40代、NISAだけで老後は大丈夫?――年金・現金・投資を「3本柱」で考える

NISAを始めると、少し安心する気持ちが出てきます。

「これで老後の準備を始められた」

そう思えるのは、とても大事なことです。

でも、そこで次の疑問が出てきます。

「NISAを続けていれば、老後はもう大丈夫なの?」

結論から言うと、NISAだけで老後を考えるのは少し危険です。

なぜなら老後のお金には、それぞれ役割の違うものがあるからです。

私は40代からの老後準備を、

年金・現金・投資

の3本柱で考えると分かりやすいと思っています。

どれか一つに全部頼るのではなく、

毎月入ってくるお金、すぐ使えるお金、長期で育てるお金

に分ける。

これだけで老後のお金はかなり整理しやすくなります。

1本目は「年金」――老後の毎月を支える土台

最初の柱は年金です。

老後資金というと、

「何千万円貯めるか」

ばかり気になります。

でも、実際の老後生活では、貯金だけで生活するわけではありません。

公的年金があります。

老齢基礎年金。

老齢厚生年金。

人によって加入歴や働き方が違うので、受け取る金額も違います。

だからまず必要なのは、

自分はいくらくらい受け取れそうなのかを知ること。

です。

日本年金機構の「ねんきんネット」では、自分の年金記録を確認でき、将来の老齢年金見込額も試算できます。現在の加入条件が60歳まで続いた場合の「かんたん試算」だけでなく、今後の働き方や受給開始年齢などを変えて試算することもできます。

つまり、

「老後がなんとなく怖い」

を、

「今のままだと、だいたい月いくら?」

という具体的な数字に変えられます。

ここから老後設計が始まります。

「年金だけで暮らせる?」をまず見る

たとえば、将来の年金が月12万円くらいになりそうだとします。

一方、老後の最低生活費が月15万円。

だとしたら、

毎月約3万円不足します。

こうすると、

「老後2000万円必要?」

ではなく、

「私は月3万円くらい不足しそう」

という自分専用の問題になります。

もちろん、実際の年金額や生活費は将来変わる可能性があります。

でも、

自分の現在地を知るだけでもかなり違います。

年金は、

老後の毎月の生活費を支える基礎部分

と考えると分かりやすいです。

2本目は「現金」――いざというときの逃げ道

次の柱が現金です。

NISAを始めると、

「現金で持っているのはもったいない」

と思うことがあります。

でも、老後になっても現金には大事な仕事があります。

突然の医療費。

家電の故障。

引っ越し。

介護関連の支出。

住宅修繕。

車の買い替え。

こうした支出は、予定どおりには来ません。

だから、

すぐ使える現金を一定額残しておくこと

が大切です。

投資資産が十分あっても、相場が大きく下がっている時期に急なお金が必要になることがあります。

そのとき現金がなければ、

値下がりしたNISAの商品を売らなければならないかもしれません。

だから現金は、

「増えないお金」ではなく、「投資を慌てて売らないためのお金」

でもあります。

老後にも「生活防衛資金」は必要

生活防衛資金というと、

現役時代の失業対策、

というイメージがあります。

でも老後にも、防衛資金は必要です。

違うのは、

「失業」に備える部分が減り、

「医療・介護・住宅・家電」などへの備えが大きくなることです。

老後に必要な現金の額は、

持ち家か賃貸か。

車が必要か。

健康状態。

家族を頼れるか。

などによって変わります。

だから、

「現金は○○万円あれば絶対大丈夫」

と一律には言えません。

大切なのは、

急な出費をNISAの売却だけで乗り切らなくて済む現金を持っておくこと。

です。

3本目が「投資」――未来の生活費を少しずつ育てる

そして3本目が投資です。

ここでNISAが登場します。

NISAは、株式や投資信託などから得られる売却益や配当・分配金が非課税になる制度です。2024年からの制度では非課税保有期間が無期限となり、非課税保有限度額は合計1,800万円です。

つまり、

長期的な資産形成をしやすくする仕組み

です。

でも、NISAに入れたお金は預金ではありません。

投資信託や株式を買えば価格は変動します。

増えることもあります。

減ることもあります。

だから、

NISAは「生活費そのもの」ではなく、「将来の生活を補うために育てるお金」

と考えるほうが分かりやすいです。

なぜ「3本柱」が必要なのか

ここまでを見ると、

それぞれ役割が違うことが分かります。

年金

毎月入ってくる生活の土台。

現金

急な出費や短期的な生活を守る安全網。

投資

10年、20年先の生活を支えるために育てる資産。

これを全部NISAだけでやろうとすると、

問題が起きます。

たとえば老後に株価が大きく下がっている。

でも生活費が必要。

現金がほとんどない。

そうすると、

安い価格で投資資産を売らなければならないかもしれません。

逆に、

全部現金で持っていると、

長期間の資産形成という面では投資の力を使えません。

だから、

それぞれ得意な仕事を分担させる。

これが3本柱の考え方です。

40代は「老後資金総額」より「毎月の不足額」を見る

老後資金を考えるとき、

「3000万円必要」

「2000万円必要」

といった大きな数字に目が行きます。

でも、私は40代なら、

老後の毎月の収支

から考えるほうが分かりやすいと思います。

たとえば、

老後の生活費 月15万円。

年金見込額 月12万円。

差額 月3万円。

なら、

まず考えるのは、

「その3万円を何年補う必要がある?」

です。

そこに、

現金。

NISA。

働く収入。

などを組み合わせていきます。

こうすると、

「老後資金が全然足りない!」

ではなく、

「私は毎月3万円の差をどう埋める?」

という現実的な問題になります。

60代以降も少し働くという「4本目」もある

ここで、もう一つ覚えておきたいことがあります。

老後は、

65歳になった瞬間に完全に働かなくなる、

とは限りません。

体調や希望によっては、

週2日。

短時間勤務。

在宅。

好きな仕事だけ。

など、少し働く人もいます。

月3万円でも収入があれば、

年金の不足分をかなり補えることがあります。

だから老後設計では、

年金+現金+投資+少し働く

という考え方もあります。

ただし、

「一生働けば大丈夫」

を前提にするのは危険です。

病気や体力低下で働けなくなる可能性もあるからです。

働く収入は、

あれば助かる4本目

くらいにしておくほうが安心です。

40代からNISAをする意味は「老後全部を賄うこと」ではない

ここはかなり大切です。

たとえば月1万円をNISAで積み立てたとして、

「これだけでは老後全部を賄えない」

と思うかもしれません。

でも、NISAだけで老後生活すべてを賄う必要はありません。

年金があります。

現金があります。

将来働く収入があるかもしれません。

だからNISAの役割は、

老後の不足分を少し補うこと。

でもいいのです。

J-FLECも、少額から長期間コツコツ積み立てることや、長期・積立・分散による資産形成を紹介しています。

「月1万円しか」

ではなく、

年金とは別に、自分で作った未来のお金がある

と考える。

これは40代以降、かなり大きな安心材料になります。

「NISAの非課税枠1800万円」を埋めなくてもいい

NISAについて調べると、

「1800万円」

という数字が出てきます。

でもこれは、

全員が1800万円投資しなければならない

という意味ではありません。

非課税で保有できる限度額です。つみたて投資枠だけを使って1,800万円まで利用することもできますし、枠を全部使う義務もありません。

月5,000円。

月1万円。

月3万円。

自分が生活を壊さず続けられる金額で構いません。

NISAの枠は、

目標ではなく、使える上限。

この感覚は忘れないほうがいいと思います。

40代だから「現金を全部投資」も違う

40代から投資を始めると、

「時間がないから急がなくちゃ」

と思います。

だから、

貯金100万円。

全部NISAへ。

ということをしたくなるかもしれません。

でも、その100万円が生活防衛資金なら話は別です。

投資には元本割れの可能性があります。J-FLECも、長期・積立・分散でリスクを抑える工夫を紹介していますが、リスクそのものを完全になくすことはできないと説明しています。

だから、

投資しない現金も立派な資産。

です。

老後資金づくりは、

全部を増やそうとすることではありません。

守るお金と育てるお金を分けることです。

「貯金が少ない40代」は、何から始める?

もし今、

貯金も少ない。

NISAもしていない。

年金も分からない。

なら、全部同時にしなくても大丈夫です。

まず、

①ねんきんネットで年金見込額を見る。

次に、

②最低生活費を出す。

そして、

③生活防衛資金を作る。

そのあと、

④余裕資金からNISAを始める。

という順番です。

つまり、

年金を知る。

現金を守る。

投資を育てる。

です。

家族を頼れない人は「現金の柱」を少し厚くする考えも

一人暮らし。

実家を頼れない。

家族に経済的な援助を頼みにくい。

こういう場合、

現金の安全網を少し厚めに考える意味があります。

何かあったとき、

「一時的に家族に借りる」

という選択肢がないからです。

だから、

投資額を最大化するより、

普通預金に少し余裕を残す。

このほうが安心してNISAを続けやすい場合があります。

投資額が少なくなるから損、

とは限りません。

現金があるからこそ、

暴落時にNISAを売らずに済む可能性があります。

つまり現金と投資は、

敵ではなく、むしろ助け合う関係

です。

年金が少なそうでも「終わり」ではない

ねんきんネットを見て、

「思ったより少ない……」

となる可能性もあります。

でも、そこで落ち込んで終わりではありません。

ねんきんネットでは、今後の働き方や老齢年金の受取開始年齢など、条件を変えて試算できます。

つまり、

今後どのくらい厚生年金に加入するか。

何歳まで働くか。

いつから受け取るか。

によって将来の見込額が変わる可能性があります。

そこへ現金とNISAを組み合わせます。

数字を見る目的は、自分を怖がらせるためではありません。

次の対策を考えるためです。

老後のお金は「大きな一つの貯金箱」にしない

老後資金という言葉が怖いのは、

全部が一つの巨大な金額に見えるからかもしれません。

でも実際には、

毎月年金が入る。

普通預金に現金がある。

NISAに資産がある。

必要なら少し働く。

それぞれを組み合わせます。

だから老後準備は、

「○千万円貯めるゲーム」ではありません。

毎月の生活が続く仕組みを作ることです。

40代からなら「3本を少しずつ育てる」でいい

40代は、

まだ働ける時間があります。

年金加入期間を増やせる可能性があります。

生活防衛資金を作る時間もあります。

NISAで長期投資する時間もあります。

もちろん20代ほど長い時間ではありません。

でも、

まだ何もできない年齢ではありません。

むしろ40代は、

自分の暮らしに何が必要かが分かってきている年代でもあります。

だから、

他人の老後プランではなく、

自分の3本柱を作る。

それでいいと思います。

まとめ|NISAは老後の「全部」ではなく、3本目の柱

「NISAだけで老後は大丈夫?」

その答えは、

NISAだけに頼らないほうがいい。

です。

老後には、

年金

毎月の生活を支える土台。

現金

病気や急な出費などに備える安全網。

投資

長期で育て、将来の不足分を補う資産。

この3つがあります。

どれか一つを完璧にする必要はありません。

年金が十分でなければ、現金や投資で少し補う。

投資が少なければ、働く期間や生活費を考える。

現金が少なければ、今から生活防衛資金を作る。

そうやって組み合わせます。

老後の安心は、

一つの巨大な資産から作るのではなく、

小さな安心を何本も持つことで作っていく。

私は、そんな考え方のほうが40代からの人生には合っていると思っています。

NISAを始めた。

それだけでも一歩です。

でも、

年金も見る。

現金も守る。

そのうえで投資を続ける。

一つずつならできます。

老後を完璧にするのではなく、

「何かあっても全部は崩れない」生活を作る。

それが40代からのお金の再設計です。

これからを、わたしから。