかなり大事です。
「障害者本人がもっと頑張って職場に適応する」だけではない。
職場側も変えられるところを変える。
そのための支援です。
働き始めてから困っても遅くない
「就職前に支援を使わなかったから、もう無理」
ではありません。
ジョブコーチ支援は在職中の人にも利用できます。本人だけでなく企業や就労支援機関などから相談することもできます。
だから、
最初は大丈夫だった。
でも3か月たってつらくなった。
という場合も、
支援を追加することができます。
正社員になるなら「5つの条件」を確認する
正社員求人を見るとき、
年収。
休日。
勤務地。
だけでなく、
次の5つを見てみてください。
1.勤務時間
残業はどのくらい?
短時間勤務は可能?
2.通院
平日に通院できる?
有給は取りやすい?
3.仕事内容
苦手な業務を調整できる?
4.相談先
困ったとき誰に話す?
人事?
上司?
支援者?
5.仕事後の生活
帰宅後に食事・入浴・服薬ができそう?
ここまで含めて、
「私にとっての正社員条件」
にします。
一般雇用・障害者雇用・短時間勤務を比べるなら
すごく簡単に整理すると、
一般雇用
求人や職種の選択肢を広げたい。
比較的配慮が少なくても働ける。
キャリアや給与を重視したい。
障害者雇用
障害を伝えたうえで配慮を受けたい。
通院・勤務時間・仕事内容などの調整が重要。
就労支援も使いたい。
短時間勤務
フルタイムでは生活まで持たない。
体調と仕事を両立したい。
まず働く力を安定させたい。
こんな違いがあります。
どれが上ではありません。
「正社員に戻る」ことを回復のゴールにしない
病気や障害があると、
「正社員になれた=回復」
「障害者雇用=まだ回復していない」
のように考えてしまうことがあります。
でも、それは違うと思います。
正社員でも毎日限界なら、
生活は安定していません。
障害者雇用でも、
仕事。
通院。
趣味。
家事。
をバランスよく続けられるなら、
そのほうが生活全体は豊かかもしれません。
肩書きではなく、暮らしで判断する。
40代からは、それでいいと思います。
社会的に弱い立場になったからこそ、「辞めずに済む仕事」を選ぶ
病気。
障害。
長期休職。
低収入。
こうしたことが重なると、
一度仕事を失ったときの影響が大きくなります。
だからこそ、
最初から限界の仕事を選ばない。
少し余力を残す。
支援を使う。
長く働く。
これは弱気な選択ではありません。
また生活全体を崩さないための戦略
です。
今日使える「私に合う働き方チェック」
そのままコピーできます。【私に合う働き方チェック】 ■ 今の体調 週何日なら安定して動けそう? 日 1日何時間なら? 時間 ■ 通院 月 回 平日の通院が必要: はい・いいえ ■ 必要な配慮 □ 短時間勤務 □ 残業なし □ 通院日の確保 □ 電話業務の調整 □ 対人業務の調整 □ 指示を文字でもらう □ 静かな環境 □ 休憩 □ 欠勤・早退への理解 □ その他: ■ 働いた日の生活 帰宅後に食事: できそう・不安 入浴: できそう・不安 薬: 管理できそう・不安 翌日: 動けそう・不安 休日: 趣味や外出ができそう・回復だけになりそう ■ 一般雇用 メリット: 不安: ■ 障害者雇用 メリット: 不安: ■ 短時間勤務 メリット: 不安: ■ 相談できる場所 □ ハローワーク □ 地域障害者職業センター □ 就労支援 □ ジョブコーチ □ 主治医 □ 年金事務所 ■ 私が一番守りたいもの □ 収入 □ 体調 □ 仕事の継続 □ 通院 □ 生活の余力 □ 将来のキャリア 今、一番合いそうな働き方:
すぐ答えを出さなくていいです。
「今は短時間勤務かな」
でも十分です。
まとめ|正社員になることより「働きながら暮らせること」
障害年金をもらいながら正社員で働けるのか。
答えは、
正社員という雇用形態だけで障害年金が自動的に止まるわけではありません。
ただし、就労状況は障害状態を判断する重要な情報の一つです。精神障害等については、仕事内容、援助・配慮、職場での意思疎通、安定した就労ができているかなども考慮する考え方が示されています。
だから、
一般雇用。
障害者雇用。
短時間勤務。
どれを選んでも、
大切なのは、
どんな条件なら自分が長く働けるか
です。
障害者雇用では、企業側にも障害者雇用を進める制度があり、障害特性に応じた職業紹介や職場適応援助などの支援も用意されています。
ジョブコーチのように、本人だけでなく職場側にも働きかける支援もあります。
だから、
働くことを全部自分一人で背負わなくていい。
正社員になる。
短時間で働く。
障害者雇用へ移る。
一般雇用を続ける。
途中で変える。
どれもありです。
40代からの仕事は、
「以前の自分に戻ったことを証明する場所」
ではありません。
生活費を得る。
社会とつながる。
将来へ備える。
そして、
家に帰ったあとも自分の人生が残っている。
そんな働き方を選んでいい。
正社員という肩書きより、
明日も働けること。
来月も暮らせること。
来年も治療を続けられること。
その積み重ねのほうが、
40代からの働き方では、ずっと大切なのかもしれません。
これからを、わたしから。
明日もよろしくお願いします